第39話 ホットケーキを作ってみよっか。
朝起きてフィナの寝顔を覗いていると、すっとフィナの目が開き、俺と目が合う。
昨日の事を思い出したのか、顔が真っ赤になり、
「ちょっ、朝食の準備に行ってきますぅー」
と言って慌ただしくベッドを飛び出していった。
おーい、特に何もしてないぞー。
朝食が終わり、フィナが朝食の片づけが終わったころ、俺が甘いものをほしいと思ったついでに、菓子作りをフィナに教えることにした。
自論だが、甘いものは心を豊かにすると思う。
「フィナ、今時間はあるか?」
俺が声をかけると、
「あっ、マサヨシ様、何の御用でしょうか?」
と、エプロンで手を拭きながらフィナが現れる。
嬉し恥ずかしなのか、尻尾はゆっくりと振れるが顔は少し赤いフィナ。
「向こうの菓子が食いたくなってな。
何か作ろうかと思ったんだ」
「向こうの?
マサヨシ様がおいでになった所のですか?」
「ああ、その通り。
それで、その菓子の作り方を知りたくないか?」
「はい!お願いします」
嬉しそうに即答で返事をするフィナ。
「それじゃ、第一段階。
材料確保で、クリスに蜂蜜を使っていいか聞いてきて。
蜂蜜は収納カバンに入っているんだが、これはクリスのだからな」
そういうと、
「はい!
クリスさんに聞いてきます」
と言ってフィナはクリスを捜しに調理場を出ていく。
それを見ながら、俺は、ボールと牛乳バター、そして小麦粉と蜂蜜を調理台の上に出した。
「あとは、クリスの許可待ちか……」
すると、フィナと共にクリスが現れる。
「クリスさんは暖炉の前のソファーで寝ていました」
というフィナの報告。
「どんだけ堕落しているんだ」
「いいじゃない、気持ちいいんだから……」
お前は猫か!
「まあ、異世界のお菓子が食べられるって言うのなら、来ない手は無いわ。
蜂蜜も使ってちょうだい」
食う気満々でクリスは来たようだ。
「フィナに料理を教えるんだから邪魔するなよ!」
「しないわよ!
食べる専門なんだから!」
クリスが胸を張って言ったが、
それは胸を張るところじゃないだろう……。
と俺は思ってしまった。
フィナにホットケーキの原液のレシピを教える。
まあ、簡単だけどね。
ボールの中に小麦粉と牛乳、卵、蜂蜜を入れ混ぜ込み、油代わりにバターをひいたフライパンで焼く。
ポツポツと気泡ができて破れてくると、頃合いを見てひっくり返した。
キツネ色に焼けている。
そのまましばらく置いて、フライパンから皿に移しバターを置きその上からハニービーの蜜をかけた。
出来上がったホットケーキをフィナの前に差し出した。
「こんな感じ。簡単だろ?
簡単すぎて、技術が出るかもしれないけどね。
フィナなら大丈夫だろう」
フォークで一部を切り取り、口に含むフィナ。
「あっ、美味しい」
と、呟いた。
「卵と牛乳、蜂蜜のお陰だ。
ハニービーの巣も手に入ったから、しばらくすれば定期的に蜂蜜も手に入るだろう」
フォークを咥え、準備万端でクリスがじっと出来上がったホットケーキを見ていた。
「おっと、クリスは蜜を提供したから食う権利は有るな」
そう言って、クリスの前に皿を置く。
早速クリスは咥えていたフォークを使って、ホットケーキを一口食べた。
「あっ、これ美味しい。
牛乳を飲み物にしたら合いそうね」
俺はコップに牛乳を入れクリスの前に出した。
「んぐっ、コレなら結構食べられそう。
朝食にもいいんじゃない?」
「そうだな。
朝飯としてこれを出していた店もあったから、問題ないと思う」
「マサヨシ様、原液が余っています」
コカトリスの卵は大きく、ダチョウほどは大きくないとはいえ、普通のニワトリの十個分ぐらいの大きさはある。
ホットケーキの原液は十人分ぐらいあるのだ。
「私が焼いていいですか?」
と、フィナが言うので、
「おう、やってみるといい」
と、俺はフィナの横に付いた。
フライパンの温度、気泡の破れ具合、ひっくり返すタイミングなど俺が知っている事を教える。
すると、コツを掴んだのか俺よりも上手にホットケーキを焼き始めるフィナ。
「おお、俺よりうまく焼いてるな。
その調子だ」
俺はフィナの頭を撫でる。
いい匂いが漂う館。
ミランダさんもセバスさんも……更には義父さんやリードラ、アイナも現れた。
「フィナがいい匂いをさせたから、みんなが集まってきた。
責任取らないとな」
と、俺が言うと、嬉しそうに。
「はい!」
とフィナは返事をして、早速新しいホットケーキを焼きだすのだった。
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