4-20 暴力?いいえ、正義です
【レイちゃんねる】
【第12回 1日ぶりです】
「みんなおはよ~」
・おは~
・わこわこ
・体調大丈夫?
「うん、問題なし。ごめんね一日休んじゃって」
デスマーチの翌日――正確には翌々日に、レイは再び配信を開始していた。
流石に徹夜明け当日は精神、身体共にズタボロであり、とてもゲームが取れる状態ではなかったため、休みをとっていた彼女はそのことについて謝罪する。
・まぁしょうがない
・むしろ休んでなかったら引いてたわ
・人間じゃねぇ
「そこまで?3徹くらいなら頑張ればいけない?」
・それは若いから
・甘すぎる
・すぐに体はボロがくるよ
「そ、そうなんだ。気をつけるよ」
酷くリアリティのある悲哀に満ちたコメントに申し訳なさを感じながら、レイは今日の予定を話し始める。
「よし、じゃあ前回の続き行こうか。――あの鳥どもをボコすためにね」
・ボコすwww
・物騒すぎるwww
・やっちゃえやっちゃえ!
「ま、そのためには【枝分かれの溶岩洞】をもう一回クリアしなきゃなんだけど……ってあれ?じゃしんは?」
視聴者に何やら不穏な説明を行っているレイが、自身の相棒のことをふと思い出すときょろきょろと辺りを見渡す。すぐさまその姿を見つける……が。
「ぎゃうぅ……?」
――じゃしんは非常にやさぐれていた。
「えっと、じゃしん?」
「ぎゃうぅ!?」
声をかけられたじゃしんはメンチを切るように下から睨みつける。その昭和のヤンキーのような仕草にレイは困惑を隠せない。
「何?一体何故こんなことに……?」
・いやこうなるよ…
・じゃしんはしょうきにもどった!
・レイちゃん記憶失った?
「ぎゃうぅ!?」
レイが惚けるふりをすると、ずいっと顔を押し付けるじゃしん。その強烈な圧に思わず仰け反りながらも彼女は笑いながら返す。
「嘘嘘、じゃしんには頑張って貰ったし、償いの意味も込めてご褒美あげるって。この前の団子どう?」
「……ぎゃう」
レイの提案にじゃしんはしばし考えた後、仏頂面をしながら指を3本たてる。おそらく3本にしろとの要求だろう、そう考えたレイは不敵な笑みを見せる。
「――ふっ、5本だね。それもみたらしと三色団子を5本ずつ上げよう」
「……ぎゃうっ!」
「はい、交渉成立っと」
・相変わらずちょろいなぁ
・かわいい
・これぞじゃしんクオリティ
レイの提案に飛びつくように返事をしたじゃしんは、ガッチリと握手を交わすと満面の笑みで万歳をする。それを見た視聴者から生温かいコメントが流れ、レイは思わず吹き出した。
「ふふっ、まぁこれでこそじゃしんだよね。じゃいこっか!」
「ぎゃう!」
こうして二人は宿屋を出て街に向かって歩き始める。定番となりつつあるやりとりの後には、険悪な空気は微塵も残っていなかった。
◇◆◇◆◇◆
「さて、【枝分かれの溶岩洞】に着きました」
「ぎゃう!」
団子屋にて一息を終えた二人は再び【枝分かれの溶岩洞】の入口に立っていた。隣にいる満面の笑みでやる気満々なじゃしんの姿を見ながら、レイは早速中に入る。
「んじゃま、さっさと抜けちゃおうか」
すたすたと迷うことなく歩くレイは最初に登場した分かれ道を右に進む。その後も道中に登場するMOBは徹底的に無視し、止まることなくずんずん進んでいくレイに視聴者から声がかかった。
・ん?大丈夫?
・すごい行くやん
・道あってるの?
「もちろん。動画見返してしっかりと覚えてきたからね」
・マ?
・また地味に面倒なことを……
・無駄にハイスペックなんだよなぁ
当然の疑問にこれまた当然のように返すと、視聴者から戦々恐々としたコメントが流れる。それに対してレイはどや顔を浮かべていた。
「まぁね。これくらいゲーマーなら余裕でしょ」
・俺はゲーマーじゃなかったのか
・記憶力よさそう
・いや、代わりに他の事よく忘れると見た
「……イヤ、ソンナコトナイヨ?」
・あれ
・お。図星か?
・レイちゃん?
「何のことかなぁ――って烏?」
視聴者の指摘に心当たりがあったレイは露骨に態度を変えてそのコメントに反応する。それを見て追撃する形で流れるコメントを無視していると、目の前に以前と違う状況が現れる。
そこにいたのは三つの足を持った赤い瞳の烏であった。確かに彼らに会いにここまでやってきているのは間違いないが、まだ30ほどしか進んでおらず、前回と比べて登場が異様に早い。
「何?どうしたの?」
「ガァガァ!」
「えっと、ついて来いってこと?」
バサバサと羽をはばたかせながらちらちらと右の道を見る烏の様子に、レイは怪訝な表情を浮かべながらも意図を察する。
「ガァ!」
「――ふーん、分かったよ」
こくりと頷いた烏は先導するように飛び立つと、右の道に向かって進み始める。それを見届けたレイは迷うことなく左の道に入った。
「ガァ!?」
・レイちゃん!?
・ナンデ!?
・どういうこと!?
反対側の通路で驚く鳴き声が聞こえ、それに同調するように視聴者からもコメントが流れる。
「いや、私の調べた道はこっちなんだよね」
・え?嘘ってこと?
・そうなの?
・近道だった説は?
「いや、ショートカットにしては置いてある場所が不自然すぎるかな。普通、最初に置くもんじゃない?だから、何か隠してる可能性が高い」
考察を述べたレイは先手を取るためにスピードを上げる。全力で走りながら予め決めていたルートを間違うことなく突き進んでいくと、背後から烏の軍勢が追ってくる。
「ガァガァガァ!?」
「なんでそんなに必死なのか分からないけど、君たちのことは信じていないんだよねっ!」
そうして辿り着いた間はダイエンショウウオが存在する47回目の広間。部屋に入った瞬間、惚けた顔の巨顔がのっそりとレイに顔を向ける――が、彼女は怯むことなく距離を詰めた。
「まだ……まだ……」
「ガァガァ!」
後ろから聞こえる声がどんどんと大きくなり、前後共にレイとの距離が縮まっていく中、ダイエンショウウオはガパリと口を大きく開ける。
「――今!」
それを待っていたレイはここぞというタイミングで跳躍する。鮮やかな曲線を描きながらダイエンショウウオの背中に着地すると、背後にはゴウッ!と圧倒的な熱量が放出される。
「ガァガァ!?」
「ははっ!焼き鳥の出来上がりってね!」
ダイエンショウウオによる炎のブレスを正面から受けた烏は鳴き声をあげながら散り散りに霧散する。それに勝ち誇ったような声を上げると、レイはさらに加速し『皇帝の間』へと向かう。
「よし、ゴール!一体何を隠して――」
「ぺんっぺんっ!」
『コ、コウテイ様、いけませぬ。少しだけ我慢していただかなければ、これがあの娘に見られたら――あ』
全速力で『皇帝の間』に突入したレイの視界に入ってきたのは、美味しそうに【世界樹の実】を頬張る白色のペンギンとそれをやんわりと窘める老烏。
ご丁寧にテーブルに座り、ペンギンの分際で器用にフォークとナイフを用いて食す姿に一瞬フリーズしたレイだったが、すぐさまターゲットを決めると最高速を維持したまま突き進み、老烏が何かを発する前に跳躍する。
「こんの糞ペンギンがぁ!!!」
「ぺぎゃ!?」
――そして、それはそれは綺麗なドロップキックが炸裂した。
[TOPIC]
WORD【『皇帝の間』までのルート】
右左左左右左右左右右
左右左左右左左右左左
右左左左右左右右左左
右右右左左右左右左右
左右左左右左右右左




