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第67話 待っていたものが来ました。

 昼食が終わってコタツで横になってゴロゴロしていた。


 本当ならばテレビとミカンが欲しい。

 まあ、当然そんな物は無い。

 そう言えば『食べてすぐ寝たら牛になる』って嫁さんに言われたよなぁ。

 まあ、俺の場合すでに牛っぽいが……。


 そんなことを苦笑いしながら考えていると、相変わらず露出の多い仕事着を着たカリーネが現れた。

 下から見上げる形になる俺。

 カリーネの顔はカリーネが持っているたわわな物の影に顔が隠れていた。

「スリットから中が見えるぞ?」

 と、イタズラのつもりで言ったのだが、

「良いのよ、わざと見せてるんだから」

 と、顔が見えるように少し屈んで肯定で返されてしまった。


 よく言う。


「盛りは?」

「あれからは大丈夫」

 みんなで相談したのか、週一ぐらいでカリーネは俺のベッドに潜り込んで抱き付くようになった。

 俺の匂いを嗅げばいいらしい。


「で、何か用?」

 と聞いてみる。

「連れないわね。

 許可証が出来たから持ってきたのに」

「ああ、そう言えば、もう一カ月も経つのか。

 グランドマスター直々にとは申し訳ない」

 寝転がったまま俺は頭だけ下げた。

「実際には一カ月と五日。

 お役所仕事だから、時間がかかったみたいね。

 貴族のお抱えの冒険者なら貴族が一声かければ早いんだけど……。

 でも、あなたはクラウス様の力を使わなかったでしょ?」

 そう言いながら、俺の横に座るカリーネ。

 ポンポンと太ももを叩き、

「はい、膝枕」

 という。

「ああ、ありがと」

 俺が頭を上げると、カリーネは枕を外しスッと膝を入れた。

 カリーネの膝に頭を置くと、ふわっとカリーネの匂いが鼻腔をくすぐる。


 膝枕なんていつ以来だ?

 見上げるとカリーネが俺の顔を覗き込んでいた。

 何かニヤニヤしている。

 目が合うと、ちょっと恥ずかしい。

 話しに逃げるか……。


「おっ俺は元々お抱えでもないし、申請にそんな裏技があるのも知らなかったしな。

 知っていても、自分の力が無いのに義父さんの威光を振りかざすのもね……」

「あなたらしいわね。

 まあ、これでゼファードのダンジョンに入れるわ」

 カリーネはそう言って、定期券ほどの許可証を取り出す。。

「そこ置いといてよ」

 と、コタツの天板を指差すと、カリーネはコタツの天板の上に置いた。


「いつ頃から行くの?」

 首を傾げながらカリーネが聞いてくる。

「そうだなぁ……クリスとアイナとリードラに聞いてみてからかなぁ」

 でも、もう少しで年明けなんだよね。

 大集会で、義父さんも元気になった姿を、イタズラついでに政敵っぽい誰かに見せたいみたいだし。

 俺の事も周知させたいらしい。

 その辺を考えると、少しダンジョンに慣れる程度で今年は終わりかな?」

「そう言えば、噂は聞いたわよ?

 『鬼神』の養子は『オーク』だったって……」


 確かに一応養子縁組は終わって義父さんの息子ということにはなっている。

 だが、まあ、俺と義父さんが立っていても養子とはいえ俺が義父さんの息子とは誰も思うまい。


「ほう、なかなか上手いこと言っているじゃないか」

 俺は苦笑いする。

「マサヨシは嫌じゃないの?」

 カリーネが不思議そうな顔をした。

「怒ると思っていたのか?」

「そう、貴族ってプライドが高いでしょ?

 だから『怒るのかな?』って……」

「そうだなあ……嫌かどうかと言ったら、嫌だが……。

 良い得て妙で、その通りだから仕方ない。

 それに当たっていることを怒ってもな……」

「私は……知ってるから

 見た目はオークでも、優しいって……」

 カリーネは近寄って抱き付き、スンスンと匂いを嗅ぐ。


 見た目がオークなのは肯定されてるわけね……。


 見ると、柱の陰からエリスがチラリと顏を見せていた。

「エリスに覗かれてるぞ?」

「エリスには『頑張れ!』って言われてるからいいの」

 振り返らずに抱き付いたままのカリーネだった。

 しばらくカリーネの尻尾のモフモフを堪能させてもらう。

 触るたびに少し震えていた。


 時間が来ると、

「じゃあ、そろそろ戻るわね」

 と言った。

 

 グランドマスターの忙しい仕事の合間に来たようだ。


「カリーネ、わざわざありがとな」

と、声をかける。

「いいのよ。

 仕事中に堂々とあなたに会う口実が出来たんだから。

 それに、あなたの匂いも嗅げたしね」

そして少し考えると、

 知ってる?

 私たち獣人は、好きな相手にしか尻尾を触らせないのよ?

 じゃっ」

 そう言って、カリーネはマスターの部屋行きの扉へ向かって言った。


「好きな相手」を強調したかったんだろうな。


 去り際のカリーネの頬が赤かった。



 するとエリスが柱の陰から現れ、

「ねえ、お義父さんになってくれるの?」

 と、言ってコタツで寝転ぶ俺の前に座って聞いてきた。

「今のままじゃ嫌か?」

「んー、今のままでもいいけど……。

 お母様が可哀そう。

 いつも寝言でマサヨシ様のこと言ってる」

「そうか……。

 にしても追々だな……」

「追々?」

「一つ一つ終わらせないといけない。

 やっと義父さんと養子縁組が出来た。

 次は自分事だが、ゼファードのダンジョンを攻略する。

 その後だろうな」

「その後って、お母様との結婚?」

「それもある……と思う」

「わかった、期待してるね」

 エリスはトタトタと歩いて行った。


 押しが強いエリス。

 完全に我が家状態だよな。

 エリスはそのつもりのようだ。


 庭に出ると、義父さんが型の練習をしていた。

「義父さん、今よろしいでしょうか?」

 と、声をかける。

「なんだ?」

 型の練習をやめ汗を拭きながら俺に聞いてきた。

「ゼファードのダンジョンへ入る許可が出ました」

 と報告をした。

「そうか、で、いつから行く?

 と言っても、すでに年末。

 お前は既に我が息子となった。

 大集会には出てもらわねばならん」

「そうですね、ダンジョンは俺やアイナが慣れる程度にする予定です。

 だから、日数的にはあまり行けないかもしれませんね」

「わかった。

 大集会を忘れないようにな」

 義父さんはそう言ったあと、

「あー……、シルクモスの服が出来たそうだな」

 顎に手を当て、言い辛そうに義父さんが言う。

「ええ、ガントさんのお陰で出来上がりました。

 義父さんの服についても言ってありますので、行くだけで問題ないと思います。

 布も残っていると言っていました」

「えっ、そうなのか?」

 義父さんは少し考えると、

「うーん、まだ年始の大集会間に合うな……。

 セバス、居るか?」

 と呼ぶ。

「はい、こちらに」

 セバスさんがスッと現れた。

「サイノスに言って、馬車を出してもらえないか。

 ガントの店に行くぞ」

「はい、かしこまりました」

 そう言って二人は館の中に入って行った。


 さて、やっとダンジョン攻略ができる。

 どうなるのやら……。


読んでいただきありがとうございます。

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