第83話 あれっ、俺も?
「少々は残ったようだな」
「あれを生き残るとはな。
まさに地獄の業火であったろうに」
俺とリードラは呟いた。
爆発の中心から地面は爆発の圧力で押さえつけられ、木が放射線状に倒れていた。
「リードラ、降ろしてくれ。
残った魔物を狩って仕舞いにする」
「心得た」
リードラは生き残った魔物の前まで飛ぶと、俺を降ろした。
そのままリードラは別の魔物に向かう。
赤い鱗のドラゴン。
炎への耐性があったらしい。
俺を見つけると炎を吐いてきた。
「おい、マナ、手伝え」
「何言ってるの?
さっき手伝ったでしょう?
あなたの考えがすんなり魔法になったのは私の補正のお陰。
さて、どんな魔法?」
氷でドラゴンの眉間を狙う。
速さは俺が出せる最速かな?
俺はライフルを構えるしぐさをして、魔法を打ち込んだ。
眉間から上が引きちぎられるように飛び散る。
「死んだか?」
しかしドラゴンは回復力が高いのか、肉が盛り上がり始めていた。
俺は全速で近寄るとドラゴンの首へオリハルコンの剣を叩き込んだ。
硬さを感じたが、切れ味を上げる魔法のお陰かドラゴンの首は切れ、どさりと首から上が落ちる。
ドラゴンの血が滝のように噴き出し、俺の体に降りかかった。
「そういや、ドラゴンの血を浴びると強くなるような物語があったな」
次の魔物を探すと、これも火の耐性がありそうなサラマンダーだった。
地を這いながら素早く俺に接近してくる。
こん棒ほどもありそうな尻尾で俺を攻撃してきたが、その尻尾を掴むと剣で切り取った。
ドラゴンより弱いか……。
尻尾を投げつけそのままサラマンダーに近づくと眉間に剣を突き立てる。
「グエ」というカエルのような声をあげると、サラマンダーは動かなくなる。
生き残っている魔物は火の耐性がある中位以上の魔物らしい。
ただ、俺とリードラの相手にはならず、残っていた光点も次々に消える。
「お疲れさん」
戻ってきたリードラを魔法で洗い、ピカピカにする。
それが終わるとリードラが人化した。
「ただいま。
黒龍がおったが、あの魔法の中でもぴんぴんしておった。
久々に骨のある相手と戦えたのう。
まあ、主によって高められた我の相手ではなかったが……」
少々興奮していたのかリードラの顔が赤く上気していた。
「俺も赤いドラゴンを倒したぞ。
血を浴びてしまったが大丈夫かな?」
「大丈夫じゃ。
ドラゴンの血は強壮剤じゃからな」
「ほほう、強壮剤ねぇ」
「我はいつでも相手するぞ?」
笑いながら腰をくねくねと振るリードラ。
からかっていやがる。
「まあ、素材は高価じゃからな。
集めておいて損はないだろう」
二ッと笑ってリードラは言った。
レーダーでドラゴンを表示させると、十七あった。
生き残ったのは、火の耐性があったレッドドラゴンとブラックドラゴンらしい。
残りのドラゴンは耐性が無かったせいか全て死んでいた。
まあ、簡単に倒せたのも少々の体力は削れていたせいかもしれない。
俺はドラゴンの死体を収納カバンに入れていく。
ブラックドラゴンはリードラほどではないにしろ、四十メートルほどあった。
「あとは、ダンジョンの入口っと」
入り口を探すと、爆風で巻き上げられた土に埋まっていたようで、マナに言って掘り出してもらう。
「ダンジョンから魔物が出てこないな」
「主よダンジョンの中の魔物の数が適正数になったのだろう。
もう数百年は大暴走で魔物が外に出ることはあるまい」
「放っておけば、誰かが入口を見つけるかもしれない。
でも誰かに見つけてもらうほうがいいかもしれない。
特に、俺以外の誰かに……」
こうして大暴走の危機は去ったのだった。
俺とリードラは扉で屋敷に帰る。
「ただいま帰りました」
不安そうに立って待っている義父さん。
「おお、帰ったか。
首尾は?」
「もう終わりました。
大暴走はもう無いでしょう」
「そうか、よくぞ戻ってきた」
義父さんはうっすらと涙を浮かべていた。
「義父さん。
我が領内なのかドロアーテ側なのかはわかりませんが、森の中にダンジョンを見つけました。
どのようにすれば?」
「お前が見つけたと届け出れば……」
と、義父さんがチラリと俺を見ると、
「面倒なことになりそうだな……」
「はい、多分」
「勝手に終息したことにすれば良い。
お前の魔法はどんな魔法だ?」
「上空で爆発するような魔法です」
「なれば、星が落ちてきたことにすれば良い。
星が落ちると、爆発したようになると聞く。
神が助けてくれたとでも言っておけばいいだろう」
父さん、よく知っている。
「さて、ダンジョンの発見者だが……。
うん、タロスにやらそう。
マサヨシの指示で爆発の確認に行ったことにすればいいだろう。
その時にダンジョンを見つけた……。
そう言うことにする。
タロスを呼べ、そして足の速い馬。
ああ、神馬いたな。
それを駆らせて、ダンジョンのある場所まで走らせれば良い」
「畏まりました、タロス殿を呼んでまいります」
近くに控えていたセバスさんがタロスを呼びに行った。
結局、ドゥと共にタロスを一度ダンジョンの入口まで行かせ、そのままドロアーテの冒険者ギルドへ向かわせた。
「ドロアーテからの早馬の後、マットソン子爵の命で大暴走の状況を確認しに行った時、急に空から星が降ってきて魔物の上で爆発。
その威力で魔物たちは死滅し、ダンジョンの入口が見つかった」
と報告をさせる。
「危機が去った」
とドロアーテ側は喜んでいたということだ。
夜も開け昼頃になり、
「『ダンジョンを発見したタロスの主である義父さんにダンジョンを管理する権利が発生する』とドロアーテの冒険者ギルドマスターが言っておりました」
とタロスからの報告があった。
「ダンジョンの管理とな?
金が要るのう……」
困った顔の義父さん。
「まあ、まあ、しばらくは勝手に入れないように塞いでおくしかありませんね。
聞いた話ですが、次回の大暴走まで数百年あるのであれば、急いでダンジョン周辺を開発しなくても良いかと思います」
と俺が言うと、
「そうだな。
とりあえずは所有権を書面に残し、お前がゼファードのダンジョンを攻略してからでも開発は遅くはあるまい。
カリーネに頼んで正式な書面にしてもらわんといかんな」
と義父さんは言った。
「さっそくカリーネに……」
と言ったあとの俺の意識はない。




