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第42話 申請って意外と時間がかかるんです。

(ぬし)よ、ダンジョンは?」

 リードラが話を進めようと声をかけてきた。

「そうだ!

 カリーネ、ゼファードのダンジョンに入るための許可証を貰いたい」

 俺が言うと、

「大体一か月ほどかかるけど、いい?

 本来、ゼファードでの申請の後、このオウルの冒険者ギルドで審査して、王城に結果を報告。

 その上で王城内で判を押し許可証を発行する。

 オウルで直接申請してそのくらいかかるの」

 と、カリーネが説明してくれた。

「結構かかるんだのう」

 リードラが不満げに言う。

「できるだけ死人が出ないようにするためには、入洞審査は厳しくしないとね。

 まあ、あなた達なら大丈夫なんでしょうけど」

 カリーネは俺とリードラを見た。

「申請には一組のパーティーに付き白金貨一枚よ。

 パーティーの人数は最大五人までって決まってるから注意ね」


 ほう、一億円。


「結構するんだな」

 と、俺が言うと、

「入洞許可証があればいつでもダンジョンに入っていいんだから、それぐらいは当たり前よ。

 それに、ダンジョンの中に入って魔物を倒せばお金や素材がドロップされる。

 それを売ればパーティーは潤う。

 ゼファード自体がそんな素材を冒険者から買い、商人に売ることで発展した街なの。

 上手く商人と売買すれば白金貨なんてすぐに回収できる。

 だから高くない買い物なのよ」

 と、カリーネが言う。

「うし、そういうことなら、手続きをしないとな。

 どうすればいい?」

「パーティーのリーダーはCランク以上の冒険者でなければならないけども……マサヨシはBランクになったと報告書が来てたはずだから、問題は無いわね」

「凄いな、一介の冒険者のランクの事を知っているとは……」

「ランクが上がるのが速すぎるのよ。

 普通FランクからBランクに上がるのに一年かからないなんて聞いたことが無い。

 ギルドマスターの特権と領主特権を使う冒険者なんてほとんど居ないの。

 そんな報告書を私が見逃すはずがないでしょ?」

 ドヤ顔で鼻息荒くカリーネが言う。

「さて、手続きね」

 カリーネは机の引き出しから書類を取り出すと、

「これにリーダーの名前とメンバーの名前……あっ、リーダーを入れて五人までね。

 それと、できればパーティーの名前も書いてもらえる?」

「パーティーに名前?」

「そう、当たり前でしょ?

 別に『マサヨシのパーティー』でもいいわよ?」

 カリーネが意地悪そうに笑う。

(われ)はそれでも良いが……」

 リードラはあまり気にしていないようだ。

「でも、それは嫌だなぁ」


 んー、パーティーの名前って言っても困るぞ。

 手続きは早いほうが良さそうだしなぁ。


「申請後に名前を変更できるのか?」

 と、カリーネに聞いてみると、

「変更申請すればいいけど、時間はかかるわね」


 結局手続きが要る訳か。


「リードラ、ちょっと紋章を見せてもらえないか?」

「いいが、どうするのだ?」

 そう言って鎖骨の辺りを出し、紋章を見せる。

「紋章が弄れないかとね。

 それができるなら、パーティーの名前にしていいと思う」

 焼き付き赤くなった隷属の紋章。


 赤い紋章かぁ……。


 俺はリードラの紋章に魔力を流してみると、紋章が歪む。

 そのまま砂漠の某エリアの88番目の主人公のエンブレムをイメージして、一角獣の形にした。

「隷属の紋章の形を変えるって、そんなことできるの?」

 カリーネが驚いた。

「『できないかな?』と思ってやってみたらできたんだ。

 元々、だれも『紋章の形が変えられる』と思っていなかっただけで、ちょっと魔力を使えばできたのかもしれないだろ?」

「誰にもそういう発想はなかったんでしょうね。

 それならば、奴隷だと表立たないからいいわね」

 カリーネが言った。

「だろ?

 さて、馬系の魔物で眉間に角が一本ある一角獣って想像上の魔物なんだが、聞いたことはあるか?」

 と俺が聞くと、

「私は聞いたことが無いわ」

(われ)もだな」

 カリーネとリードラが言う。


 ドラゴンが居てもユニコーンは居ないのか……。

 向こうの世界で想像されたものが、全てこちらの世界に居るとは限らないんだな。


 と、思ってしまった。

「しかし、こんな魔獣考えるとは、(ぬし)は想像力豊かなのだな。

 誰も使っていないこの意匠、(われ)は気に入ったぞ」

 一角獣に変わった隷属の紋章をなぞりながらリードラが言う。


 パクリだけどね。


 リードラにそう言われると、ちょっと申し訳なく思えてしまう。

 しかし、

「そうね、魔法陣にしか見えないあの隷属の紋章よりも、その方が全然綺麗」

 カリーネも言った。


 さて、皆の紋章も変えておかないと。

 アイナの紋章は黒いがどうしようか……。

 アイナについては、紋章をわざと赤くする事で対応した、


「それじゃ、パーティーの名前は『赤い一角獣』にする」

 サラサラと申請書にパーティーの名前を書く。

「焼き付いた紋章なんてめったに無いらしいから、パーティーにちなんだ赤い刺青に見えるし丁度良さそうだ」

 俺は書きながら言った。

「リーダーは(ぬし)じゃな」

 リーダーの欄に俺の名を書く。

 そして、メンバーの欄に、クリス、リードラ、アイナの名を書いた。



 申請書をカリーネに渡すと、

「ん、これでいいわね」

 申請書を確認した後、カリーネが机に戻り判を押す。

「これで、私の決済までは終わったから、あとは王城の手続き次第。

 一カ月程度だとは思うけど……えっそうか、年越し前になるのか……。

 年越し前は書類が多くなるから、もしかしたら長くなるかも……覚悟しておいて」

 申し訳なさそうに言った。

「仕方ないな、了解しました」


 まだしばらく時間はある。


「焦げ付いた依頼はいっぱいあるから、できればこっちの冒険者ギルドで仕事をしてもらえると助かるわ」

 チラチラと期待の目をしてカリーネが言った。

(われ)も冒険者として仕事をしてみたいのう」

 こっちは仕事への期待で目がらんらんとしているリードラ。

「まあ一カ月以上あるのなら、そのくらいはできるだろう」

 と、俺が言うと、

「そうじゃな」

 と、リードラも納得した。


「さて、俺の用事はこれで終わった」

 と言うと、

「わたしは、もう少しマサヨシの成分を補給したい」

 そう言って再び甘噛みを始めるカリーネ。

(われ)も便乗して……」

 リードラも抱き付く。

「そろそろ帰るぞ」

 そう言って立ち上がると、

「いけずねぇ」

「いけずだのう」

 二人が残念そうに言うのだった。



読んでいただきありがとうございます。

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