表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/175

第21話 あらら、見つかってしまいました。

「最近白いドラゴンの出現が多発しててな、このギルド初のドラゴン討伐依頼を出そうかと思う」

 朝練の後、俺とクリス、アイナで冒険者ギルドに入ると、俺を見つけたグレッグさんが俺をチラチラ見ながらそんなことを言ってきた。

「そのドラゴンは悪さをしたのですか?」

「それが何もしないんだ。

 上空を暫く旋回すると、すぐに飛び去る」

「実害が無いのなら手を出さないほうがいいのでは?」

「しかし、魔物が出現するのに手を出さない……って言うのもギルドとしてはな……。

 それにドラゴンの素材というのは高価だ。

 ギルドが潤う。

 一応Aランクの依頼になるからマサヨシでも受けることができるぞ。」


 完全な俺狙いだよな。


「俺は依頼があってもしませんから」

 そう言って俺が実害を受ける前に去った。



 館に帰ると、

「ギルドマスターが言っていたドラゴンって、デンドールの館で解放した奴じゃない?」

 クリスが言った。

「そういや、あのドラゴンも白かった。

 しかし所有者も変えて、制限や強制もなくしたのになんでわざわざ戻ってくるんだ?」

「そのドラゴンも、マサヨシが好き」

 アイナが突然現れてぶっ込んでくる。

「無い無い。

 あのドラゴンと接触したのなんて五分も無いぞ?」

「魔物は強いものに惹かれるって聞いたことがあるけど……」

 ジト目のクリスが俺を見た。

「さーて、風呂に入って汗を流すか……」

 俺がそう言うと、

「誤魔化した」

「誤魔化したわね」

 二人にジト目で言われた。


 俺が風呂に入っていると、衣擦れの音が二つ。


 ん?

 まあ、クリスとアイナなんだろうが……。


「アイナも入るって。

 私に対抗するらしいわよ」

 包み隠さず風呂場に入るアイナ。

「わざわざ見せんでよろしい」

「私だって四年もすれば……」

 アイナの対抗心に対して、

「私に勝てるって?」

 いつ見ても凄いクリスがずいと俺の前に出てくる。


 まあ、どっちも見せなくてもいいんだけど……。


 三人で風呂に入ると、

「何で、俺にそんなにこだわる?」

 と俺はアイナに聞いた。

「それはね、私たちを助けてくれたから。

 私もフィナも感謝してる。

 だからフィナは屋敷に、私はマサヨシにお礼をする」

「礼なんていいのに」

 俺が言うと、

「礼だけじゃない。

 私はマサヨシが好き。

 でもこのままじゃクリスに取られちゃう……」

 心配そうな顔でアイナが言った。

 すると、クリスがため息をついたあとアイナの頭を撫で。

「あのね、私もあなたと一緒なの。

 奴隷として売られていく途中でゴブリンに襲われ、主人である奴隷商人に死なれて困っていたところをマサヨシに助けられたの。

 でね、アイナは私が綺麗だと思う?」

 クリスはアイナに聞くと。

「クリスは綺麗。私なんかよりずっと」

 悔しそうにつぶやいた。

「そう、アイナでもそう思う?

 でもねマサヨシはそれでも私を抱かない。

 死別した奥さんに義理があるらしいの。

 知ってるでしょ?

 私はマサヨシの横で裸で寝てるの」

「知ってる」

 アイナは頷く。

「それでも手は出さない。

 自信無くすわ……」

 クリスが自嘲気味に笑った。

 そして、

「多分その前の奥さんの整理ができない限りマサヨシは誰も抱かないんじゃないかしら……。

 でもね、知ってる?

 マサヨシはクラウス様の跡を継ぐの。

 つまり貴族になる。

 貴族って妻を数人娶るのよ?

 今こんな事で喧嘩するよりは、仲良くやったほうが楽しいと思わない?」

 その言葉を聞いたアイナが、

「私はマサヨシの妻になれる?」

 と俺に聞いてくる。

「さあなあ、それは流れでそうなったらだなあ」

 俺は言葉を濁した。

「マサヨシと離れたくないから私はここに居るの。

 アイナもそうなんじゃない?」

 クリスが言うと、

「そう、何となく一緒に居ると暖かい。

 今までに感じたことが無い……」

 と頷く。

「だったら、争うんじゃなくてお互いにマサヨシの手伝いをしましょう」

 とクリスが言うと、

「うんわかった」

 クリスに諭されるアイナだった。

 そんな事があってから、アイナは俺の部屋で俺とクリスと一緒に川の字で寝るようになる。


 まあ、真ん中は俺なんだが……。

 なんか違わないか?



 何事もなく一カ月ほど経ったある日、セバスさんが俺の前に現れ、

「マサヨシ様、白いドラゴンが!」

 と空を指差して言った。

 メルヌの屋敷の庭の上に三十メートルほどの白いドラゴン。

 二本の角を持ちコウモリのような皮膜の付いた翼を羽ばたかせホバリングをすると羽根から発生する風圧で、嵐のようになる

「あーあ、来ちゃった」

 クリスはそのドラゴンを見て呆れていた。

「えっ、クリス様はご存じなので?」

 セバスさんがクリスに聞いた。

「どっちかと言えば、マサヨシが知ってるわね」

「だな」

 俺も同意する。

「どういうことですか?」

 今度は俺に聞くセバスさん。

「んー、この前デンドールの館で手紙を手に入れた時助けたドラゴン?」

 そう言いながらドラゴンを見ると、猛烈な風を起こしながら降りてくる。

 館のガラスがビリビリと鳴った。


 そして、庭に降りると、

「聞く。

 お前が()(あるじ)か?」

 見あげるような大きさの純白のドラゴンが鋭い目で俺を見て言った。

「さあ、知らないな。何の話だ?」

「あの胸糞悪い商人の牢獄で、あの魔法書士に屈し、隷属化されたところを助けたのはお(ぬし)だろう?」

「そんなことがなぜわかる」

「丁寧に体を洗われていたせいで、お(ぬし)の匂いは消えておった。

 ただな、この隷属の紋章に着いた魔法の残滓はお(ぬし)と同じだ。

 間違いない」

「で、俺がその(あるじ)だったとしてどうしたい?」

(われ)はお(ぬし)に仕えたい。

 (われ)が破れぬ封印の杭を簡単に引き抜いた。

 そして所有者が変わった現在、今までにないほど力に満ちておる。

 それは(われ)の力をはるかに凌駕する力をお(ぬし)が持っている証。

 (われ)(われ)より強い男に惹かれるのだ。

 もし、我を仕えさせれば、牛馬のごとく使っても良い。

 我が空を駆ければ、空に雲の糸を引くこともできる。

 (われ)の力をもってすれば、気に入らぬ者など吹き飛ぶぞ?」

 胸を張る白いドラゴン。

「いやいや、気に入らないからと言って簡単に吹き飛ばしたりしないから……。

 それじゃ、ただの暴れん坊じゃないか」

「暴れんのか?」

「暴れない暴れない」

 俺は再びドラゴンを見て腕を組むと、

「んー、でもそんなにデカいと邪魔だな。

 庭がお前でいっぱいになってしまう」

「大丈夫。人型になれるぞ」

 そう言うと、ドラゴンの体が輝き、白い髪で白いローブを着た長身の美しい女性が現れた。

 髪の間から角が見え、目は爬虫類のように縦に瞳孔が開く。

 素足だと思っていたが、なぜか靴も履いていた。


「デカい……」

「デカいわね……」

 たわわに実った胸を見せつけるように胸の下で腕を組む彼女。

 それを見て呟くクリスとアイナ。


 間に挟めば武器とか隠せそうだ……。

 新幹線みたいに見えるうえに垂れてもいない。


 おもむろにトタトタとアイナが彼女に近づくと胸を揉んだ。

「本物確認!」

 クリスにサムズアップで教える。


 何やってるんだお前ら……。


「小娘、偽物のはずがあるまい?

 (われ)の本物だ」

「残念」

「何が残念なのだ!」

 掛け合いを始める。



「さあ、昼飯にするか?」

 二人が楽しそうなので俺が庭を去ろうとすると、

(ぬし)よぉ……」

 と彼女が俺にしがみ付いてきた。

「わかった、わーかったから。

 一応この家に住んでいいようにはしてやる。

 その代わりこの家の義父さんとセバスさん、調理人に門番二人、そして俺とクリス、アイナ、フィナには迷惑をかけないようにな」

「わかったのだ。任せておくのだ」

 ある胸を張って彼女は言った。

「最初に聞いておくべきだったが、お前の名は?」

「名は無い。

 つけてくれ」

 懇願するように彼女言う。

「ちなみにお前はドラゴンとしてはどんな種族なんだ?」

(われ)はホワイトドラゴンの上位種ホーリードラゴン。

 我が舞う場所には幸せが訪れると言われておる。

 別名『幸せを呼ぶドラゴン』だ」


 〇ヴァーエンディングストーリー?


「その割には、デンドールの屋敷で血と破壊を呼んでいたようだが……」

「それは……(われ)も怒る時は怒るからのう。

 で、(われ)に名をくれんか」


 お座りをして餌に期待する犬の雰囲気の彼女。

 胸を両腕で挟んで体を揺すり強調するのはやめて欲しい。

 今更「だっ〇ゅーの」じゃあるまいし……。

 自分で考えてみて古さに引いた。

 そして、名を考える。


 ホーリードラゴン……。

 ホーリーもドラゴンも安易。

 中を取って……。


「リードラでどうだ?」

「リードラ、リードラ……」

「嫌なら付けないけど」

「えっ、一択なのか?

 えっ、ああ、(われ)はリードラだ。

 それで良い」

「断ったら、帰ってもらおうかと思っていたのに」

 と言うと、

「酷いことを言う主人じゃ」

 後ろを向いて呟く。

「聞こえているからな」

 そう言うとリードラはビクリとするのだった。


「それじゃ、紹介しておくな。

 こちらがセバスさん」

 そう言うと、リードラが軽く頭を下げた。

 それに合わせセバスさんが綺麗に頭を下げる。


「そんで、こいつがクリス」

「『こいつ』って何よ」

 文句を言ってくるクリス。

 そして、リードラの方を向くと、

「よろしくね」

 と、クリスは言った。

「よろしゅうな」

 リードラも言う。


「そんで、この子がアイナ」

「私のほうがちょっとだけ先輩。

 言うこと聞いてね。

 でも私も名無しでこの前初めて名前を貰った。

 仲間だね」

「おう、(われ)も先ほど名をもろうた。仲間だな」

 そう言って二人は握手していた。


 折を見て、他の人も紹介だな。



「さて、義父さんの所へ行こうか」

 俺はリードラを連れ義父さんの執務室に向かい、ノックをして中に入った。

「ああ、マサヨシ、ドラゴンが出たと聞いたが?」

 義父さんはそう聞いてきた。

「この女性がそのドラゴンになります。

 先ほどリードラと名付けました」

 リードラは片ひざをつくと、

「お初にお目にかかる。

 (われ)はホーリードラゴンのリードラ。

 このマサヨシ殿に仕えることになった」

 と頭を下げた。

「それでこのドラゴンもわが家で暮らすのか?」

 と義父さんが聞く。

「許可していただければになりますが」

「それは好きにすればいい。

 ただ、館の中でドラゴンにはならないようにな」

 とリードラを見て言った。

 リードラは当たり前だというように

「言われなくてもその辺は心得ておる」

 と言って胸を叩いた。

「儂も人化したドラゴンは初めて見るな。

 長生きしてみるもんだ」

 楽しそうに笑いながら義父さんが言うのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ