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第48話 依頼の報告をしに行きましょう。

 まだ盛り上がっているタロスさんとカミラさんの二人。

「えーっと、そろそろ冒険者ギルドへ報告に行きたいんだけど……」

 タロスさんとカミラさんに声をかけると、

「あっ、わかりました」

「おお、(あるじ)よ、すまない」

 と言って、赤くなった二人が離れる。

「しかし、子爵の手の者は大丈夫だろうか」

と、タロスさんが不安げに聞いてきた。

「まあ、ヴァルテル・アッテルバリ子爵の手の者も、オウルに戻っているとは思わないでしょうし、向こうから便りが来たとしても時間がかります。

 それまでに対策を立てれば大丈夫だと思います。

 ギルドにもその旨は言いますし、義父さんにも相談してみるつもりです」

と、タロスさんに言った。


「それじゃ、カミラさん冒険者ギルドへ行きますか」

 と俺が言うと、カミラさんは

「わかりました」

 と言った後、

「タロス様、今度お礼に参りますね」

 と言った。

「ああ、楽しみにしている」

 と言って、カミラさんを見送るタロスさんが居た。


 カミラさんを連れ、オウルの冒険者ギルドに行く。

 夕方も早い。

 まだ帰ってくる冒険者は少ないのか、ギルドは閑散としていた。

 すると、

「お帰り、早かったわね」

 カリーネが俺を見つけてやってくる。

「んー、リードラが居るからね。

 空を飛べる分、人より足は速い。

 帰りは扉だしな。

 で、この人がカミラさん」

 俺が言うと、カミラさんはペコリと頭を下げた。

「あとの面倒は、カリーネが見てくれるんでしょ?

 これ依頼証ね」

 と聞いた。

「わかった。

 で、報酬はどうするのよ?」

「んー、元々財産目当てじゃないしなぁ。

 今後俺がやりたい事への『援助』と言うか、『手伝いをしてもらえると助かる』と思ってやっただけだから。

 まあその辺のことをロルフさんって人に言っておいて」

「欲がないのね」

 カリーネは受付けの一人を見ると、

「あなた、この依頼証の処理と、この人をロルフさんの家に馬車で送って。

 ちゃんと先触れしておくのよ。

 急に行ったら向こうがびっくりするから」

 カリーネはそう指示を出した。


「あと、コレ……」

 俺はフーティーの街で手に入れた人身売買組織と冒険者ギルド側の癒着の証拠となる手紙の束をカリーネに差し出した、

「えっ、何これ」

「ん?フーティーの街に人身売買の組織があったんだよ。

 その組織と子爵、そして冒険者ギルドが繋がっていたみたい。

 奴隷の売り手が求めるスキルや職業を持った冒険者を紹介していたんじゃないかな。

 その辺の話が書いてあった」

「早急に調査します」

 カリーネの顔が変わる。

 近くに居た男性職員を呼ぶ。

「強硬調査班へこれを……」

 と言って手紙を渡した。

「言い訳にしかならないけど、ドロアーテの冒険者ギルドも頑張ってくれていても、あの辺は遠いから目が届かないの。

 王都騎士団と協力して事に当たることになりそうね。

 あなたのせいで忙しくなりそう」

 溜息をつきながらカリーネが言った。

「んー、申し訳ないとしか言いようが無いな。

 夜遅くまで残らなければいけないようなら、エリスをうちで寝かせてもいいぞ?

 部屋もまだ余っているようだし」

するとカリーネは、

「私もいい?」

と言って甘えるように言ってきた。

「それは問題ないが……カリーネの家があるだろ?」

「あの家に居ても、あなたはあの扉から入ることは無いでしょ?」

「そりゃそうだ、あの扉の向こうは他人の家だからな」

「でも、あの屋敷に居れば……あなたに会える。

 本当のことを言うと、あなたのところの食事は美味しいから」


 フィナに胃袋を掴まれたようだ。


「あっ、あとこの部屋からあなたのところまでの転移の扉があるといいなぁ……」

 更に甘えるような目で俺を見る。

「やれやれ、わかったよ」

 と、俺が頭を掻きながら言うと、

「やたっ」

 飛び跳ねるカリーネが居た。


「グランドマスターがあんなに女してるのって初めて見た」

「いつもは冷静なんだけどちょっと違うわね」

 いつもと違っていたのだろう、職員たちが呟く。

 しかし「ゴホン」とカリーネが一つ咳払いをすると、ギルドの中が静かになる。


 再び屋敷に戻った。

 廊下を歩くセバスさんを見つけ、

「セバスさんご迷惑をおかけしました」

 と、五人の件を謝り、頭を下げる。

「確かに、行き当たりばったりで人を雇うというのはよくありませんね。

 まあ、今回は通り名を持つ騎士が入りました。

 それに、早急に欲しいと思っていたメイドも……。

 あの子たちも素直そうだ。

 ナゼか大人並みの力もある。

 今から育てれば、マサヨシ様のいいメイドといい従者になるでしょう。

 あの者たちは助けてもらった恩もあるので、裏切ることは無いでしょうしね」

 淡々と五人を分析した結果を言うセバスさん。

 しかし最後に、

「私としては、そういう条件よりも、マサヨシ様は人として正しい事をしたことが嬉しいと思います」

 そう言ってニヤリと笑った。

「ありがとうございます」

 と俺は返す。

 

 間違っていないことをしていても『間違っていないと』言われると嬉しいものだ。


 

「しかしながら、できれば事を起こす前に相談をお願いしますね」

 と言うとセバスさんは去っていった。


 そして、次に義父さんの居る執務室の扉をノックする。

「マサヨシです」

「入れ」

 俺は中に入った。

「この度は急な話で申し訳ありませんでした」

 俺は頭を下げる。

「良い良い。

 良い騎士が手に入ったではないか。

 あれなら、お前を裏切ることは無い。

 あのメイドも気が利くようだ。

 茶を出してくれたが、ミランダに劣らぬほどの技術を持っていたぞ。

 あの子たちもあの歳にあり得ぬくらいの力を持っておったな。

 どんどん儂が若かった、人が多かった頃に戻って行くような気がして嬉しいのだ」

 全盛期を思い出しているのか遠くを見るように話をする義父さん。

「そう言っていただけると助かります。

 迷惑ついでに、もう一つお願いと、一つ相談が……」

「何だ?」

「まずは、この前来たエリスをこの家に泊まらせてやってもらいたいのです。

 ついでに、その親も」

「その者も家を持っているのではないのか?」

「そうなんですが、甘えられると断れない訳で……」

 ポリポリと頭を掻く俺。


 ちと情けない。


「部屋は余っておる。

 それに、エリスとアイナ、フィナは姉妹のように仲が良い。

 良いのではないのかな?

 ミランダに言って一部屋準備するといい」

「ありがとうございます」


「あとは相談じゃな」

 義父さんが聞いてきた。

「これを……」

 ヴァルテル・アッテルバリ子爵とその組織の癒着の証拠である手紙を差し出す。

 義父さんは手紙を読むと、渋い顔をした。

「ふむ、あの男に渡しておけば問題ないだろう。

 ヘルゲ・バストルへの紹介状を書く。

 それを持って、明日、王都騎士団へ行くといい」

「その方は、どのような立場で?」

「王都の騎士団団長だよ。

 ああ、ちゃんとオリハルコンの長剣を背負って行く事。

 ちょっとした試験もありそうだが、お前なら大丈夫だろう」

 そう言って机に座ると、父さんはニヤリと笑いながら紹介状を書き始めるのだった。


 エリスはフィナとアイナが面倒を見ることになった。

 エリスも「一緒に寝られる」と喜んでいた。

 聞くに、カリーネが遅いときは一人で寝ていたと言っていた。


 寂しかっただろうに……。



 俺は準備したカリーネの部屋からグランドマスターの部屋へ扉を作った。

「お邪魔しますよ」


 テストも良好。


 開けた先はグランドマスターの部屋だった。

「あっ、作ってくれたんだ」

「約束したからな。

 これ、壁に付けておくから。

 あと、手だして」

 カリーネが出した手をノブに触れさせ、使用者登録する。

「これで、カリーネもこの扉を使えるな。

 この扉の先は屋敷のカリーネの部屋に繋がっている。

 屋敷で寝るときはこの扉で移動すればいい。

 エリスは心配しなくていいぞ。

 フィナとアイナのどちらかが一緒に寝ると言っていた」

「あなたは何で、私みたいな者にそんなに優しいの?」

と俺に近づきながらカリーネが聞いてくる。

「さあ?

 カリーネが『私みたいな者』という理由がわからないが、たまたま助けたエリスとの縁がカリーネに繋がっただけじゃないか?」

と言って、

「さて、俺は帰るぞ」

と、早々に帰ろうと扉を出すと、カリーネが俺の背に抱き付いてくる。

「私が盛っているのを知っているでしょ?

 少しだけ、このままで」

 許可の返事もしないのに、当たり前のように甘噛みを始め、匂いを嗅ぎ始める。

 しばらくすると、

「マサヨシ成分充填完了。

 これでもう少し頑張れる」

 スッとカリーネは体を離した。

「そりゃ良かった。

 俺のせいで忙しくなるかもしれないが、あまり無理しないようにな」

 俺はそう言って、オウルの屋敷に戻るのだった。


読んでいただきありがとうございます。

また、誤字脱字の指摘、大変助かっております。

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