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#074 「ヤダー!」「やにゃー!」

 何故自律型駆逐兵器――所謂オートボットだの、機械の化け物と呼ばれる連中がこの惑星に於いて蛇蝎の如く嫌われ、終いには終わりの始まりだのと呼ばれるのか? それは意外と単純な話だ。


「いやっふー! きかいのばけものあいてでもこうげきがとおるぅ!」

「コイルガンもいけるにゃ!」


 押し寄せてくる自律型駆逐兵器を相手に防壁を遮蔽物として使いながら応戦しているフォルミカンとフェリーネ達がテンションを上げている。そう、俺が彼女等彼等に与えた武器であれば、きちんと射程内に捉えれば十分に自律型駆逐兵器の装甲を抜いてダメージを与えられるだけの威力があるのだ。

 逆に言うと、火薬を使った原始的な実弾兵器の攻撃力、貫通力で奴らの装甲を抜くのはかなり厳しい。高威力かつ貫通力の高い弾丸を使う武器で、装甲の薄い場所、或いは装甲の隙間などを狙い、更に至近距離であればなんとかといったところだろうか。


「ぎゃー!? 撃ってきたにゃ!?」

「だいじょうぶ、このかべはつよい!」


 そして防御力の面でも普通の木材や石材では自律型駆逐兵器が装備している電磁投射兵器や光学兵器を防ぐには大変に心許ない。下手をすると遮蔽物にすらならず貫通されたり、簡単に破壊される恐れがある。うちの防壁は構成機を使って構築した光学兵器による攻撃にも耐性がある高密度素材だから、そう簡単には抜かれない。無論、限度はあるがな。


「お前らが直撃すると死ぬから気をつけろよー。気合で避けろ」


 俺を狙って発射されたコイルガンの弾丸を避けつつ、防壁上で応戦している連中に注意を促しておく。俺は最悪パーソナルシールドで防げるが、生身のこいつらが食らうと下手すると即死、下手しなくとも手足が吹っ飛ぶからな。


「ぼすはどうしてかばーもしてないのにあたらないの……?」

「目で見て避けてるにゃ。あいつらよりボスの方が化け物にゃ」

「コツがあんだよ。あいつら撃てるようになったら即撃つから、慣れればお前らでも避けられるぞ」

「なれるまえにしぬ」

「死ぬにゃ」

「大丈夫だって安心しろよ。今度お前らにも訓練の仕方を教えてやるから」

「ヤダー!」

「やにゃー!」


 訓練用に非殺傷レベルに威力を落としたコイルガンタレットから放たれる弾丸を至近距離で避けられるようになれば、遠距離から飛んでくる殺傷威力のコイルガンくらいは避けられるようになるさ。光学兵器は駄目だ。あれは避けられるもんじゃない。なんか遥か彼方の帝国には光学兵器による攻撃を剣で打ち返す頭のおかしい連中がいるそうだが、俺は眉唾だと思っている。

 ちなみに、今回は光学兵器持ちの自律型駆逐兵器も出てきているのだが、奴らの射程に入る前に俺が大口径レーザースナイパーライフルで全て撃破している。数が少なくて良かったぜ。


「さて、そろそろ第一波は終わりか」

「タレットの火力がえげつにゃいにゃ」

「わたしたちよりもたれっとのほうがたおしてるよね」

「被害も出てるがな」


 俺達と違ってタレットは避けることも隠れることもできないので、何基かは自律型駆逐兵器の攻撃で破損してしまっていた。コア部品のエネルギーキャパシターさえ壊れていなければ修理そのものは簡単だし、何なら今回の襲撃で倒した連中の残骸からエネルギーキャパシターやパーツ類を回収できるから、もし全部エネルギーキャパシターが壊れていたとしても黒字だろう。許容範囲内だな。


「よーし、それじゃあ奴らの降下ポッドを押さえに行ってくる」

「えっ?」

「にゃっ?」


 フォルミカン達とフェリーネ達が信じられないものを見るような目で俺を見上げてくる。


「奴らの降下ポッドが落着と同時に新たなユニットを組み上げ始めているとしても、新しいユニットが組み上げられて出てくるまでにはまだ十五分くらいは余裕があるはずだ。今のうちに護衛を蹴散らして降下ポッドを制圧すんだよ」

「正気にゃ?」

「正気だし勝機だ。それじゃあ行ってくる。ああ、奴らの残骸は防壁近くまで引っ張ってきて纏めておけ。戦闘能力を残している可能性もあるから、十分に気をつけるんだぞ」


 俺はそう言って防壁の上から飛び降り、着地と同時に奴らの降下ポッドが落着した地点へと駆け出した。


 ☆★☆


 自律型駆逐兵器の降下ポッドが落着した地点へと走りながら、心臓代わりの反物質コアの稼働率を上げていく。通常モードから戦闘モードへ。全身に動力を行き渡らせ、その性能を最大限に発揮させる。十全にエネルギーを供給され、膨張する造り物の筋肉に着ている服がミチミチと音を立てて伸び始める。これやると全身パツンパツンになるんだよなぁ。


「見えた」


 疾走しながら自前の強化視覚センサーで対象と護衛の自律駆逐兵器を捉えた。偵察ドローンでもその位置と数は把握していたが、特に齟齬は無さそうだ。


「一つ……お、シールド持ちか」


 比較的大型――うちで使っている機動車両よりもデカい――の自律駆逐兵器に走りながら大口径レーザースナイパーライフルを撃ち込んだのだが、目に見えない壁に遮られたかのように攻撃が霧散してしまった。だが、俺は構うこと無く同じ目標に連続で射撃を加えていく。

 一見無敵に見えるシールドだが、実際にはそう便利なものでもない。強力な攻撃を何度も加えられればいずれ破れる。相手が航宙艦ともなれば今の俺が装備している武器でシールドを抜くのは難しいが、あのサイズの自律型駆逐兵器であればシールド容量はさほど大きくない筈だ。


「よし、抜いた。次」


 度重なる銃撃で大型の自律型駆逐兵器のシールドがダウンし、その間隙を突いて放ったレーザースナイパーライフルの射撃が奴の装甲を破壊する。そして装甲が剥がれた場所にもう一発撃ち込んで終わりだ。奴の武器は大型のコイルガンだったが、こっちのレーザースナイパーライフルの方が射程が長かったようだな。

 護衛の中で一番デカい今のやつを撃破してしまえばあとは消化試合だ。とっとと護衛を排除して降下ポッドを制圧しよう。今のやつのシールドジェネレーターに加えて、降下ポッドにもデブリ対策のシールドジェネレーターが装備されているはずだし、その他にも降下ポッドの動力炉として使われているであろう小型のジェネレーターや組み立て前の自律型駆逐兵器のパーツ――無論その中にはエネルギーキャパシターなどのハイテク部品も含まれる――も手に入る筈だ。

 ふははは! 丸儲けだ! 笑いが止まらんな!

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― 新着の感想 ―
(無傷で倒せれば)ただで貰える資源の宝庫だぜ!ひゃっほー!
めいびーふぉーすうぃずゆー……
>なんか遥か彼方の帝国には光学兵器による攻撃を剣で打ち返す頭のおかしい連中がいるそうだが、 何処ぞのハーレム船長「……ヘックショイ!!」
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