第13話 多数の中にはリーダーは居るものです。
今回は朝遅めでクリスと共に冒険者ギルドへ向かう。
オーク討伐の報告のみだからだ。
いつもの両開きの扉を開け、冒険者ギルドへ入る。
時間のせいか、冒険者はまばらだ。
ギルドマスターから指示が出ているのかクリスいじりは無かった。
「終了処理をお願いします」
俺はリムルさんの前に座り依頼票を出した。
「ああ、終わったんですね。討伐部位は?」
「戦闘訓練場を貸してもらえれば、出しますよ」
その意味に気付いたのか、
「はあ、また全部持って帰ったんですね」
半ばあきらめたようにため息をつきながらリムルさんは言った。
「付いてきてください」
受付から出てきたリムルさんが戦闘訓練場へ向かう。
戦闘訓練場に着くと、人払いを始めるリムルさん。
「それでは、ココへ」
「じゃ、出しますね」
一頭ずつオークを並べると訓練場がどんどん埋まっていく。
収納カバンに入っているオークを見ると、
百七十八頭らしい。
クリスとリムルさんはオークを出す俺を見て雑談しているようだ。
そして最後にオークのボス一頭。
それを見たリムルさんが
「えっ、オークキング」
と言うとギルドの中へ走っていった。
「ん?どうした?」
「『ギルドマスターを呼びに行く』って言ってたわよ?まあ、オークキングが出てきたらそうなるでしょうね」
クリスがニヤニヤしながら言った。
「なんで?」
「まあ、ギルドマスターが来るから直接聞いてみて」
しばらくすると小走りでグレッグさんが現れ、
「オークキングだと?」
唾を飛ばしながら大きな声で言った。
「間違いないと思います。あの巨体ですからね」
リムルさんは指差す。
「何かあるんですか?オークキングは」
「お前、オークキングはギルド討伐指定だ」
グレッグさんが言った。
「なんすかそれ?」
「オークキングが居るということは、ある意味一国の軍隊に値する。
そのため、ギルドのパーティーを強制招集して数十人または数百人規模で討伐するんだ」
じっと俺を見るグレッグさん。
「俺、男とする趣味は無いですよ?
ガチムチとデブじゃ絵にもなりません」
「バッ、バカなことを言うな!」
と全否定するグレッグさん。
グレッグさんの顔がちょっと赤いのは勘弁。
「できればオークキングの件を表に出したくない。
つまり、ギルドが対応し冒険者を集めて行うはずの依頼を、数組のパーティーで行う依頼にしていた事が問題になるんだ。
対処に遅れ、オークが増えていたのもよろしくない。
そこで、オークキングの存在を消し、一般の依頼として処理したい。
だめかな?」
グレッグさんが言った。
「ああ、そこは問題ありません」
俺がそう言うと、
「ただし報酬は倍出す。
そこに転がるオークたちの売却金も入るようにする。
悪いがオークキングを仕舞ってもらえないか?」
「事を荒立てたくないと?」
「そういうことだ。
我々ギルドが状況を確認せず放置したのはわかっている。
ただ、ドロアーテのギルドはCランク以上の冒険者が少ない。
特例で君をCランクにしたのもそれがある」
「まあ、俺は武器の使い勝手を調べに行ったついでなので問題ありません。
それにギルドに恩を売っていてもいいでしょう?」
そう言いながらオークキングを仕舞うと、グレッグさんは苦笑いしながら、
「この件も考慮し、前の『炎の風』の件を込みで、早急にBランクに上がれるように手配しておこう」
と俺に言った。
「無理しなくてもいいです。俺はCランクで十分なんで……」
「オークの分の金は、売却終了時に渡せるようにしておく。
しばらくかかるだろうがいいかな?
炎の風の分もあるな、これもまだしばらくかかりそうだ。
申し訳ない」
「ええ、問題ないですよ。お金の面では困っていませんから」
既にたっぷり頂いております。
「そう言ってもらえると助かる」
ホッとしたようにグレッグさんが言った。
「あと、オークが住んでいたと思われる場所に数台の馬車が打ち捨てられていました。
その御者台の隠し箱の中から出てきたお金と手紙です」
俺は収納袋からお金と手紙を出す。
「金品についてはギルド保証でお前のものになる。
この名は確か隣街の領主マットソン子爵だったな。
手紙は持って行けば褒章が貰えるかもしれん」
「早い方が?」
「ああ、早い方がいいだろう。
蝋印までされているんだ、重要な内容かもしれない」
「今日は依頼を受けないつもりなので、ちょっと行ってきますね。
しかし、そのまま行っても大丈夫でしょうか?」
「通用するかはわからないが一応紹介状は書く。
ちょっと待ってろ」
そう言うと、グレッグさんは受付のほうへ戻っていった。
「マサヨシ、行くの?」
「ああ、どうせ今日の予定はなかったし、興味半分って言うのが本音かな。
行きたくないのか?」
「いいや、今日も待たないといけないのかなって?」
「一緒に行くつもりだが?」
嬉しいのかニッと笑うクリス。
そんな話をしているうちに、グレッグさんが手紙を持って戻ってきた。
「これを持ってマットソン子爵のところに行ってみるといい」
ギルドの蝋印とグレッグさんのサインが書いてある手紙を受け取った。
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