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1-15 物語は突然に


【レイちゃんねる】

【第4回配信 LEVELUPDAY】


 思わぬ辱めを受けた翌日、レイは再び配信を行っていた。


・わこ~

・わこつ

・わこ…何このタイトル?

・よりダサくなっておるwww


「いらっしゃい……え、本当に?良いでしょこのタイトル」


 冗談めかした指摘の筈が、思った以上に本気なトーンで答えたレイにコメントが俄かにざわつき始める。


・ナイスジョークw…ジョークだよね?

・嘘…だよな…?

・ダメだ、もう手遅れなんだ…

・私服とかダサそう


「おいコラ、誰だ私服ダサそうとか言った奴。……君か、名前覚えたからね」


「ぎゃう~!」


 コメントにジト目を向けつつも冗談っぽく返答するレイ。ただ隣で腹を抱えて笑い転げていたじゃしんには、感じたストレスを手刀という形でぶつけておいた。


「ぎゃう!?」


・とばっちりで草

・癖になってんだ…じゃしんに手刀するの

・恐ろしく速い手刀…俺でなきゃ見逃しちゃうね


「みんなハンター好きだね――じゃなくて。今日はタイトルにある通り【スーゼ草原】でレベル上げしようと思うよ」


・はーい

・うい

・おけ


 若干逸れ始めていた話題をレイは無理やり元の軌道に戻す。


「じゃあ、さっそくレッツゴー!」


「ぎゃうー!」


 レイとじゃしんは掛け声と共に片手を上にあげると、もうほぼ実家となった寂れた宿屋から旅立つのだった。


 ◇◆◇◆◇◆


バンッ!バンッ!バンッ!


「ピギッ!」

「クエッ!」

「クアーッ!」


[0の経験値を獲得いたしました]

[0の経験値を獲得いたしました]

[0の経験値を獲得いたしました]


「ふぅ」


・ビューティフォー…

・完璧

・かっけぇな


 【スーゼ草原】に来たレイは【撃鉄・因幡】を使用して【ステップラビット】と【フライダッグ】を乱獲していた。


 一方でじゃしんは前回のことから『モンスターと戦わないように』と釘を刺されていたためか、胸につけた【満月の首飾り】を太陽にかざして光を反射するという遊びで楽しんでいるようだった。


・にしてもレイちゃんエイム良いね

・それ思った

・全部頭に当ててるよね


「FPS結構好きだからね。あと家にエアガンもあるし」


 そう言うとレイは片手でマガジンキャッチを外して自重で落とすと、新しいマガジンをセットする。


 『ToY』の世界の銃は現実と同じリロード方式をとっていた。マガジンはアイテムではなくあくまで武器の一部扱いのためリロードの際にどこからともなく現れるが、それ以外は現実と何ら変わらず経験が生きる仕様である。


・動きがプロなんよ

・手慣れてる感あるよね

・俺も持ってるけどこれかなり難しいよ

・流石厨二病重篤患者


「こんなの慣れだよ慣れ。みんなもエアガン買って練習すればすぐできるようになるよ」


 レイのそれは端から見ても恐ろしいほどに滑らかで綺麗な動きをしており、多くの視聴者を唸らせていた。


 何でもなさそうに返答するレイだったが、嬉しかったのかその口の端がにやけている。そのせいか遠目から呆れた様子で見ているじゃしんには気付いていないようだった。


・もっと奥の敵の方が経験値うまくない?


「あぁ、それはそうなんだけどさ。こっちの方が効率良さそうなんだよね」


 とある提案コメントにレイはあらかじめ調べてきた情報を説明する。


「奥の方だと一体あたり6~8の経験値なんだけど三発かかるんだよね。逆にこっちは2~3の代わりに一発で倒せる。最低値は同じとして上振れればこっちの方が高くなるでしょ?」


・はぇ~

・なるほどな

・微々たる差すぎん?

・効率厨でもあるんか…


「まぁ、人が少なくてストレスが少ないって言うのもあるんだけどね」


 レイの言う通り【スーゼ草原】の手前は割と閑散としておりプレイヤーも疎らにしか見えない。


 というのも先程の視聴者の言っていたことは正しく、ほぼチュートリアルエリアに等しいこの場所は普通の火力が出せる人にとってはあまり美味しいとは言えなかった。


 そのため多くの人物がほどほどにモンスターを倒すとどんどん奥に進んでいくため、そっちの方が混んでいき、むしろ手前は空くという現象が起きているのだ。


「まぁ疲れるまでここでやるとするよ」


そう言うとレイは武器を構え直し、モンスター狩りに戻っていった。


 ◇◆◇◆◇◆


 『ToY』の世界の中にも時間の概念が存在する。現実での1日分が『ToY』の世界では3日と言われており、8時間周期で1日が経過する仕様となっていた。


・なあ、どれだけやるん?

・もう7時間ぶっ通しだけど

・ほんと耐久好きなんだな


 そのため当初は太陽が登り始めている朝だったのに対して、現在は綺麗な満月が見える夜になっていた。


 ビーッ


「あれ?もうこんな時間?」


 全く時間を気にせずに集中していたレイは7時間経過を知らせるアラートを聞いてようやく我に帰る。


「まだ経験値1しか稼いでないんだけど…」


・こんだけやって?

・それはヤバい

・方法変えた方がいいんちゃう?


 残念そうな声を出すレイに視聴者は疑問の声を投げかける。確かにレイも経験値が少ないとはいえいくらなんでも上がりが悪いと感じ始めていた。


「かもねぇ……まぁ一旦引き上げ――ん?」


 そう言ったレイがふとじゃしんの方をみると、何故か光り輝いている(・・・・・・・)


「何してんの!?」


・!?

・いや草

・どういうことなのwww


「ぎゃうぎゃう!」


 レイの言葉にじゃしんは『違う俺じゃねぇ!』と全力で首を振り自身の胸の辺りを指さす。


「あ、首飾りが光ってるのか」


「ぎゃう!」


 必死の形相で頷くじゃしんの首元を見てみると、確かに【満月の首飾り】が光り輝いているようだった。


「でもどうして急に……満月だから?」


 不思議に思うレイはじゃしんに近寄り、その首飾りを手に取った。


[World Quest]

【月の光に激しく昂る】

・【満月の首飾り】に導かれ、秘密の扉を暴く

・報酬:???

※ワールドクエストが発生しました。これよりクエスト完了まで配信は出来なくなります。


「なっ!?」


 ――それはあまりにも突然に、1人の少女を巻き込んで物語は進んでいく。


[TOPIC]

ITEM【満月の首飾り】

真の姿となった満月の姿をした首飾り。しかる時、しかる場所で秘密の入口への扉を開くだろう。

効果①:『満月の夜』、『スーゼ草原』にて秘密の扉を示す

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >レイ直々にモンスターと戦わないようにとクビを刺されていたからである。 念を押すことを表す慣用句は 「くぎをさす」です ネタ誤字としては秀逸すぎで勿体ない(*´∀`*) 掲示板回も…
[一言] 終了間際に
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