打ち上がった花火の目印
「ボクが知っているレジスタンスの情報は、以上になるよ。そろそろ現在地の再確認をしておきます……」
ナギは光魔法で空中に地図を出し、周辺の地形情報を確かめた。
王都ハウルクエリスを離れてだいぶ南に進行していたのだが、ギルドマスターが居そうな場所なんてよく分かっていない。
「四天王が何かしらの異変が発生させたと仮定して……異変から一番近い街、若しくは異変からそう遠くない位置にギルドの拠点地を作ってあるはずで……」
ナギは不安を抱いていた。
できたら心の支えになってやりたいが、俺は雑魚モンスターとして草原の上を走り続けることしかしてやれない。
この際、特大魔法でも何でも良い。俺たちがギルドマスターと接触に繋がるように状況が変われば良いのだが……。
突然、爆発音だけが聴こえてきた。
「あっ……お父さま……?」
ナギが好意的な反応をみせていた。
ナギは頭を上空に向けてから、小さく頷く。
「何が起きたんだ?」
「私にも、分からなかった」
「お二人さん、さっきのは……マジックアイテムです。魔族には見えない、花火が打ち上がりました」
「花火か。だったら……花火の発射地点に向かえば……!」
「片翼の満月の、ギルドマスターに会えるってことね!」
俺とヨミルが、イキイキした気分になる。
ギルドマスターと接触することになれば、四天王について重要な手掛かりを掴めるかもしれない。
●レジスタンスの隠れ家にて
王都ハウルクエリスの外れにある、二階建ての一軒家。
二階にある部屋のひとつに、テーブルや本棚を並べ、静かに過ごせるであろう空間が作り出されていた。
部屋の窓辺はひとつ。
そこから花火が打ち上がったことを確認すると、右目に眼帯をつけている黒髪青年が微笑んだ。
「ほう……ギルドが動いたか。オイラが率いるレジスタンスも、何か事を大きくしながら動いても良さそうだが……」
「シドラー様、大変なことが分かったっす!」
慌てたジークが、息を切らして部屋の中に入ってくる。
「ジークか。逃げ足の実力が世界一のレベルだと認めざる得ないのは確かなのだが、せめてノックくらいしたらどうかな?」
「すみませんっす! 緊急の報告がありまして、なんと魔王が復活してたっす!」
「何だと……。魔王が復活したというのは本当か?」
「本当っすよ。魔王はヨミル・クレネーラだと名乗り、モニュラさんが開発したマジックアイテムを一撃で粉砕してしまうほどの脅威を見せつけてきました!」
「ふむ……魔王に同行していた者はいたか?」
「魔王の他には、ギルド『片翼の満月』に所属する勇者パーティーがひとりいたっす。あとは、ヘルライダーという雑魚モンスターを二足歩行の人型にして連れていたっすよ」
「魔王に勇者パーティーか。これはまた面白いことになってしまったか。それはそうと、魔王が機動力に優れたモンスターを連れているとなると、我らレジスタンスが動きづらい状況でもあるが……」
シドラーが悩ましい顔をすると、軽いノックをする音が部屋中に響き渡った。
「お兄様、入って良い?」
「その声はロコか。遠慮はいらないぞ」
「では、失礼します」
ドアの近くに隠れていた黒髪の美少女が、のこのこと部屋の中に入ってきた。
「はぇー。レジスタンスにも小柄が美人がいたんっすね」
「黒い花柄の着物姿がよく似合う、オイラの自慢の妹だよ」
「ジークさん、会話するのは初めまして。わたくし、ギルド『天地創新の天秤』に所属する、ロコ・レイヌアグリオンと申します」
ギルドに所属する目印となる天秤のマークを左手の甲に刻み、腰に鞘をぶら下げているロコは、懸命に背伸びをしてジークと顔を合わせようとした。
すると、ジークは窓がある方向に目を向けて、ロコを視界から外した。
「妹さん、可愛いっすね」
「ジークの子供嫌いも何とかなってほしいのだが……」
「そこはやっぱり難しいっすね」
「まぁ、ジークの苦手を克服するのは至難の業だろうし、オイラとしても特に気にしてないからなぁ……おや?」
シドラーが身につけている黒いマントを、ロコがグイグイ引っ張っていた。
「お兄様の馴れ馴れしい会話、羨ましい。お兄様……わたくしに命令を下さい」
「命令か……では、魔王を追跡せよ。魔王の目的を探れ。以上だ」
「承知した」
「妹さんにその役目を任せて大丈夫っすかねぇ……」
「わたくしは平気。わたくしに、切れないものは存在しない。それがたとえ魔王であっても」
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