表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/175

第143話 男二人の会話。

 数日後の夜、ポルタオの街の領主の屋敷に呼び出された。

 ミスラによる報告。

「ブラーム・ブルーキンク伯爵は内々に処分される。

 病死ということだ」


 時代劇でよく聞く話。

 実際にあるんだな。


「レーヴェンヒェルム王国の王女に手を出そうとしたなど、表に出せないからな。

 ランヴァルド王が納得しても、周りの貴族が許すまい。

 ランヴァルド王に対する不満も出る可能性がある」

「はあ、面倒ですねぇ」

「そして、この手紙を持ってレーヴェンヒェルム王国へ行って欲しい。

 そして、ランヴァルド王に直接手渡して欲しいとのことだ。

 マティアス王からの詫び状だ」

 俺はミスラに手紙を渡された。

 見たことのない蝋印ではあるが、その豪華さから王の物だと推測される。

「つまり、王の手紙で報告するからとりあえずお前らは黙ってろってことだ」

 申し訳なさそうにミスラが言った。

「イングリッドには?」

「お前から言ってもらえないか『事を荒立てないように』ってね」

 言い辛いのかミスラは伏し目になって頭を掻く。

「元々その気もないようだが、一応言っておくよ。

 しかし、ブラーム・ブルーキンク伯爵領は?」

 と聞いてみると、

「今は屋敷で代官が統治している。

 しかし、そのうちマサヨシの領土にされる」

 と変な話になっていた。

「えっ、なぜに?」

「ブラーム・ブルーキンク伯爵には後継ぎが居ない。

 性格からして市井に子供は居るかもしれないが、認知している者が居ないんだ。

 結局、『イングリッド殿下を守り、ブラーム・ブルーキンク伯爵の悪行を明らかにしたマサヨシ・マットソンに治めさせてしまえ!』ってことになったらしい」

「飛び地になるんじゃないのか?」

「それは問題ない。

 お前、フリーデン侯爵にポルテ伯爵領を貰うようになってただろ?」

「よくお知りで」

「フリーデン侯爵もポルテ伯爵領をマットソン子爵家へ払い下げる依頼を出していた。

 だから把握できたわけだ。

 そしてポルテ伯爵領とマットソン子爵領、ブラーム・ブルーキンク伯爵領は細長くはなるが繋がる。

 ただ、まともな道は繋がっていないがね。

 繋がるならお前に任せてしまえと言う感じらしい」

 

 迷惑な話だ……。


「全部足したら、下手な侯爵領よりも大きいんじゃないのか?

 ただ、森林ばかりだがね……」

「楽したいんだけどなぁ……」

 俺は頭を掻く。


 まともに収益をあげられる土地にするにはどれだけかかるのやら……。

 結局自分から忙しい方へと向かっているような気もするが……。


「楽はさせてくれないだろうなぁ。

 アイナって娘の関係だろう。

 非公式ながら王の娘だからね。

 そのうち伯爵あたりに陞爵の話もあるかもしれない」


 やれやれ、アイナの件もミスラには知られている訳ね。


「広い土地があっても、統治できなきゃ意味がない」

「その辺は人材発掘だろうな。

 イングリッド殿下が帰国すれば、お前がマットソン子爵家の当主になるんだ。

 今のうちに探さないと大変だぞ?」

「それは義父さんが?」

「ああ、正確にはクラウス様がうちのオヤジに相談していたのを俺が聞いた」

「はあ、いろいろやること満載か……。

 流れとはいえ、やること増えたなぁ……」


 まあ、まだ増えそうだがね……。


「さて、俺の言うことはここまでだ、イングリッド殿下の事は任せる。

 もうこの街から移動してもらっても構わない。

 あと、できたら、オウルとオセーレを結ぶ扉ってのも作ってもらえると助かるかなぁ」

 ミスラはニヤリと笑って俺を見た。

「それは、ミスラの仕事の関係?」

「旅行が趣味に見えるか?」

「見えないねぇ。

 イヤイヤながらも仕事が好きな感じかなぁ」

「ご名答だ。

 オセーレの事情を知るうえで一応街の中に潜入はさせている。

 ただ、オウルまでの連絡に時間がかかり過ぎるんだ。

 ワイバーンライダーなど他国まで飛ばすわけにもいかないし、お前の扉が一番早いという結論が出た。

 情報は新しいほど利用価値がある。

 お前の扉を使えば、その辺の時間が短縮できるからねぇ……。

「俺に何かいいことはありますか?」

 俺はミスラを見返した。

「少々の無理難題は王が聞いてくれると思うが?」

「王は知っているので?」

「報告はした。

 俺がお前に依頼するつもりなのも言ってある」

「王への貸しですか……。

 いいでしょう。

 オセーレから、オウルへの扉を作りましょう。

 ただ、戦争なんかで使うのはやめてくださいね。

 あくまでも情報収集のみで……。

 でないと、王に歯向かうかもしれません」

 威圧込みでミスラに言った。

「わかった、わかったから威圧はやめろ!」

 脂汗をかいたミスラが言う。

 俺が威圧をやめると、

「オヤジよりも強い威圧は初めてだよ。

 わかった、情報収集以外には使わない。

 これが潜入している場所だ。

 一人の時にでも行ってみてくれ。

 これが王の認証印」

 小さな金のメダルにリボンが付いている。

 メダルの文様は、さっきの手紙の蝋印と一緒だ。

「何だこれは?」

「王から認められたものが持つ。

 オースプリング王国でマサヨシが領主にこの認証印を出して依頼した場合、公爵であっても断ることはできない。

 それだけの効果がある。

 潜入している者は、この意味を知っている。

 だから、お前の言うことは聞くだろう。

 あと、オセーレの潜入者たちが居る場所」

 そう言って、紙片を俺に渡した。

 場所を書いたメモらしい。

「認証印なんて俺に渡してどうするんだ?」

「んー、王は冒険者であるお前に旅をしてもらいたいようだな。

 いろいろな貴族の領土に行って、その有様を見てきてもらいたいのだろう。

 そして報告してもらいたいようだ」


 体のいい水戸黄門?

 それとも、暴れ八州?

 三匹が斬る?


「領土、どうすんだよ」

 俺が聞くと、

「帰れるからいいだろ?

 それに、王から依頼が来たら行くってことになるだろうから、常に旅しろとは言われないだろ」

 と言った。

「それもそうか……。

 子もできるしなぁ。

 あまり離れたくはないな」

「ん?

 子ができる?

 ラウラか?」

「クリスとカリーネ。

 ラウラはまだだ。

 兄貴に言うことじゃないとは思うが、ちゃんと可愛がってる」

「その辺のことはちゃんと手紙で来ているから知ってるよ。

 何か、『凄い……』って書いてあった。

『兄上も見習うように』とも書いてあったぞ」

「ミスラは婚約者居たんだよな」

「婚約者は一人居る。

 体も交わしている。

 後は結婚。

 でも、あまりに若いころから婚約していると……その……行為が同じ流れになってしまってな……」

 ミスラはちょっと遠い目をした。

「その辺は、いつもと違うことをしてみるのもいいかもな。

 男性上位ではなく女性上位で動いてもらうとかね

 あんなことやこんな事もある。

 まあ、いつもじゃなくても少し趣向を変えるってのも有りだろうなぁ」

「うっうむ……」

「仕事ばかりしないで、たまには景勝地に旅行に行くってのも有りだぞ。

 まあ、頑張って」

 バンと背中を叩いた。

「なんか、こういう話では俺のほうが弟のような気がする。」


 そりゃそうだ、俺の方が精神的には年上だからな。


 こうして、男同士の話は夜の話で終わってしまうのだった。


 まあ、男同士だと、こんな感じかな?


読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ