3-24 久しぶりの外の空気
【レイちゃんねる】
【第12回 お勤め中です】
【ゴールドラッシュ】に存在するとあるBarの中。オレンジジュースを飲みながら誰かを待つレイの首元には黒いチョーカーが怪しく光っている。
「お待たせ、レイ」
「あ、ウサ。大丈夫、全然待ってないから」
しばらくして黒いゴスロリ服を着た少女が現れる。そのままレイの隣に腰を掛けると、マスターに対してミルクを注文する。
「それよりも約束すっぽかしちゃってごめんね」
「ううん、囚人編楽しかった」
小さく首を振ったウサは受け取ったミルクを両手で持つと、息を吹きかけながら飲み始める。そしてほぅと息を零すと、レイの方に向き直って質問を始めた。
「じゃしんは大丈夫?」
「さぁ、決行日は今日だからね。上手くいってるといいけど」
・お、他人事ゥ~!
・なかなかの外道ムーブ
・もはや清々しいまであるな
優雅にグラスを傾けながらそう宣うレイに、視聴者は突っ込みのコメントを残す。ただ当の本人はそれをどこ吹く風と言った様子で涼しい顔をしていた。
「私は必須じゃないっぽいし、いなくても大丈夫でしょ。あの二人なら何とかしそうだし、じゃしんに関しては禊とでも思って頑張って貰わなきゃ」
「なるほど。ということは放っておく?」
「まぁそうなるね。時間的にはもうそろそろ始まる頃合いだろうから、ワンチャン合流出来るかも」
自分は関係ないとでも言いたげな様子で答えるレイにウサは相変わらず無表情で頷く。
「了解。じゃあこれから私達はクエストクリアを目指すの?」
「そ。付き合ってもらっても大丈夫かな?」
「任せて」
レイの言葉にウサは頼もしげに胸をどんと叩く。その姿を見てレイが思わず笑顔になっていると、視聴者から説明を求める声があがってきた。
・昨日見てないから分かんないわ
・大丈夫、俺は見てたけど分かってないから
・奇遇だな、俺もだ
「ふむ、オッケー。じゃあ丁度いいし、何があったか説明しよっか」
その声がそこそこ多いのを見て、レイは所々かいつまみながら昨日あったことの説明をする。
「簡単に言えばクリアっていう胡散臭い奴からクエストクリアしたら解放してやるよって言われたって感じかな。クリアするまではこのチョーカーで居場所が把握され続けるらしいよ」
・それオシャレじゃないのね
・なるほど、それなかったら逃げるもんな
・スキルとかは使えるの?
「うん、正確には前付けていた物とは別のなんだよ。だからスキルは使えるしステータスはそのままだって」
視聴者からの質問に答えながらとあるアイテムを取り出すレイ。それを視聴者やウサに見せながら説明を続ける。
「じゃあ次はそのクエストについて。このマップ見てもらえる?」
「これは?」
「例の支配人から貰ったんだけど、どうやら世界樹の場所を示してるんだって」
・世界樹?
・そんなもんあったか?
・俺は知らない。完全初耳
「私も。もしかしたらイベント限定かもしれない」
「ホント?だとしたら大発見じゃん」
レイよりもプレイ時間の多いであろう視聴者やウサの口から初めてという言葉を聞き、レイは少し驚いた様子を見せる。ただ、すぐさま気を取り直すと、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「じゃあ確実に私たちが一番乗りってわけか。いいね、燃えるじゃん。――で、話を戻すけど、そのクエストってのがここにある【世界樹の実】を取ってこいって事らしいよ」
・なるほど
・分かりやすいな
・なんかまた強いモンスターとか出そうだな
「お、ご名答。先に言われたよ、『強力なモンスターの縄張りです』ってさ」
「大丈夫、私が何とかする」
ウサはレイの言葉を聞くと、両手でガッツポーズを作りながらむんと宣言する。
「ふふっ、ありがと。あ、そう言えばさ。ウサが言っていたのは何だったの?」
「それは……謝らないといけない」
それに対してお礼を言いながらもふと思い出したことについて尋ねると、うって変わってウサは沈んだ様子を見せた。
「私達の持っていた情報もクリアについて。しかもレイよりも少ない、怪しい程度の情報。本当はこっちで会わせてあげられる予定だったのに、その必要も無くなってしまった」
「あ~、なんか余計なことしちゃったかな」
申し訳なさそうに言うウサにレイは頭をかきながら声をかける。それに対してふるふると首を振って返すウサ。
「それはレイの実力、謝る必要はない。むしろ約束を違う形になってしまって、本当にごめんなさい」
「いやいや!謝んないでよ!」
横に体を向けたウサは椅子に座りながらも深々と頭を下げる。それを見たレイは慌てるように手を振った。
「そういう時もあるって!ほら私は気にしてないし!」
「でもレイに嫌な事をさせただけになってしまっている……友達なのに……」
「いやいや、全然嫌な事じゃなかったよ!むしろちょっと楽しいまであったと思う!」
「……本当?じゃあまた一緒に撮影する?」
「勿論!そんなものいつだって――あれ?」
そこまで口にして話がおかしな方向に転がっていることに気付いたレイ。しかし時は既に遅く、吐いた言葉を呑み込めない状況に陥っていた。
「言質は取った。みんな聞いた?」
・聞いた~!
・ナイスゥ!
・新作待ってます!
先ほどの落ち込んだ様子を感じさせない、なんなら少し嬉しそうに視聴者に話しかけるウサに対して、レイはわなわなと震えながら問いただす。
「ま、まさか騙された……!?」
「そんなことはない。謝りたいのも撮影したいのも本当。私は嘘つかないよ?」
ぺろっと舌を出しながら言うウサにレイは脱力したように頭を抱える。またしてもしてやられた事を理解した彼女は唸るように言葉を呟く。
「くっそぉ、いつか絶対仕返ししてやるからな……まぁいいや、そろそろ行こうか」
「ん」
そこで話に区切りをつけた二人は飲んだ分の料金を支払いながら席を立って入口へと向かう。そうしてドアを開けて店の外に出た時、不意に声をかけられた。
「お、やっと出てきたか」
声のした方に首を向けると、一人の男が店の壁に寄り掛かった状態の立っていた。
見るだけで分かる上等な装備で身を包み、右の腰に2本剣を拵えたその男はふぁぁとあくびをしながら姿勢を正す。
「えっと……?」
「【JackPots】。そういえば言えば分かるか?」
「ッ!?」
その単語を聞いた瞬間、レイは瞬時に警戒態勢をとる。よくよく見ればその風貌は例の配信の際にいた男の一人であり、確実に『八傑同盟』に関連する事だろうと予想できた。
「あ~、取り敢えずついて来てくんね?抵抗してもいいけど、何回もやって来るだけだから大人しくしてくれると助かる……はぁ~ぁ、なんでいっつもこんな損な役回りしなきゃなんねぇんだ」
心底嫌そうに言葉を吐き捨てた男はすたすたとどこかに向かって歩いていく。どうやらまたしても一波乱ありそうだとレイは目を細めて気合を入れ直した。
[TOPIC]
ITEM【世界樹の実】
世界に1つしか存在しない樹から取れる果実。それは凝縮された力の象徴であり、食べた者へと進化を与えん
効果①:レベルを1上昇
効果②:HPとMPを全回複
効果③:HP及びMPリジェネ効果付与(1/1sec)




