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第63話 メイド服


「女の子……?」


 シエルは自分より十センチ以上低いヘレナと目線を合わせて、そう呟いた。


 そうだ、さっきアリシアが言っていた言葉に違和感を感じたのは、小さな子を紹介する感じだったからだ。

 優しい「子」と言っていたり、ちゃん付けで呼んでいたり。

 いや、シエルのこともちゃん付けで呼んでいるから、そこはあまり違和感はなかったか?


 それでもやはりその違和感は的中で、ヘレナと名乗る女の子はどう見ても子供だった。


 森を彷彿とさせる深い緑色で、ウェーブがかっている長い髪。

 目は大きくパッチリとしていて、少し吊り目のようで小さい子供ながら凛とした表情だ。

 身長は目測だけど、一四〇センチぐらいしかない。

 リアナちゃんよりかは大きいけど、それでも子供だ。


 服はなぜかわからないけど、メイド服。

 いやお手伝いさんだからなのかな?

 だけど異世界ってメイド服はあるんだなぁ。

 容姿が異様に整っているからか、なんかお人形さんがメイド服を着てるみたいだ。


「シエル様、私は容姿こそ幼く見えますが、年齢は貴女よりも上かと」

「えっ、あ、そうなんですか? すいません、失礼なことを言って……」

「いえ、慣れていますので」


 言葉では許しているように見えるのだが、全く微笑んでいないので少し怖い。

 子供らしくない表情や佇まいだとは思ったけど、やっぱり年齢的には大人なのかな。


 ん? あれ?

 ヘレナさんの耳、なんか普通の人と違う?

 上の方が少し尖っていて、ちょっと少し長い。


 なんか前世で聞いたことある気がするけど、なんだったかな……。


「ヘレナちゃんはエルフなんすよ。だから容姿と年齢が合ってないっすよ」

「あ、そうなんだ」


 ああ、そうだ、エルフだ!

 耳が尖っている人を前世ではエルフと言っていた気がする。


 異世界にエルフが本当にいるとは……なんか感動する。


「確か……百歳ぐらいっすか?」

「正確には百と四十五年生きてます」

「ひゃ、一四五歳……!?」


 そんなに長生きしてるの!?

 どう見てもそんな風には見えないし、まず人間がそんな長生きできることが驚きだ。

 エルフは長生きってのも前世で聞いたことあるけど、本当だったんだ。


「普通ならエルフでもそのくらい生きてるとアイリ様やアリシア様ぐらいまで成長するんですが、私はちょっと違うのでこの容姿で止まっています」

「そ、そうなんですか……」

「ええ、ですので子供の容姿の私に敬語を使うのに違和感があるのなら、なしでも大丈夫です」

「い、いえ、そんな違和感ありません。敬語を使いますね、ヘレナさん」


 まあ子供の姿でもこれだけ大人びた姿を見ると、敬語を使っても違和感はないだろう。

 僕も心の中でヘレナさんと呼ぼう。


「ヘレナ、これからシエルとキョースケはこの家で住むことになる」

「そうなのですか。シエル様、それにキョースケ様。これからよろしくお願いいたします」

「あっ、よろしくお願いいたします」

「キョー」


 丁寧に頭を下げたヘレナさんに合わせて、僕たちも頭を下げる。

 アイリさんのいきなりの発言に、何も慌てることなく疑問も持たずに受け入れるところを見ると、さすがメイドさんって感じだ。


 ……ん? またなんか違和感があるぞ?


「あれ、ヘレナちゃん。なんでキョースケがシエルの肩に乗っている鳥ってわかったんすか?」


 あ、そうだ。

 僕の自己紹介をしていないんだ。

 あとアリシア、僕のことを鳥って大雑把な……合ってるけどさ。


 それなのに僕のことをキョースケって理解して挨拶してくれた。


 というか僕を見て驚かなかった人は初めて……いや、アイリさんも驚いてなかったか?

 だけど普通の人なら僕を見て、魔物で危ない存在だと驚愕していたんだけど。


「この場にいる生物で、キョースケと名がつく可能性があるのがその魔獣しかいません」

「魔獣ってわかるんですか?」

「首に付いている首輪を見れば誰でもわかると思いますが」


 僕の首には魔獣登録の証として、空色の首輪がついている。

 それでも僕を見て怖がる人は多かった。


 ……そういえばアイリさんのファンの人たちは全く怖がってなかったな。

 アイリさんに抱きしめられて動かなかったというのもあるけど。

 もしかして人形かなんかと勘違いしていたのかな?


「それに、キョースケ様は――普通の魔物とは、違うようなので」


 ヘレナさんは僕の目を真っ直ぐと見て、そう言った。

 何かわかっているような雰囲気で。


 もしかしたら、僕の種族とかが知っているのか?


 長生きしているなら、それだけ博識なのかもしれない。


「そう、キョースケは普通とは違う。ふわふわで可愛い」


 アイリさんが僕の翼を撫でながらそう言った。

 うん、多分ヘレナさんはそう意味で言ったんじゃないと思う。


「すいません、私には鳥を可愛いと言える感性がわかりません」


「――は?」


 ……ヘレナさんの言葉に、アイリさんがたった一文字で聞き返した。


 その一文字に、怒気を込めながら。



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