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1-19 月の光に激しく昂る④


「ぎゃう!?ぎゃう!?」


「この痛みはっ!私の心の痛みだぁ!」


 鬼神を宿したレイは一切の容赦なく目の前のマスコットにフラストレーションをぶつけており、顔面に食い込む指はどんどんと強く、ミシミシと嫌な音をたて始める。


 それを受けるじゃしんはその痛みから逃れようとジタバタと必死でもがくも、やがて力尽きたのかだらんと体を弛緩させると、そこでようやく解放されるようにベッドの上へと投げ捨てられた。


「はぁ、せっかくの戦利品が……。取り敢えずみんなに何て言お……う……」


 ピクピクと痙攣しながら口から魂を吐き出すじゃしん。


 だが既に興味を失ったレイは満身創痍の彼を一瞥する事すらなく、途方に暮れる。そして一先ずメニュー画面を操作し、普段のように配信を開始しようとして――不可解な点に気付いた。


「配信出来ない……?」


 普段であればこのタイミングで表示されるウィンドウが一向に現れない。それどころか画面自体が灰色となり操作自体が効かないようになっていた。


 一度メニューを閉じ、再度開いても変化はない。その他にも色々と試行錯誤するが状況は変わらず、困ったように頭を捻ったレイだったが、ふと一つの仮説が頭に浮かんだ。


「……もしかして、まだ終わってない(・・・・・・・・)?」


 そう口にすれば随分とあっさりしすぎていると思えてくる。ただ目的地へと赴いただけで目立った戦闘もなく、山場があったわけでもない。ただの身の丈話で一時間もかからずに終わってしまうような展開に、レイは改めて思考を寄せる。


「キリよくログアウトになったから勝手に終わったと思ったけど、もしかして続きがあった?あの後何か別のクエストがあったとか――」


 分かっている情報を吐き出せば吐き出すほど、疑念が確信に変わっていく。やがて状況の整理を終えたレイは、続いて次に行うべき行動について考え始めた。


「もう一回彼らに会いに行くのが一番手っ取り早い……けど、その前に話を聞かなきゃいけない人がいるかな」


 そして方針を定めたレイはひとつ大きく頷くと、未だに伸びているじゃしんを掴み玄関へと歩いていく。いてもたってもいられず、早鐘のようになる心臓の音の勢いのままドアノブを捻り――。


「ばぁ」


「うわっ!なにっ!?」


 別の意味で心臓が大きく脈打った。


 ドアの向こうにはいつぞやの時みたいに金髪のゴスロリ少女がクマのぬいぐるみを抱えて待ち構えており、レイは大声をだすと後ろに飛び退く。


「ウ、ウサ?なんでここにいるの?」


「驚かせようと思って」


 ウサは相変わらずの無表情で沿う言葉を放つ。それが本音なのか冗談なのかレイには正確に判断できなかったが、どこかしてやったりといった表情を浮かべているように感じた。


「冗談。急に配信が消えたから心配になった。それと渡したい物がある」


「あ、冗談なんだ……渡したい物?」


 問い返すとウサはクマのぬいぐるみの口の中に手を突っ込み、じゃらりと音のする麻袋を取り出す。


「え、なにこれ?」


「50000G。あげる」


「ごっ……!?なんで……?」


 驚きと疑問が入り混じった感情の中でレイは目を白黒させながらぽつりと呟く。だがその後に続いた言葉を聞き、今度は目を見開く事となった。


「この前の撮影会の報酬」


「この前って……昨日の撮影会のこと?」


「そう。約束通り売り上げの七割を渡しに来た」


「売り――……はぁ!?」


 一瞬頭が真っ白になったレイはウサからぐいぐいと押し付けられる麻袋を思わず受け取ってしまう。数秒経ってやっと我に返った彼女は驚きのあまり思わず叫び声を上げた。


「ちょっと待って一日だよ? 一日でこんなに稼いだの!?」


「そう。やっぱり私の目に狂いはなかった。あれは良いモノ」


 むふーと満足げな表情をするウサとは対照的に開いた口が塞がらないレイ。どこか茫然とした表情のまま、手元にある大金を眺める。


「絶対売れないと思ってた……寧ろ売れてほしくなんかなかった……!」


「こら。あんな良いモノを広めないのはダメ」


 メッとどこか咎めるような口調でウサは忠告するが、当然レイはそのすべてに微塵も納得いかないようだった。ただそれはそれとして、過ぎた事だというのもわかっているのか諦めたようにため息を溢す。


「まぁ今更言っても遅いか……お金は必要だったし、癪だけどタイミング的にはこれ以上ないよ」


「? 何か欲しいものがあるの?」


 何か算段を付け納得したような呟きに、ウサは首を傾げながら尋ねる。


「まぁそんな所。これならお話くらい聞いてくれるでしょ」


「どこに行くの?なにか手伝えることある?」


 心なしか心配そうにレイのことを見つめるウサに対してニヤリとあくどい笑みを浮かべる。


「ううん、大丈夫。なにか知ってそうな人に聞きに行くだけだからね」


 ――その時ホワイティアの町のどこかで、とある商人がくしゃみをする声が響きわたった。

[TOPIC]

WORD【Gothic Magazine】

クラン【Gothic Rabbit】が作成しているゴスロリ好きのゴスロリ好きによるゴスロリ好きのためのアイテム。効果はないが、見る者を少し幸せな気分にする効果がある。

ちなみにレイが表紙の回は普段の数倍の売り上げが上がるとか

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 拒否してたはずなのに写真集を売ってきた。 というのはネットリテラシー的にどうなの……? 改めてメッセージなりで販売してもいいよ。とレイが答えてるならまだしも写真撮られたときは写真集を発…
[一言] まさか!? 脅し!
[一言] また巻き上げられるのか
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