異世界の温泉に浸かる
「水浴びって言ってませんでしたか?」
「さぁ、さっさと入るぞ。男は脱いで語れ。お前としても、いろいろと聞きたいことがあるだろうに」
「それはたしかに否定しませんけど……」
そもそもの話、ヘルライダーに服とかないだろ。
鎧があっても体と同化してしまっているので、服を脱ぐという動作ができないのである。
ギルドマスターのオッサンがひとり脱いで、温泉に入る。
「お前さん、早く入らないのか?」
「はい。すみません……!」
遅れて温泉に浸かった俺は、口元全部が沈むくらいに一度浸かる。
その後、喋れるくらいの高さまで顔を上げた。
「さてと、お前さんのことは何と呼べば良い?」
「ヘルライダー大杉です。大杉と呼んでも構いませんが……」
「大杉か、わかった。オレからはそう呼ぼう」
「は、はい……」
「それで、ギルドに聞きたいことがあるみたいだけど、何かな?」
「そうですね。まずは単刀直入に、四天王について知っていることを教えていだけませんか?」
「四天王のことか、うむ……。今回のギルド遠征にも関与していることだが、四天王が作り出したであろう新たなダンジョンの攻略に励んできた」
「ギルドマスターが、新たなダンジョンの探索をするのか……?」
「そうだ。新たなダンジョンが出てきたのはギルド『片翼の満月』所属の勇者パーティーが魔王城の探索している最中でな、タイミング悪く人力を割けなかった。だから、こうしてギルドマスターが動いている」
「へぇ……探索したダンジョンは、どんな感じだったのですか?」
「あれは大迷宮だよ。地下五階層にボス敵がいて、ボス敵の次の階層にショートカットとみられる転送魔法陣が設置されていた。その後は地下十五階層、地下二十五階層にボス敵がいて、初日は地下二十六階層で引き揚げてきた」
「今日の探索で、ギルドは四天王には会えなかったのか」
「ギルド最高部隊を連れて一度の探索で四天王と出会えないのは予想していなかったが、引き続き探索は行うつもりだよ。あと、新たなダンジョンに出現するモンスターの属性を考えるとしたら、地の四天王ラビュリースがダンジョンの最奥にいるだろと考えているけとな」
「地の四天王……土属性のモンスターが出るダンジョンですか……?」
「ヘルライダーは闇属性のモンスターだから、一応は有利を取れるぞ?」
「そうなんですか?」
「魔王から属性について教えられてなかったのか。ヘルライダーは雑魚モンスターだから教えられていなかっただけかもしれんが」
「属性については、あとでヨミルに聞いておきます」
「そうするのが良いだろう。それで、他に聞きたいことはあるか?」
「うーん。特にないと思いたいけど……ベルナルドさんはどうして、俺たちを親切に接しているのですか」
「まぁ、あれだ。勇者パーティーを倒したのだろ? 予め隠し持たせておいたマジックアイテムで、パーティーの状況はだいたい察せるのでな」
「他のマジックアイテムか……質問を変えます。ここの温泉って、昔からあったのですかね」
「この温泉は十年ほど前、オレが地面を破壊して掘り当てた。そこをギルドの拠点地として使ってるだけだ」
「探索だけでなく温泉も掘ってたのか……」
このギルドマスター、ナギの父親でもあるんだよね。
凄腕の破壊士、恐るべし。
俺は再び口元を温泉に浸けると、暫く何も考えないことにした。
●温泉浴場・女性陣
温泉に浸かったナギは、ヨミルに質問をする。
「魔王城で、ボクを……殺さなかった理由は何故ですか……」
「それはね……。ナギちゃんが、私が知っているクエリス家のご先祖様にとても似ていたからよ」
「ボクの家系に、魔王が関係したこと……なんて……」
「あの方の文献は、思ったより残されていないかもしれないね。ナギちゃんそっくりの見た目と性格であり、私と互角にやり合えた数少ない存在だったよ」
「ボクと似た……。ご先祖様は、どんな名前……なのですか?」
「私が先に眠ったから、あの方の約束で名前は明かせません。ただ、ナギちゃんが得意な光魔法に加えて、闇魔法も得意にしてたね」
「闇魔法も、使えた……ですか……。才能の差が……」
「あー、ナギちゃんは深く考えなくても良いからね。とりあえずナギちゃんのお洋服を綺麗にしてもらえるみたいだから、ここに来て良かったね」
「うん。そうだね……」
ブクブクと。
ナギは、口元を温泉に浸けた。
これ以上は、余計なことを考えないようにする為に。
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