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第102話 散歩のときの拾い物……再び。

誤字脱字が多く、ご迷惑をおかけしております。

「店まで馬車で行かれますか?」

 マクシミリアンさんが俺に聞いたが、

「二人で中を確認したいから、歩いて宿まで帰ります。

 それに、今晩はここに泊まってもいいしね」

 と俺は言う。

「畏まりました。

 それで、マサヨシ様」

 言い辛そうにマクシミリアンさんチラチラと俺を見る。

「ん?なにか?」

「マサヨシ様を指名で依頼を出してもよろしいでしょうか?」

「ああ、いいですよ」

「マサヨシ様のお点前を見せてもらいましたが、かなりの強さを感じました。

 そこら辺に居る冒険者など比にならない位に……。

 ですから、難易度の高い依頼をマサヨシ様に依頼したいのです」

「わかりました。

 ただし、今、私のパーティーはゼファードのダンジョンを攻略している所です。

 ですから、攻略が終わるか手が空いている時かどちらかになりますが……」

「構いません。

 でしたら早速……。

 難しいと思いますが、オークプリンセスかオーククイーンの肉を一キロほど手に入れてもらいたいのです。

 ダンジョンを攻略する際の最初の関門と言われているボスモンスターです。

 そのモンスターの肉は柔らかく美味しい。

 それを手に入れてもらいたいのです。

 明日にでも指名依頼をギルドに入れておきますので、受けてもらえないでしょうか?」

「ぷぷっ」っと事情を知っているカリーネが噴き出す。

「何事?」という顔でマクシミリアンさんはカリーネを見ていた。

「わかりました、ギルド経由で赤い一角獣というパーティーに依頼を入れておいてください」

「ありがとうございます。

 手に入れば時期は問題ありません。

 それでは、よろしくお願いします」

 そう言うとマクシミリアンさんは馬車に乗り、屋敷を出て行くのだった。


 俺たちは再び屋敷に入る。

「どうするのよ?」

「どうするもこうするも、肉は渡すぞ?

 どうせ、ゼファードじゃ俺たちのパーティーは目を付けられてるんだろ?

 ついでだな」

「そうね。

 依頼を完遂すれば、そのうちSランクにもなるでしょう」

 再び部屋を見ながら屋敷の中を歩いた。

「ココがあなたの部屋になるの?」

「使わないだろうけどね」


 例の主人の部屋である。

 それにしてもデカいベッド。

 いい布団を使っているようだけど布団を干すだけでも大変そうだ。


 そんなことを考えながら見ていると、カリーネに後ろから襲われた。

「広―い!」

「『広―い』じゃないよ」

「だって二人っきりだもの。

 匂いだけでも嗅がせて」

 そう言って俺の上に乗ってくる。


 んー当たるんだが……。

 ちょっと盛っているのかね……。


 スンスンと匂いを嗅ぐと満足したのかカリーネが離れると、

「街を散歩したいな」

 甘えた声で言った。

「はいはい」



 屋敷を出て鍵をする。

 そして、冒険者の姿が多い通りを俺とカリーネは歩き始めた。


 昼めし食ったっけ?

 食ってないなぁ。


 屋台にある串焼きが無性にいい匂いをさせる。


 ああ、日本酒が飲みたい。

 ビールでもいい。

 無いかなぁ……。


「珍しいわね、あの屋台でエールを売っている」

 カリーネが言った。

「エールって?」

「ああ、これ飲むとシュワってするのよ。

 酒精は多くないけど、苦みがあって安いから冒険者は好んで飲むわ」

 炭酸が効いた飲み物。

 ビールっぽい。


 ナイスなタイミングです。


「屋台で買い食いする?」

 俺が言うと、

「いいわね、冒険者時代が懐かしい」

 と言ってカリーネが乗ってきた。


 エールが出るという屋台の前に陣取り、俺とカリーネは肉と酒を頼む。

 ちょっと飲んでみると、

「うえ、ぬるっ」

 温いビールの味がした。

「そう、こんなもんよ?」

「炭酸が温いのは旨くない」

 俺は魔法でキンキンに冷やす。

 そしてエールをちびりとやると、懐かしい味に近づいていた。

「やっぱり冷えてなきゃだめだね」

 そう言った後ゴキュゴキュと喉を鳴らし一気にエールが入ったジョッキを飲み干した。

 炭酸の刺激で喉が少し痛い。

「おっちゃんお代わり」

 俺は追加を屋台のオヤジに頼む。

 俺をじっと見るカリーネ。

「何でそんなに美味しそうなのよ。

 何かやったでしょ?」

 と聞いてきた。

「ん?

 冷やしただけだぞ?

 向こうじゃ冷えたエールが当たり前だったからな」

 こんな感じだ」

 カリーネが持つジョッキを魔法でキンキンに冷やした。

「まあ、飲んでみろよ」

 カリーネもゴキュゴキュと喉を鳴らしてエールを飲む。

「コレ凄いわね、エールってこんなに美味しかったんだ」

「そういうこと、これなら串焼きも進む」

 俺たち二人は肉とエールを楽しんだ。


 これがもうちょっと暖かかったらいいんだが、ちょっと寒いかな。


 ふと、目線を移すと姉弟だろうか……。

 小さな二人の獣人の男の子に、姉らしき十三、四の少女が食べ物を与えている。


「デビ〇イヤー」は地獄耳?


 なんて思って魔力を使うと姉弟の会話が聞こえてきた。

「父ちゃんも母ちゃんもダンジョンから帰って来なくてお金も無くなっただろ?

 姉ちゃん、お前たちを食べさせなきゃいけないから、遠くで働かなきゃいけなくなったんだ。

 支度金でこのお金を貰ったから大切にして暮らすんだよ」

 女の子は年上の弟にお金を渡した。

「姉ちゃん、嫌だよ」

「姉ちゃんと一緒に居たいよ」

 二人は姉に縋る。

「私がこの辺で働いても、そんなにお金にならないし……。

 でも、そこだと仕事をしてお金がもらえるんだ。

 働いたお金は家に送るようにするから……。

 ラム、アンタはお兄ちゃんなんだから、弟のロムを守ってやるんだよ。

 姉ちゃん、もう行かなきゃいけないから……」

 女の子が進む先にニヤニヤと笑う男が居た。


 俺はフラフラと弟たちに方へ向かう。

「ボウズ、肉要るか?」

 と言って串焼きを見せた。


 見た目不審者……。


「ダメだよ、姉ちゃんが簡単に人から物を貰っちゃいけないって」

 食べたいのを我慢しているのだろう、小さな弟のほうは涎を垂らす。

「そうか……。

 良い姉ちゃんなんだな」

「うん、僕たちの姉ちゃんは優しいんだ」

 見知らぬ俺が弟たちに声をかけたのに気付き、女の子が急いで帰ってきた。

「あなた、何を!」

「ん?肉をやろうと思ってな。

 ついでに聞こう、あの男は何者だ?」

「そっそれは、職を紹介してくれた人です」

「間違っていたら怒ってくれてもいい。

 体を売ったのか?」

「!?」

 女の子の顔が変わった。

「あたりかな?

 悪い、俺耳が良くてな。

 話を聞いてそうとしか考えられなかったんだ」

「そう……です。

 弟たちには言わないでください……」

 小さな声で女子は言った。

「どうして?」

「両親は冒険者で、装備品の購入で借金がありました。

 それを返すためにダンジョンに入って早一か月。

 何とか食いつないではきましたが、既に食べる物もなく……。

 借金の取り立てに来たあの男に借金を返したうえで更に金を貰える仕事があると言われて……」

 気になったのか、カリーネもやってきた。

 すると、

「よくある話。

 お金になるとは言っても冒険者は命がけの商売」

 カリーネが苦笑いで言う。

「だからと言って放っておく訳にも行かないかなぁ」

「じゃあどうするのよ?」

「そう……だったらこうするかな……、

 御嬢さん、事情があってこの街に屋敷を買ったんだが、管理する者が居ない。

 その家の管理人として、借金を払いながら働くってのはどうだ?

 そこの弟たちも一緒でいい」

「本当に?でも、もう契約も交わして……」


「今頃こんな話を聞いても」って所なんだろう


「俺をあの男のところに連れて行くといい。

 話をつけるから」

 俺はカリーネに弟二人を任せ女の子と男のところへ行った。


「デブ、何の用だ」

 男はニヤニヤ笑いながら俺に言った。

「この子を買い戻すとしていくらになる?」

「買い戻す?

 知らねえだろうがすでに隷属の紋章も付けた。

 金がかかっているんだ。

 それに、この娘にはすでに買い手が付いている。

 買い手に渡せばこの娘はその男の命令に逆らえず、死ぬまで男を抱き続けるんだよ」


 ふむ……。


「そんなことはどうでもいい。

 いくらだったら売ってくれる?」

「売らないって言ってるだろう!

 ほら、これを見ろ」

 そう言って男は契約書を出した。

「このゼファードで一番と言われるSランク冒険者、アルヴィンが魔法書士として契約してくれた。

 どんな奴だって契約は破棄できないぜ」

 男はニヤリと笑う。


 鼻高々だな。

 そういう時は……鼻をへし折りたくなる。


 男に近寄り契約書をパッと取り上げると、魔力を通しパッと燃やした。

 そして、隷属の紋章の所有者を変える。

 

 証拠隠滅。


「契約上はこの娘は俺の物になった。

 どうする?」

「てめえ!」

 男は俺に殴りかかるが、さっと避け足を引っかけて倒す。

 そして、

「金は払うぞ。

 倍でもいい」

 と言う。

「おまっ……」

 何かを言おうとしたところに俺は軽く威圧を当てると、男の言葉が止まった。

「このまま泣き付いても、契約書さえない状態では所有者を名乗れないだろう?

 金は払うと言ってるんだ」

「だっだったら、金貨二十枚。

 それなら売る。

 それならボスに文句は言われない」

 俺は収納カバンから金貨二十枚を出した。

「私の両親の借金は金貨五枚。

 そんな金額じゃない!」

 と女の子は言うが、

「いいんだ。

 多分こいつにもこいつの事情があるんだよ」

 俺は女の子の頭にポンと手を置いて言った。

「これでいいな」

「ああ、これでいい」

 金貨を受け取ると男はそのまま去っていった。


 男の姿が見えなくなると、

「さあ、弟たちの元へ戻るぞ」

 俺は女の子を連れカリーネの元へ戻る。

「おせっかい焼きが帰ってきたぁ

 私を放ってるから飲んじゃったわよぉ!」

 ニヘラとするカリーネ。

 手にはエールが入ったジョッキ。

「おばちゃん酔っちゃった」

 上の弟が言うと。

「おばちゃんじゃないでしょう、お・ね・え・さ・ん」

 ギリギリとアイアンクローをするカリーネ。

「おっお姉さん……」

 絞り出すように上の弟が言う。

「よろしい」

 カリーネはアイアンクローをやめると、

「マサヨシそれでどうなったの?」

 と、聞いてきた。

「痛かったぁ」

 と上の弟が言いながらこめかみをさすっている様子を見ながら俺はカリーネに事情を説明する。

 すると、

「冒険者って死亡率が高いのよね。

 若くて動けるときならいいけど、どうしても加齢とともに衰える時期が来る。

 結婚をして子供ができてもギルドで依頼を受ける以外に稼ぐ方法も知らない。

 危険度が高い仕事ほど報酬が多いから、子供を置いて依頼を受ける者も多いの。

 だから親が居ない間に子供が事故があったり、逆にこの子たちのように親が亡くなることもある」

 と言って苦笑いしていた。

「ギルドとしては?」

「何もしていないのが実情ね。

 基本は自己責任。

 私もどうしたらいいのかわからないし……」

「まあ、そういうのなら託児所ってのがあるな。

 学校を作るのも効果があるかもしれない。

 孤児院自体は俺も作ろうとは思ってる」

「託児所とは?」

「ああ、一定の間、赤子からでも子供を預かる。

 前の世界の仕事は大体朝から夕方だったから、その間預かる感じだったな。

 この世界なら、何日も預かる可能性があるんだよね。

 だったら、宿舎付きってのが無難だろうな」

「何で学校?」

「学校に居る間は先生が子供を見てくれるだろ?

 読み書き計算ができるように勉強をして、職に就ける確率を上げればいいんじゃないかな?

 まあ、冒険者になるというなら、加齢によって能力が落ちてきた冒険者を先生にして技術を伝授してもらう。

 あとは、学校に居る間は食事をきちんと出すようにすれば、冒険に出る親も安心だろう。

「そんなこと考えてたの?」

 カリーネは感心していた。

「んー、俺はそういう環境で育ってきたから、当たり前の考えなんだ。

 それに、フィナから聞いてたんだよ……『父さんが帰ってこなかった』って……。

 だから、カリーネが動くなら、親が冒険のトラブルで亡くなったような子は、作る予定の孤児院で受け皿になっても良いと思う。

 そうすればこの娘のように身を売ってまで姉弟を活かすなんてことは無くなるだろう。

 そりゃ奴隷が居るから何とか活動ができるような場所もあるのだろうけど、俺は元々奴隷が居ない世界から来たからね。

 犯罪奴隷は別として、子供たちは手が出せる範囲は助けたいかな?」

「それなら私も考えてみる」

 カリーネも頷く。

「そうだなあ。

 もし、新しいダンジョンの周りに街ができたら。

 そこでやってみようかね……」


 俺とカリーネの話をポカンと三姉弟は眺めていた。

 

読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] そう言うとマクシミリアンさんは馬車に乗り、屋敷を出て行くのだった。 これより以上の文が前話と被ってる
[一言] いきなり上書きしちゃいましたが大丈夫でしょうか(^^;? 助けられたお姉ちゃん能力グンと上がってビックリしたんだろうな アイアンクローしてでも言い直しさせたい繊細な言い間違い 開き直るにはま…
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