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第97話 嬉しい悲鳴

誤字脱字でご迷惑をおかけしています。

 休暇二日目、定位置であるコタツでごろごろしていた。

「マサヨシ様、ロルフ様が急ぎの御用ということでおいでになっていますが?」

 と言ってセバスさんが現れる。

「ロルフさんが?

 コタツに呼んでもらえますか?」

「畏まりました」

 そう言ってセバスさんが去る。

 そしてしばらくするとロルフさんが現れた。

「何の用でしょうか?

 まあ、寒いのでコタツにでも」

 俺はコタツに促す。

「それでは失礼して……」

 と言ってロルフさんはコタツの対面に入った。

「それで、どうかしたのですか?」

「はい、お菓子の件です。

 お菓子用の店を作りそこで販売を始めました。

 さすがに、商会の店舗では雑多なうえにほこりなどが舞います。

 そこで、店舗を改装し高級感を出してみました」

「店舗の事までは考えていませんでしたね。

 貴族を相手にする予定ですから、それで良いのではないでしょうか?

 さすがですね」

 と俺が言うと、まんざらではないのか少し照れていた。

「イングリッド様のお陰でしょうか、ご子息、ご令嬢が『ねだって仕方ない』と貴族の方からの問い合わせがひっきりなしなのです。

 その話に引っ張られ、商人の客も増えてきています。

 貴族への贈答に使うようです。」


 どこの世界も子供には財布のひもが緩いらしい。

 そして商人は弱みを突くと……。


「早急に増産を考えるべきかと……」 

 ドンとコタツを叩き、ロルフさんは進言してきた。

「材料的にはコカトリスの卵は増加傾向にあり、フォレストカウのメスも増えてきているので問題ありません」

 実際に続々とフォレストカウ、コカトリス共にメスが増え、乳も卵も余剰量が多くなっている。

 増産には問題ない。

「容器のほうは?」

「一声かければ増やせます」

 自信の返事をするロルフさん。

「職人は?」

 俺が聞くと、

「職人は足りませんね」

 と言ってロルフさんは少し顔をしかめた。

 しかし、

「今でも休みを取らずに朝から晩まで作り続けています」

 その分は、給金をはずんでいますよ?」

 ニコリと笑って言った。


 いやいや、給料はいいかもしれないが、それじゃ完全なブラックになっているだろう?

 プリン、クッキー、ホットケーキは基本手作り。

 それもホットケーキは目の前で焼いていると聞く。

 生産数をこなすには時間をかけるしかない。

 コツを掴み生産効率が良くなったとしても限界がある。

 立ち仕事でお菓子制作、休みなしだと倒れないかい?


「今は一時的に購入者が増えている可能性があります。

 まずは職人が増えるまで生産量の様子を見てみてはどうでしょう?」

「職人を増やすまで様子見ですか……」

 ロルフさんは渋っている。


 ロルフさんは比較的利益追求型なのかね……。


「ええ、このまましばらく様子見しましょう。

 まずは現在の職人の数と同数以上の者を雇い育てます。

 常に完売が続くようであれば、その職人が育ったところで一・五倍程度の生産数にしませんか?

 でないと今居る職人が潰れれば生産数も維持できなくなります。

 職人増加による生産費用増は利益で十分賄えるはずです」


 ロルフさんは少し考えていた。

 そして頷くと、

「売れることは確認できました。

 今でも、単一店舗としては十分な利益を上げています。

 確かに材料や容器を増やしても職人が居なければ生産はできませんね。

 わかりました、職人の数を増やすことに専念します」


 ふう、よかった。

 ブラックな職場を作っても意味がない。


「できれば、四つぐらいの組に分けて、三組が出勤、一組が休みというように、三日出勤で一日休みとか六日出勤で二日休みとかいう感じにしてもらえませんか?

 今は休みがほとんどないのでしょう?

 利益は減るかもしれませんが、質のいい物を作るには疲労の蓄積は邪魔かと思います」

「えっ、ええ……。

 わかりました。

 そのように取り計らいます」

 とりあえずの方針は決まった。


 その後ロルフさんの揉み手が始まる。


 金の話かな?


「そこで、利益配分なのですが……」


 当たりだ。


 ロルフさんの揉み手が早くなる。

「ロルフさんが六割、私が四割で良いのではないですか?

 俺には容器の手配は無理です。

 職人の手配も。

 店の準備だって……。

 こっちが生産している材料代も貰っていますし、その程度でいいかと……」

 と俺は言った。


 実際その通りだ。

 俺は知識を表に出しただけ。

 材料代もコカトリスとフォレストカウのエサ代さえかかっていない。

 運送費などの金がかかっている訳でもない。


「本当に?

 私としては、逆でもいいと思っていたのです」

 好条件に揉み手が加速するロルフさん。

「いいや、このぐらいでいいんではないでしょうか?

 それに、まだ収入が確約された訳ではありません」


 それでも材料代込みで一日金貨七、八枚ぐらいにはなるのだ。

 皮算用だが、ひと月で白金貨二枚程度にはなる。

 定期的な収入が出来ただけで今はそれで十分。

 これでマットソン子爵に確実に入る収入が一つできた。

 増産するかどうかは今後に期待である。  


読んでいただきありがとうございます。

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