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チート図書館を手に入れた転生女子は、家出王女と冒険者になることにしました  作者: Ryoko


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47、光の盾 〜レイ視点〜

「うっ、ぐぅ……」


 サラマンダーの一撃をもろに喰らった。

 剣を盾にしたことで火傷だけは免れたが、腕はまだ痺れたままだ。

 あのまま剣を飛ばされなかっただけマシか……。

 全身に走る痛みに耐え、なんとか上半身を持ち上げる。

 さっさと起き上がらなければ、次の攻撃が来る。

 地面に肘を立て、上半身を上向かせると……。


「リコ!?」


 サラマンダーの意識が、リコに向いている!?

 身体はこちらに向けたまま、その太い尻尾だけが大きく揺れて、成人男性でも抱えきれないほどの質量が、唸りを上げてリコに襲いかかる。


(まずい!!)


 その瞬間、リコの目の前に光の壁が現れ、リコの姿を一瞬見失うと……。


 ダァァンンン!!!


 次の瞬間には大きな音が鳴り響き、巨大なサラマンダーの尻尾は光の壁の前で完全にその動きを止められていた。

 そして、サラマンダーと光の壁に背を向けて何事もなく(たたず)むリコの姿が……。


(よかったぁ!)


 サラマンダー()の攻撃をリコがまともに喰らえば、恐らく即死は免れない。

 あの光の壁がなければ、今頃リコは全身の骨を砕かれて死んでいただろう。

 本当に、生きた心地がしなかった……。

 それにしても……あの光の壁……あれは初めてリコに会った時に見たものだ。

 やはり、あれはリコの能力だったか……。

 そういえば、前回も光の壁を背にして立っていたような……。

 あれは、リコの背中を守る能力だろうか……?

 だから、今回も背を向けた?

 う〜ん……よくわからないが、とにかく、これならリコの方の守りはなんとかなりそうだ。

 あの逃げ出した冒険者どもには業腹だが、ともあれこれで目の前の戦いに集中できる。

 問題は、私一人でサラマンダー(あいつ)を討伐できるかってことだが……。

 なんとか時間を稼いで先生たちが応援に来てくれるのを待つか……。

 そんなことを考えていると、突然サラマンダーは進む向きを変え!?

 さっきまでは私を明確な敵と定め、リコへの尻尾による攻撃は行き掛けの駄賃といった様子だったのに……。

 当然当たると思っていた攻撃を防がれ、サラマンダー()の注意が完全にリコに移ったか。

 遥か上段から振り下ろされる前足の爪……盾を越えて振り下ろされる攻撃は正面の盾では防ぎきれない!

 そう思ったのも束の間、いつの間にかリコの正面にあった盾は消え、代わりに目一杯振り上げられたサラマンダーの前足の動きを止めるように、光の盾は上空に浮いていた。

 体重を乗せて振り下ろそうとした初動の一番不安定な状態で、その腕を空中で縫い止められたサラマンダーは、そのままバランスを崩して地面に転がることになる。


「今!」


 リコの声に咄嗟に身体が反応し、横倒しになり無防備となったサラマンダー()の腹に己の剣を突き刺した。

 サラマンダーの表皮は高温で硬く、剣による攻撃は弾かれることが多い。

 だが、腹は別だ。

 ここなら剣も通る!

 せっかくリコが作ってくれた千載一遇のチャンス、決して無駄にはしない!

 ここで必ず倒す……たとえ差し違えてでも!

 サラマンダーに突き刺した剣を抜くことなく、私は魔法陣をイメージする。

 描くは全てを凍てつかせる氷の魔法陣。

 それを突き刺した剣に乗せ、体内から凍り付かせる……つもりだったのだが。


「ストップ! 氷ダメ! 炎にして!」


 予想外のダメ出しに慌てる私。


「えっ!? いや、だが……サラマンダーには炎より氷で……」


 ゴオーーッ  ガンッ!!


 一瞬の混乱の隙をつくように襲ってきたサラマンダーの爪は、リコが出した光の盾に遮られる。

 離れた場所にも出せるのか……本当に便利だな。

 そして……。


「いいから! とにかく炎出して!!」


 あまりに必死な様子のリコの言葉に、私も腹を(くく)る。

 いずれにせよ、リコの盾がなければ私はとっくに死んでいたのだ。

 ならば、リコに賭けてみるか!


「炎剣!」


 中断した氷の魔法陣の代わりに炎の魔法陣をイメージし、それを突き刺した剣に乗せる。

 ノーム王家流正統武術の奥義、魔法剣。剣技と魔法の複合技だ。

 高温の炎を纏った剣が、サラマンダーの肉体を蹂躙(じゅうりん)して……はいない。

 剣の刺さった内部がどうなっているかはわからないが、少なくとも外から見える部分の肉は全く焦げていない。

 以前聞いた熟練の騎士たちの話では、討伐したサラマンダーの肉を食べようとしたが、いくら火で(あぶ)っても全く焼けなかったそうだ……。

 恐らく、サラマンダーの肉自体が強い熱耐性を持っているのだろう。

 サラマンダーに熱攻撃は無意味。これはこの世界の常識だ。

 常識のはずなのだが……。


「全く動かなくなったな……」


 体内を炎で焼き始めてしばらくすると、サラマンダーの動きは目に見えて鈍くなり、それほどの時間も置かずに動かなくなってしまった。

 確かに、まだ死んではいない。

 だが、まるで眠ってしまったかのように動かない。


「これは、どういうことだ……?」


「うん、うまくいったね」


 私の(つぶや)きに答えるようにリコが近づいてくる。


「リコ、これは一体?」


「あっ、ごめん。まだ炎は消さないで。身体が冷えると動き出しちゃうから」


 

 

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