第87話 二人の様子。
ダンジョンから戻り汚れを落とすと、まずはアイナの部屋に行った。
俺は部屋をノックする。
「入っていいよ」
というアイナの声が聞こえた。
「アイナ、大丈夫か?」
俺はアイナとフィナの部屋に入ると、
「ラウラ姉ちゃんにお風呂入れてもらって、フィナのパン粥食べて、今はね……フワフワして気持ちいい。
でも、マサヨシにお風呂入れてもらいたかったなあ」
俺をチラ見しながらアイナが甘えたように言った。
「んー、あれは特別。
汗で汚れているのに、お前が風呂に入らないからだろ?」
「そうだけど……もう一緒に入らないの?」
「状況によりだな。
今は入らない」
ロリコン疑惑が浮かび上がる。
「そうなんだ……んー残念」
本当に残念そうなアイナ。
「先に帰らせて悪かったな。
でも、屋敷に帰ってミランダさん達にアイナやマールを預けたら俺も安心できるんだ。
それに、今後の事もあって素材は回収しておきたいしな」
「いいよ、マサヨシはおじいちゃんの跡を継ぐんでしょ。
だからお金も必要。
私やフィナ姉ちゃんのような子が居ない領地にしてね」
アイナはそう言ってニコリと笑った。
そうだな、そういう所にしないといけないな。
アイナは掛布団を首のあたりまで上げた。
布団から俺を覗くようにアイナが見る。
「マサヨシが来てくれたから安心した。
でもそれだと、お父さんみたいだね。
私はやっぱり恋人がいいな」
「娘であり、恋人であり俺はどちらでもいいぞ?
それよりも、まずは魔力酔いを治さないと」
「トントンしてくれる?」
「ああわかった」
こういうところは子供だな。
俺がアイナの背をトントンと叩くと、アイナは戦いの疲れが出たのかすーすーと寝息を立てて寝始める。
俺は、
「お疲れさん」
と言って布団の乱れを直し、ベッドから離れアイナとフィナの部屋を出るのだった。
続いてマールの部屋。
ノックをするが返事がない。
疲れて寝たかな?
俺は扉を開けそっと部屋に入る……。
部屋に入ってから、
んー、確認のためとはいえ若い娘の部屋に忍び込んじゃいかんか……。
などと思ってしまった。
マールは布団に丸まり上げ入り口に背を向けて寝ている。
マールも戦いの疲れが出たようだ。
不意に寝返りをうち俺の方を向くと、
なっ!
布団がはだけて、俺が見てはいけないものを見てしまう。
ラッキースケベ?
にしてもマールって意外とあるんだな……。
着痩せするタイプなのかね?
いやいや、いかんいかん。
確認も終わったので……って、寝ているのを確認してマールの胸を見ただけだが……俺が部屋を出て行こうとすると、
「襲わないんですか?」
背後から声がする。
起きていたのか……。
試されたのかね。
「ああ、襲わない」
振り返らずに俺は言う。
「私は、襲って欲しい。
私はあなたが好きです。
それに『メイドは主人の手付きになってこそ本当のメイドになる』と聞いています」
「『主人の手付きになってこそ……』ってのは聞いたことが無いなあ。
『ダンジョン攻略後に』って言っている手前、マールに手を出すのもなしだ。
手を出して皆に文句を言われるのも面倒そうだし」
「私に魅力がないとか?」
「十分魅力的だと思うぞ?
だからといって手を出していいんだったら、俺は既にマールに手を出してると思う。
当然、他の奴等もな。
俺は別の世界から来てるのは知ってるだろ?
この世界ではそれが当たり前だと言われても、俺はやっぱり違うんだよ。
今、俺の周りにこんなに女性が一緒に居るってだけでも、前の生活とあまりにも違い過ぎて戸惑っているんだがな……」
俺は苦笑いしながら頭を掻いた。
「まあ、何にしろ体が弱ってる女性を抱く気は無い。
まずはゆっくり寝て魔力酔いを治さないと」
そう言ってマールの部屋を出るのだった。
廊下で、
「ふう。
マールも美人だからなぁ。
正直言って迫られたら困る。
俺もよく我慢してるよ。
年齢相応なら、とっくに手を出しているだろうに……」
と呟いていると、
「そこは手を出せばいいだろう?」
とリードラが現れる。
「引っかかるものがあるから、手を出してないんだよ。
勝手にダンジョン攻略を基準にしているのも悪いとは思ってる」
「では、ダンジョンが終われば、皆に手を出すのか?」
と、リードラに聞かれた。
「多分ね。
多分そこで割り切れる……と思う」
と言って返すしかない俺。
「それでは急がねばならんな。
我も抱いて欲しいのでな」
そう言ってニヤリと笑うとリードラは去っていった。
ダンジョンを攻略する……俺にとってのケジメなのか区切りなのか……。
はあ……。
さて、素材の処理か……。
俺は一つため息をつくとカリーネに確認するため、オウルの冒険者ギルドへ向かうのだった。
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