7-19 最高最悪のタイミング
★★★お知らせ★★★
『強制じゃしん信仰プレイ』第2巻、2022年3月30日発売!
また活動報告にて、第2巻のキャラデザを公開しております。是非そちらもご覧ください。
【怪演のアラクネー】攻略二回目。
「よし倒し――」
「ぎゃ、ぎゃう~!」
迫りくる【タランチュラベアード】の片方を撃破するも、その隙にもう一体の【タランチュラベアード】に突撃され死亡。戦闘時間、三分五十秒。
【怪演のアラクネー】攻略三回目。
「攻撃する暇ないんですけぐふぉっ!?」
「ぎゃ、ぎゃう~!」
【タランチュラベアード】を無視して【怪演のアラクネー】を狙おうとするも、一撃を与えることすらできず、糸の剣で胸を貫かれ、死亡。戦闘時間、四分二秒。
【怪演のアラクネー】攻略四回目。
「ぎゃ、ぎゃう~!」
「じゃしん、もうちょっと頑張って……あ、無理かぁ」
【タランチュラベアード】の片方をじゃしんに任せ、何とか一対一の状況を作り上げるも、じゃしんが耐え切れずに背中から噛みつかれ、死亡。戦闘時間、五分五十秒。
【怪演のアラクネー】攻略五回目。
「あ、無理無理。死にまーす」
「ぎゃ、ぎゃう~!」
試しに発狂状態前の【怪演のアラクネー】と対戦するも、見えない糸に絡めとられ、瞬殺される。戦闘時間、二分ちょうど。
そして、【怪演のアラクネー】攻略六回目――の前準備として。
「グラァ!!!」
「いやぁ、難しいなぁ」
・苦戦してるね
・【スカルドラゴン】以来じゃない?
・出現率低いのもでかいよなぁ
相も変わらず木の上から【タランチュラベアード】を一方的に攻撃し続けるレイ。
だが、その顔には当初のような愉悦の感情はなく、一週間に渡っているにも関わらず、未だ攻略の糸口が見えない怪物を思い浮かべては悩ましい声を上げていた。
「現状、ワンチャンすらないんだよなぁ。圧倒的に手数が足りないって感じ」
・そりゃソロ向けじゃないからしょうがない
・ソロでクリアできる奴なんていないだろ
・セブンがやってなかった?
・あれは実質パーティだからノーカンだろ
視聴者に相談しつつ攻略法を見出そうとするも、中々いい案は思い浮かばない。
流石に無謀だったかと思いつつも、一度走り出した以上、諦めるなんて思考は既に持ち合わせていないようだった。
「う~ん、まぁ試行錯誤していくしかないか。幸い時間はあるわけだし」
「ぎゃう……」
「グ、グルァ……」
随分と楽観的な声に、となりにいたじゃしんは『いつまで続くんだ』と言わんばかりに肩を落とす。
その悲しげな声に呼応するかのように、眼下の【タランチュラベアード】はポリゴンとなって消えていき、同時にレイの目の前にウィンドウが表示された。
[経験値を入手しました]
[プレイヤーのレベルが上がりました。ステータスを確認してください]
[召喚獣のレベルが上がりました。ステータスを確認してください]
「おっ」
・キターーーー!!!
・ご無沙汰の!
・狩り尽くしてるもんな。そりゃ上がるか
それは、目的の一つでもあったレベルアップの合図。
今まで【タランチュラベアード】を倒してきた積み重ねがようやく表れたことに、レイは顔を綻ばせつつステータス画面を開く。
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NAME レイ
MAIN 【邪教徒Lv.6】
SUB 【魔法使いLv.6】
HP 260/260
MP 560/560(260+300)
腕力 10
耐久 10
敏捷 110(10+100)
知性 10
技量 10
信仰 1120((360*2)+100+300)
SKILL 【邪ナル教典】【邪ナル封具《神隠》】【神ノ憑代】
【初級魔法】【いなし】
SP【敬虔ナル信徒】【自己犠牲】【通過儀礼】
【属性付与】【魔力錬成】【両利き】【深化ノ徳・非仁】
BP 0pt
称号 【月光組織の一員】【聖獣の良き隣人】【世界樹に寄り添う者】
【闇を振り払う英雄】【海を統べる自由な一味】【歴史を創る探究者】
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NAME じゃしん
TRIBE【神種Lv.6】
HP 666/666
MP 666/666
腕力 666
耐久 666
敏捷 666
知性 666
技量 666
信仰 666
SKILL 【じゃしん結界】【じゃしん賛歌】【じゃしん捜査】
【じゃしん硬貨】【じゃしん拝火】
SP【別世界ノ住人】【摂理ノ外側】
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「増えたのは【深化ノ徳・非仁】と【じゃしん拝火】か。効果はっと……」
ざっと目を通して追加された項目を把握すると、レイはその詳細へと目を向ける。
SP【深化ノ徳・非仁】
邪教の深へと至るための試練は、まず他者を排斥することから始まる。
効果①:経験値取得量低下(25%down)
SKILL【じゃしん拝火】
『尊キ御方』より授けられる黒き聖火は、その者の仄暗い感情を媒介に美しく輝くであろう。
CT:666sec
効果①:対象に黒き焔を灯す
「うげ、またマイナススキルか。しかもプラス効果なしって……」
自身に追加されたスキルは持っていてもいいことがない、なんのプラスにもならないスキルであった。
とはいえ、これくらいの理不尽にはもはや慣れっこなレイは、特に気にすることもなくじゃしんのスキルへと目を移す。
「まぁいつもの事か……。それよりもじゃしんのスキル面白そうだね」
「ぎゃう?」
・確かに
・黒き焔……厨二くさいなぁ
・だが、それがいい
そこに書かれている内容は相変わらず抽象的な、良く分からないもの。ただ、今回は期待できるだけの要素が揃っており、レイは少し興奮した様子で考察を口にする。
「これ、もしかしたら攻撃技かな?もしそうなら、【時限草】の役目が本格的になくなるかも」
「ぎゃうっ!?」
その思いはじゃしんにも伝わった――というより【時限草】に反応しただけかもしれないが――ようで、二人は顔を見合わせると、我慢できないといった様子で行動に移る。
「よし、さっそく試そう! 対象は――」
「もうこの森広すぎるよぉ! 歩くの疲れたっ!」
「ごめんね、でも話だとこの辺にいる筈だから」
・ん?
・誰か来たな
・この声って……
早速【じゃしん拝火】を試そうと、敵を探す……そのタイミングで、何やら騒がしい声がレイ達の耳に届く。
主に女性と思しきプレイヤーが不平不満を口にし、それを複数の男性プレイヤーが宥めるという何とも滑稽なやり取りだが、視聴者的にはどこか聞き覚えのあるようであった。
「あーっ!見つけたっ! あの時は良くもやってくれたわね!」
「は? ……あー、あの時の」
どんどん近づいてきている声の方にレイが顔を向けていれば、そこから現れたのは少し前、広間でひと悶着のあったプレイヤー達。
ミナと呼ばれていた女性プレイヤーは、レイの事を見つけるやいなや、大声を出しながら指を指し、周囲の取り巻きに向かって指示を飛ばす。
「今度は容赦しないからっ! みんなやっちゃっていいよ!」
「もう、本当に面倒くさい――」
その指示に従うように各々の獲物を引き抜くミナの愉快な仲間達。
その姿に面倒臭そうに吐き捨てたレイは、さっさと片付けようと銃を構え――。
『うふふふふっ』
「あー、このタイミングで来ちゃうか……」
「な、なにこれっ……!?」
その時、第三者の声が響き渡る。
王者と挑戦者と乱入者。三者による三つ巴の戦いが、今幕を開けようとしていた。
[TOPIC]
PLAYER【ミナ】
身長:150cm
体重:46kg
好きなもの:自分、可愛いもの、チヤホヤしてくれる人
とある大学のサークルに所属している女の子。特別可愛いという訳ではないが、化粧が上手く、また相手をその気にさせる能力に長けており、多くの取り巻きを抱えている。
少し前に話題となった【バベル】でのやり取りを動画で見た際、愛くるしい姿のじゃしんに目を付ける。
何とかして手中に収めようと取り巻き達をけしかけるが、逆に恥をかかされる結果となってしまったため、その原因となったレイを逆恨みして少し暴走中。




