第3章 4-3 第5試合 アークタ対ランツーマ
クロタルも、だんだん誇らしげになってきている気がした。
(今日も満員御礼か……)
桜葉はほぼ円形のスタジアム式観客席を見渡し、さっきの連中が紛れていないか探した。が、ドラムの眼をもってしても分からなかった。
と、そうこうしているうちに時間だ。アークタ対ランツーマ戦が始まった!
やはり今回も遠距離戦は不利とみてか、飛び立った途端にアークタが体勢を整える前のランツーマにいきなり突進した! 客席が波を打ってどよめく。ランツーマが防御楯を展開する前に、アークタの槍がランツーマへ届いた!
これはやはり、桜葉があのシールドアタックで敗れたのを、アークタがしっかり研究した結果と観てよい。
しかしこれは、不意打ちではない。既に開始ファンファーレが鳴っているのだから、ドラゴンで飛び上がっている最中だからと気を抜いているほうが悪い。ファンファーレ前からハイセナキスは始まっている!
グヴァア! 爆音とエフェクトの炎、閃光。ランツーマに二割半ほどのダメージ。小クリティカルほどだ! ということは、ランツーマは防御に成功している!?
やはり、爆煙から現れたランツーマが既にその手へ反撃用の光線弾を用意している! いや、あれは防御に使った光楯か!? それをそのまま、攻撃の反動で硬直しているアークタめがけ光線弾として発射した!
かに見えたが、アークタが絶妙にドラゴンを操り、捻ってそのまま横宙返り! 攻撃をかわした!
「すっげ!」
桜葉も声が出た。客席の歓声とざわめきがアークタを称賛する。
ドラゴンは羽ばたき運動があるので、どうしても上昇には時間を食う。バッサバッサと互いに上を取り合い、そこからはしばし「いつもの」攻防が展開した。だが、アークタは先日のユズミ戦より粘らなかった。ランツーマの魔法攻撃に弾数制限があるのかどうか知らないが、使い切らせる作戦は時間がかかりすぎるか通用しないと判断すべきだろう。
数発の光線攻撃を避けながら、アークタがなんとか位置を取ろうとする。しかしランツーマもそれをさせない。これは、さすがにユズミ戦より見た目に分かりやすい。観客が次第に興奮して喚きだした。
「そこだーッ!!」
「行けーっ、このおーっ!」
「何やってんじゃあ、アホォ!」
「上とれ、うえーッ! 上だーッ!!」
金がかかると、応援も真剣だ。雰囲気も殺気だってくる。
(やっぱり上が有利ってのは、前半戦の常識なんだな)
桜葉が冷静に観察する。観察こそ勝負を分ける。それが実感だった。
(その常識があってこそ、フェイントで下からのチャージも効果があるんだろうね)
アークタが逃げながら有利に上を取っているように見えるが、あまり壁際へ寄るとランツーマには得意の観客席防護壁を利用した跳弾攻撃がある。ユズミや桜葉もくらった。その通り、グウッとアークタへ下方から接近したランツーマが、両手からそれぞれ細い光線をわずかな時間差で二発、放った。右の攻撃をアークタが左によけた瞬間、左手攻撃がちょうどそれへヒットする軌跡を描く。アークタはそれも予想してすかさず右へ捻り返したが、そこへ今さっき避けた右光線が防護壁へ跳ね返って直撃した!
歓声が轟き、アークタがよろめいて高度を下げる。桜葉がゲージを見ると、ダメージは二割……いや、一割半も無い。一回分の攻撃力を二回に分けたせいだろうか。




