第3章 4-5 カウンター
すげえ~、そんなことできるんか。桜葉、やっぱり自分がどうやってアークタに勝ったのか分からない。
しかし、感心ばかりしている場合ではない。アークタが勝ち、自分がユズミへ勝ったらアークタと決勝で再戦だ。
アークタが至近距離で両手のショートソードを振り回し、上段中段と流れるように斬り付けながら前へ前へ攻め続ける。ランツーマは懸命に防戦しつつ反撃の機を伺っているのが分かった。だが、アークタはそれも把握しているだろう。
(そろそろだ……そろそろ仕掛け時だ……!)
桜葉が思った瞬間、アークタが身を沈めて豪快に旋回! 足払いだ! 元々小柄なランツーマ、両足が天を向く勢いでひっくり返って背中……いや、後頭部から倒れ伏してバウンドした。生身なら、あれだけで延髄を損傷し、半身不随……下手をしたら死んでしまうだろう。硬い地面へ受け身もとらずに打ちつけられるのは、それほどのダメージがある。上空からの落下と同程度、ゲージが一割近く減った。
雄叫びと共にアークタがとトドメ! パッと逆手持ちにしたダブルショートソードを、倒れて硬直するランツーマのどてっぱらに突き立てた!!
その瞬間、大爆発、大音響とともに、なんとアークタも吹き飛んだではないか!
「……!? !?」
桜葉も驚いてゲージと競技場を交互に見やった。ランツーマがさらに一割ほど、アークタが錐もみしながら地面落下のダメージも加え、五割近く減っている。カウンターか!?
(何をやったんだ!?)
解説を求めて隣のクロタルを見たが、自分と同じ顔をしていた。初めて見る攻撃のようだ。
なんにせよ、アークタが六割強、ランツーマが八割以上減った。ややアークタ有利の展開か。
(ここで一気呵成のアークタと、カウンター得意のランツーマ、互いにクリティカルで勝てる! 読めん、読めんぞこれは!)
まさに手に汗握る。金を賭けている者はもう、心臓が爆発しそうだろう。実際、客のヴォルテージは最高潮だ。桜葉はギャンブルをやらないが、これで勝った時の脳内麻薬のすごさは理解できた。
(大衆の不満なんか、宇宙の彼方にぶっ飛ぶね! こりゃ止められないよ、為政者は……)
テツルギン侯を見ようと思ったが、やはり眼が二人へ釘付けとなる。ランツーマの目的は、アークタへの攻撃も然る事ながら距離を開けることだ。最後の魔力を振り絞り、間合いを開けたアークタめがけ凄まじい形相でマジックミサイルの嵐!!
ズバン! バン! バッ、ババッ、ドバアッ! アークタも、負けじと次々にその攻撃をショートソードの回転斬りで打ち払ってゆく!
「すげえええ!」
桜葉、思わず素で声が出た。
だが、膝や胴に何発か食らう。防ぎきれない。じわじわとアークタのゲージが減ってゆく。あの短距離ミサイル攻撃は、桜葉の見立てでは通常ヒットでダメージが約3から5、クリティカルでも10ほどだ。それでも、十発以上当てたら勝てる。既に、数発くらったアークタのゲージは、もうランツーマと変わらない!
「うあああ!」
まだ距離のあるうちに、ランツーマが勝負に出た! 大口径砲は避けられるリスクがある。残りのゲージを鑑み、このまま数打ちで削り切るのが得策だ! ランツーマ、対空弾として使用する技を地上で散弾として放った! 両手を合わせ、ぐるりと回す! 放射状にマジックミサイルがほとばしり出る!
その瞬間を狙い、なんとアークタがショートソードを素早く投げたではないか!!




