荒野を走り続けて
目的地となるダンジョンの場所は、ナギの光魔法で示されている。
予めベルナルドから位置情報を聞き入れていたので、大杉は荒野を走ることだけに集中する。
廃墟の村を少し離れた辺りから地面が夕焼け色に変わり、足跡が目立つようになっていたが、野生のモンスターに襲われそうにならない限り過剰な心配は要らなかった。
見晴らしも良くなり、大杉の視界には円柱の建造物が薄っすらと見えていた。
あの建造物こそが、目標地となるダンジョンだ。
体を進行方向にひねったヨミルが、口を開く。
「地の四天王がいるダンジョンは、とても大きいのね」
「……お父さまによると、闘技場を思わせるような感じだったらしいですから」
「闘技場か……」
大杉は静かに息を吞む。
闘技場は世界観によって、イメージが百八十度変わってしまう。
ゲームだと最終的な賞金稼ぎの場として重宝されることがあるのだが、作品によっては罪人を裁く場となっている場合もある。
罪人といえば、大杉の家族を負傷させたトラックの運転手の顔が真っ先に横切る。
もしもあのトラックの運転手がこの世界に来たとしたら、ヘルライダーとなった俺がこの手で裁くことを志願するだろう。
大杉は少しばかり、憎しみの感情がこみ上げてきた。
「その、大杉さん……。これは、うぅ……」
大杉に怯えはじめたナギは、両手で黒い馬の首元を抑えてやや前屈みになった。
「ナギ、俺から変な気持ちでも感じ取ったなら……すまない」
「過去のしがらみでしょうか……大杉さんは悪くないと思いますので……」
「いや、ナギが怪我でもしたら困るから、俺は速度を落とすぞ」
ナギが振り落とされないように気を配りながら、走る速度を少しずつ落としていく。
「ありがとうございます。……ボクは大丈夫だから」
「本当か?」
「……はい。心配かけてごめんなさい」
ナギが体を起こすと、大杉は再び走る速度を上げる。
やはり、走っている最中は変な物事を考えないほうが良いかもしれない。
「ところで、ヨミル」
「ヘルライダー大杉君は、私に何のご用かな?」
「この世界の属性について、詳しく教えてくれないか」
「ふむっ、属性ね……良いでしょう。魔王としてお答えします」
ヨミルは指先を立てて、六つの色のシャボン玉を作り出す。
それを大杉が見える方位に向けて飛ばした。
「この世界には、六つの属性が存在するの。魔王城の外に出たばかりのタイミングで私が話したと思うけど、それぞれ属性を司る六つの時計塔があることを覚えているかな?」
「あぁ……!」
「それなら属性の数は大丈夫そうね? それでね、属性は炎、水、風、土、光と闇があります。炎は風に弱くて、風は水に弱い。水は土に弱くて、土は炎に弱い」
「ふむ……。光と闇はどうなるんだ?」
「闇は、地水火風に強くて、光に弱い。光は闇に強い代わりに地水火風には弱いのよ」
「なるほど。ベルナルドはそれで俺に優位と言っていたのか」
「へぇー。あのギルドマスターさんがそんなことを言ってたのね」
「別に大した話ではなかったけどな」
この世界の『属性』を理解したことを周囲に伝えたかった大杉は、一度だけ頷く。
これから向かうダンジョンとの属性相性を知っただけでは、攻略が出来るかなんて分からない。
ギルドとして万全な準備を整えるために拠点地へ一度戻っているギルドマスター御一行でさえ、地の四天王がいるダンジョンの二十六階層までしか行っていないのだから、一筋縄ではいかない可能性のほうが高い。
「そういえば、ダンジョンのボスモンスターってどうなるんだ? 俺たちを簡単に通してくれるのかな」
「襲われるか襲われないかでいうと、魔王の私でも襲われると思います。恐らくだけど、ボスモンスターは魔王と主従関係があるわけじゃないし」
「あるのは四天王か。ボスモンスターを部下として招き入れているのか」
「そうねぇ。そして、その四天王が私の知らない存在なのがね」
ヨミルの記憶上に存在しない四天王がいったいどんなものなのか。
会ってみるまで、まったくわからない。
「……そろそろ、到着します」
ナギは光魔法で作り出していた地図を閉じた。
それに合わせて、大杉はゆっくりと速度を落としていき、やがて止まる
「ここが、地の四天王がいるダンジョンか」
闘技場とみられる外見をした円形の建造物が、目の前に大きくひろがっていた。
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