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第50話 料理屋さん

今後、5の倍数の日に投稿したいと思います。

なので次は30日です。

よろしくお願いします。


 日が暮れるまで森の前で訓練を続け、スイセンの街に戻る。


 その頃にはシエルはクタクタで、僕を肩に乗せて歩くのがきついほどになっている。


 だから帰りは、いつもアイリさんの肩に乗る。

 それか抱かれて、もふもふされている。

 むしろもふもふされている時間の方が長いかもしれない。


「はぁ、今日もアイリさんの防御を一回も突破できなかった……」

「年季が違う。だけど私はまだ若い」

「何歳ですか?」

「乙女の秘密」


 教えないんだ。

 歳の話を振ったのはアイリさんなのに。


「ん、なんか考えた? キョースケ」

「キョ!?」


 アイリさんにそう問いかけられて、ドキっとしてしまう。


 なぜこちらの言葉もわからないのに、心の中で思ったことを悟られるのか。


 そんな会話をしながら冒険者ギルドに行って、依頼達成の報告をする。


 魔物の討伐証明部位を渡して、報酬をもらう。

 前はシエルはD級だったけど、今はB級なのでそれに見合った報酬になっている。

 つまり、もらう報酬が結構上がった。


「前と同じぐらいしかやってないのに、報酬が倍くらいになってる……」

「それがB級の信用と責任」


 アイリさんの言う通り、D級とB級だったら信用と責任が違う。


 同じ依頼でも、強くて信用できるB級の方が支払われる報酬は上がる。

 その分、しっかり遂行しないといけないという責任が伴う。


「あ、お姉ちゃん」

「ん、シエルちゃん、どうしたの?」


 カウンター奥から出てきたギルド長のカリナさんに、シエルが話しかけた。


「今日オルヴォさんの家に行くから、夕飯はアイリさんと一緒に食べて」

「ん、わかったわ」

「……お酒飲みすぎないでね?」

「わ、わかってるって。シエルちゃんは心配性だなぁ」


 少し慌てているカリナさんを、冷たい目で睨むシエル。


「それにアイリさんはあまりお酒強くないんだから、無理強いしちゃダメだよ」

「はいはい、わかってるって」

「お姉ちゃん、『はい』は一回」

「はい」


 なんか姉妹って言うより、母と子みたい。

 しかも妹のシエルの方が母で、姉のカリナさんが子って、普通逆じゃない?


「アイリさんも飲みすぎちゃダメですからね」

「うん、わかった」


 その言葉に、僕をもふもふしながら小さく頷くアイリさん。


 前に飲んでいるところを見たけど、アイリさんはお酒に少し弱い。


 すぐに酔っ払ってしまう。

 それで飲めなくなるのではなく、どんどん飲んでいってしまうのだ。


 本当に弱い人だったら、一杯飲んでギブアップとかだと思うけど、アイリさんはそうじゃない。

 酔っ払って飲んで、もっと酔っ払って飲んでの悪循環。


 吐きはしないけど、ただめちゃくちゃ酔っ払う。


 それでカリナさんと同じようになぜか脱いで、それで僕を裸で抱きしめてくる。

 酔ってないときは優しくもふもふしてくれるんだけど、酔っ払ってると加減をしてくれない。


 力強く抱きしめられると、さすがに苦しい。


 だからアイリさんが酔っ払ったら、僕は逃げることにした。


 今日はカリナさんとアイリさんが飲むみたいだけど、僕はそこにはいないから大丈夫そうだ。


「私とキョースケはオルヴォさんをここで待ちますから、アイリさんは家に戻ってもいいですよ」

「わかった、じゃあまた」

「はい、今日もありがとうございました!」

「キョー」


 アイリさんは家に帰っていった。

 あの家はシエルとカリナさんの家だけど、アイリさんが一人で帰っても問題ないだろう。


 泥棒とかする人じゃないしね。


 そして僕たちはしばらくギルドで時間を潰していると、オルヴォさんが依頼から帰ってくる。


 オルヴォさんは軽く手を振って僕たちの姿を確認し、カウンターで依頼達成の手続きなどをしに行った。


 数分後、オルヴォさんが近づいてきた。


「悪い、待たせたな」

「いえ、大丈夫です」

「よし、行くか。今日はリアナが頑張って料理を作って待ってるらしいぞ」

「そうなんですか!? 楽しみだね、キョースケ!」

「キョー!」


 リアナちゃんの将来の夢は、お料理屋さんらしい。

 母親のティアナさんの料理を結構は頻度で手伝っているリアナちゃんは、八歳だけど料理が上手い。


 もう何種類かの料理を、一人で作れるくらいだ。


「お前らに食べてもらいたいために、今まで以上に練習してるみたいだ」

「私たちのために……! 嬉しいです! それにすごいですね、リアナちゃん、本当に料理上手で」

「ああ、もう天才だ。将来が楽しみだな」


 さすがオルヴォさん、安定の親バカだ。


 だけど僕もそう思う。

 リアナちゃんの料理屋さんの夢、本当に叶いそうだ。


 そんな会話をしながら、僕たちはリアナちゃんが待つ家に向かった。



 ――冒険者ギルドを去ったあと、誰かを探しにそこへ訪れた人物を、僕たちは知る由もなかった。



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