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第96話 石のオブジェと糸のオブジェ

誤字脱字で迷惑をかけております。

「第一王妃、レーラ様がご懐妊!」


 街中を触れ回る兵士たち。

 オースプリング王朝の懸念事項の一つだった「後継ぎがいない」というものが無くなるのだ。

 町中がお祭り騒ぎだった。

「やっとか……。

 無事に生まれれば、王も安心だろう」

 義父さんも喜んでいた。


 フリーデン侯爵の娘は懐妊しなかったんだな……。



 順調にダンジョンを攻略して五日間、二十八階に到達した次の日二日の休みをとった。


 週休二日だって言って、実際にそうなったのは初めてか……。

 アイナもマールも強くなった。


 と思っていたそんな休みの初日、

「マサヨシ様、メルヌの街の外に首から下だけが石化した者たちが転がっているのですが……。

 昨日は街の中で何も無かったと言っていましたので、夜の間に何かあったのかと……」

 困った顔でセバスさんが相談してきた。

「メルヌの住民はコカトリスに故意に手を出したりはしないはずだよね」

「はい、手を出さなければ何もしないことは周知してあります。

 子供たちはコカトリスに乗って遊んだりしていますから、コカトリスの扱いにも慣れ、その点は知っているはずです」

「では、それを知らない旅人?」

 俺は首を傾げた。

「旅人たちは魔物に襲われることを嫌いますので、コカトリスにわざわざ手を出したりはしないかと思います」

「それ以外……」

 俺は少し考えた。


 ああ、あるよね、うちにはそういう要因


「アイナ系かね?」

「マサヨシ様もそう思いますか?」

 セバスさんも薄々気付いていたのだろう。

「アイナ様の所有者変更後、アイナ様を隷属化した者たちは何も動いていません。

 しかし、レーラ様がご懐妊された現在、無事にお世継ぎが生まれたとして邪魔になるのはアイナ様。

 そのせいで相手が活発に動き出したのかもしれません」

「セバスさん。

 オースプリング王朝の後継ぎとして女性は可能なの?」

「はい『男性が居ない場合のみ』という限定ではありますが、女王を立てることもできます」


 ふむ……。


「アイナはメルヌの屋敷の執務室で所有者変更をした。

 だから、こっちを狙ってきたのかもしれない。

 しかし、今襲ってきたらレーラって王妃の関係者だってわかってしまうのにな……。

 コカトリスには『殺すな』と言っておいた。

 あいつらなりに考えた結果が石ダルマなのだろう。

 で、その石化した者たちは?」

「屋敷の庭に置いてあります」

「俺が行こう」

 俺はセバスさんとメルヌの屋敷に向かった。


 庭に出ると不審者たちの石のオブジェが五つ。

 石ダルマのようになった男たち。

 俺を睨みつける。

「単刀直入に聞こう。

 この街に何をしに来た?」

 と俺は聞いた。

「言えるはずがないだろう?

 主君を裏切ることになる」


 そんなこと言っちゃダメだろう。

 バレバレだ。


「主君ねぇ……。

 どっかの貴族のお抱えか……。

 まあ、いいや。

 奴隷の娘は俺が預かっている。

 確か、マティアス王の落とし種なんだろ?

 それが居て困るのは……レーラ様って言う王妃の父親?

 ごめん俺知らないや」

「エディー・ノルドマン公爵です」

 呆れたようにセバスさんが言った。


 知っとけって?

 ごめん、まだ貴族の名前覚えてない。


「その公爵の関係者なんでしょ?

 このマットソン子爵の屋敷内で奴隷の娘の所有者変更をしたというのはわかっていて、それでこの場所に来たわけだ。

 魔法書士から報告でも来たのかね?

 飼い慣らされたコカトリスが居るとは思わなかったかな?」

 顔色が変わる不審者たち。


 だから、それじゃダメでしょう?

 

「で、その娘をどうするつもりだった?

 殺す?

 そんなことしてみろ、俺がエディー・ノルドマン公爵を殺すからね」

 リードラ級の威圧を添えてそう言うと石化を解いた。

「帰って主人に伝えろ。

『奴隷の娘は俺の妻になる』と言っている。

 だから表に出ることは無い。

 信用できなくば襲ってくるがいい。

 その代わり、それなりの覚悟をしておくように』

 とな」

 俺は屋敷の勝手口を開ける。

 すると、五人は振り返りながら去っていった。


 本当は子爵の息子が落とし種とはいえ王の娘を妻にするっていうのもよろしくは無いんだろうけどね。

 一応、王も知ってるし。


「良かったので?」

「んー、ごめん、わからない。

 一応忠告はしたから……次来たら容赦はしない。

 聞いてるんしょ?

 フリーデン侯爵のこと」

「えっ、ええ、まあ、旦那様からは……」

「だから、少し待とうよ。

 義父さんへは私から言っておくから」

「畏まりました」

 セバスさんは頭を下げた。


 そして執務室。

「義父さん」

「おお、マサヨシか。

 どうした」

 俺はオウルに戻りメルヌでのことを話した。

「ふむ、忠告はしたのだな」

「ええ、忠告とはいえ『覚悟しとけ!』とまで言ってしまいましたが……」

「なら、それでいいのではないか?

 お前なら、何かに襲われても逆に噛み千切りそうだ。

 フリーデン侯爵の時のようにな……」

 義父さんはニヤリと笑う。

「こちらも警戒はしておきます」

 そう言った後、俺は執務室を出た。


 俺は庭に出るとハニービーのところに行く。

「おーい、居る?」

 すると、

「これは(あるじ)ではありませんか。

 蜜が足りませんか?」

 と巣箱の中から女王蜂が現れた。

「蜜は十分にあるんだ。

 それは問題ない。

 いつも助かっております」

 俺は頭を下げた。

「いえいえ、どういたしまして。

 それでは何の御用ですか?」

「不審者が侵入してくる可能性が出てきた。

 そういう訳で、見たことがないものが黙って入ってきたら、チクリと攻撃してもらえると助かる」

「殺したほうが?」

 と女王蜂。

 

 おいおい、物騒だな……。


「いや、次の朝にでも事情を聞くから、麻痺させて転がしておいてもらえればいい」

「畏まりました。

 部下に周知しておきます」

 そう言うと、女王蜂は巣箱に戻った。


 さて屋敷の中に戻るか……。


 と屋敷のほうへ向かうと、

「ギ」

 足元にのそのそとシルクワームの幼虫。

「どうかしたか?」

 シルクワームの幼虫が現れ、その一匹が体を左右に振る。

 何かを訴えているようだ。


 何だ?


「お前らも手伝うって?」

 何となく思ったことを言ってみた。

「ギ」

 シルクワームの幼虫が頷く。

「そうだなぁ……。

 じゃあ、ハニービーが麻痺させたものたちを縛っておいてもらえるか?」

「ギ」

 再びシルクワームの幼虫たちがが頷くと、三方に分かれ動き始めた。

 パトロールに行ったらしい。

「まあ、俺たちもいるし、アイナも強くなったし大丈夫だろう」

 こうして、屋敷の中に戻るのだった。


 さて侵入者が次来たら糸のオブジェかな。

 どっちにしろ、メルヌで捕えた者たちもメルヌからオウルに急いで戻って報告しても結構な時間がかかる。

 それまではダンジョンでも攻略しておきますかね……。


読んでいただきありがとうございます。

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