6-20 助っ人登場
そうして話が纏まった後、レイは実現に向けて動き出すだすために、改めて問いかける。
「それで、これはどうやったら手に入るの?」
「そのことなのでござるが、一つ問題が……」
だが返ってきたのはとても情けなく、言いづらそうに呟かれた一言であり、先程との温度差にレイは思わず身構える。
「……問題って?」
「い、いや、これを実際に形にする力がないのでござるよ。だからそんな怖い顔しないで……」
「いかんせん二人とも絶望的なまでに才能がないのであります。見ての通りでありますが、我々に【鍛治師】の知り合いなどいるはずもなく、実はほぼお蔵入りしていた案であったのであります」
・なんだそういうことか
・普通に募集すれば集まるんじゃね?
・いや、コミュ障にはハードル高いだろ
レイの瞳を見て怯えた様子をみせるベンケイに、その隣であっはっはと呑気に笑うウシワカ。そんな二人に毒気が抜かれたのか表情を戻したレイは、【鍛治師】という言葉に一人心当たりを思いつく。
「ん?待てよ?もしかしたらいい人紹介できるかも。ねぇぺけ丸、見てたら返事してくれる?」
・お
・ご指名だぞー
・は、はひ!ぼくふぇすか!?
コメント欄にて酷く慌てた様子の文字並びを見つけたレイは、それが目的の人物であると知ってさらに声を掛ける。
「あ、いたいた。今暇?ちょっここまで来てくれないかな?」
・僕なんかがいいんですか!?
・いいんでない?
・寧ろぺけ丸さん以上に適任がいない
「もちろん!場所は分かるよね?待ってるから!」
「ぎゃう~」
他の視聴者についてもぺけ丸に対して文句があるわけではないようで、レイがさも決定事項のように一方的に言い切ると、じゃしんが招き猫のように右手を曲げる。
・強引に決めたな
・レイちゃんちょっとセブンに似てきたよね
・分かる、っていうか元々素質はあった
「あはは、それは褒め言葉と受け取ってくよ。じゃあそういうわけでちょっと待ってほしいかな」
「もちろんであります!」
「我ら暇でござる故!」
そうしてしばらくの間、暇になった彼らは雑談に興じ、主役の登場を待つのだった。
◇◆◇◆◇◆
「黒い炎は確かにかっこいいでありますが、いささかありきたり過ぎやしませんか?」
「その分かりやすさが良いんだよ。誰が見ても心踊るってのは大事じゃない?」
「個人的には黒なら雷でありますなぁ。白光りすると尚映える」
「「分かる」」
「お、お邪魔しま~す……」
数分後、下らない雑談で白熱していた三人の元へ、恐る恐るといった声が聞こえてくる。
「おっ、よく来たでござるな!」
「ま、まさか男の娘でありますか!?我そういうの大好きですぞ!」
「えっ、なんのことですか……?」
室内へと入ってきたぺけ丸に対して、ベンケイとウシワカがものすごい勢いで距離を詰めていき、ぺけ丸は困惑した様子で少し引いたような素振りを見せる。
「来てくれてありがとう、ぺけ丸!」
「ぎゃう!」
「あ、レイさん!今回は呼んでいただいてありがとうございますっ!」
・態度が露骨に違ってて草
・そりゃ同じ変人なら可愛い方がいいよ
・まるでレイちゃんが変人みたいな言い草ですね
ただレイとじゃしんの姿を見るや否や、満面の笑みを咲かせて嬉しそうに近寄っていく。その姿に視聴者はツッコミを入れ、背後ではウシワカとベンケイが落ち込んだように肩を落としていた。
「早速で悪いんだけど、これ見てもらえる?」
「あ、はい!」
テーブルの前へと移動したぺけ丸へ、レイは広げられている設計図を指さす。それを隅から隅までじっくりと読み込みだすと、目を見開きつつ、しきりに感心したように呟いた。
「……なるほど、こんな方法があったんだ。でもこれって……」
「どう?作れそうかな?」
「はい、それは問題ないんですが……。素材はどうするんですか?」
「「「え?」」」
自信ありげに頷いたぺけ丸だったが、突然首を捻ったかと思うと至極当然の疑問を口にする。それに対して三人の間抜けな声がはもった。
「えっと、これ最初から銃がある前提で、それを改造するって書いてあると思うんですけど……」
「え?そうなの?」
「いやぁ、書いたのは随分と前ですからなぁ……」
「なんかそうだった気も……」
ぺけ丸の指摘にレイが二人の方を向けば、頭を抱えてうーんと悩む姿があり、あまり信用できそうにない。仕方なくどれくらいの素材が必要なのか改めて確認しようとしたところで、視聴者からとある提案が上がった。
・レイちゃんの銃使えばいいんでない?
・そうじゃん
・そろそろバージョンアップする頃合いでしょ
「えぇ、これ?」
それを見たレイは腰のホルスターに掛けられた愛銃【Crescent M27】を手に持って眺める。確かに視聴者の言う通り、これを使えば解決する問題ではありそうだが……。
「意外と思い入れあるからなぁ。それにこのスキルは無くして欲しくないし……」
今までの苦難を共に乗り越えてきた第二の相棒とも呼べる武器であり、改造することで全く違うものになるのはどこか寂しいものがあった。そのためどうしようかとレイが渋っていると、今度はぺけ丸から提案の声が上がる。
「えっと、じゃあそれは残す方向で強化しますか?」
「そ、そんなこと出来るの!?」
「うへっ!?で、出来ると思います!」
余りにも理想的な提案に、レイがずいっとぺけ丸へと顔を寄せる。その近さに顔を真っ赤にしてアワアワしだしたぺけ丸は腰を引き、壊れたおもちゃのようにこくこくと頷いた。
「……うん、じゃあお願いするよ。」
「ま、任せてください!」
その言葉を吟味し、そして再度掌にある【Crescent M27】を見つめたレイは、やがて決心したようにぺけ丸の目を見つめる。それに対して茹蛸のように顔を真っ赤にしながらも、ぺけ丸は何度も頷いていた。
「あ、そうだ。他には何かいる素材はある?」
「あっはい、一つお願いしたいものが」
取り合えずの方針が決まったレイが他の懸念事項について尋ねれば、ぺけ丸が要求を口にする。
「どれくらい時間がかかりそう?」
「あっ、分かってます。その素材は【バベル】で入手できるので、ついでに集めて来てもらえれば!」
ロックスとの約束もある以上、時間がかかるようであればと考えたレイに、ぺけ丸は首を横に振る。それはあまりにもタイミングの良い提案だった。
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PLAYER【ウシワカ】
身長:183cm
体重:52kg
好きなもの:アニメ、プラモデル、アイドル
大きな瓶底眼鏡にぶかぶかの白衣を着たオタク気質な青年。ベンケイとはリアルでも親友であり、幼稚園からの付き合いである。
キャラメイクを行わなかったことで周囲から浮いてしまい、どうしたものかと途方に暮れいていたところ、ツヴァイから声がかかり、一瞬で意気投合したことから彼に協力することを決めた。
プレイヤーとしてはかなり強力な力を有してはいるものの、ベンケイともども運動音痴のためあまり戦闘は得意ではなく、もっぱら図書館に籠ったり、新しい魔法を開発したりしている。




