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チート図書館を手に入れた転生女子は、家出王女と冒険者になることにしました  作者: Ryoko


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40、野外実習

『左の2体は任せた。右は私がやる!』


『盾は護衛対象を守れ! 槍は牽制! 残りで各個撃破するぞ!』


『よし、全員で囲い込むぞ。動きを封じてしまえばどうとでもなる』


 野外実習は街から離れた森の周辺部から、少し森に入った辺りで行われている。

 出てくるのはD、Eランクの魔物で、不良冒険者はなんとか、レイの方は余裕で対処できている。

 それにしても……。


「さすがはレイ、指示し慣れてるなぁ」


 実力はともかく、相手は年上の男性4人。

 わたしも会社勤めをしていた時には、バイトの人たちに指示を出したりもしたけど、相手が年上だったり男性だったりすると、どうしても気後れしてしまうというか……。

 で、相手は相手で年下の女に指示されるのは不本意だって態度で、こちらの言うことを素直に聞いてくれなかったりして……。

 その点、レイはさすが王女様だけあって、指示に力があるというか、従うのが当然と感じてしまうというか……。

 とにかく、こういうところを見ると、改めてレイって王族なんだなって思う。


「あら、その言い方からすると、レイちゃんって実はお嬢様なのかしら?」


 状況に合わせたレイの的確な指示に感心して、思わず口から溢れた独り言を、ガーネット先生が拾い上げる。


「えっ?」


「だって、『さすがは』ってことは、元々レイちゃんが指示するのは当然の立場だったってことでしょう?」


「それは……」


「そうねぇ、商家のお嬢様って感じでもないし……。やっぱり、貴族とかかしら?」


 えっ? えっ? ちょっと待って!? 何か探られてる? 多分だけど、ガーネット先生はレイの隠れ護衛で、だったらレイの正体は当然知っているはずで……。


「それとも、もっと上の……」


 ビクッ!


 ガーネット先生の口からレイが秘密にしている身分が出そうになって、思わず肩が震える。

 ガーネット先生は知っているはずだけど、もし万が一知らなかったとしたら、わたしのせいでレイが王女様だってことがバレちゃうかもしれない。


「ふふ、そう、リコちゃんもレイちゃんのこと知ってるのね」


「…………」


 わたし()ってことは、やっぱりガーネット先生はレイの正体を知っているってことで……。

 なら、さっきのカマかけは、わたしの方がレイの正体を知っているかどうかを確認するため?


「それ、レイちゃんから聞いたのかしら?」


「いえ、その……」


「リコ、解体を頼む!」


 わたしがガーネット先生に尋問? されている間に、どうやら戦闘も終わったようで、離れたところからわたしを呼ぶレイの声が聞こえる。


「はい! ガ、ガーネット先生、失礼します!」


 レイの声に応えて、これ幸いとガーネット先生から離れるわたし。

 ガーネット先生もそれ以上は追求してこなかったけど……。

 探られているのはレイとわたしの関係? それとも、わたしのこと?

 どちらにしても、ガーネット先生は嘘を見破る能力がある。

 極力関わらないようにしよう……そうしよう!


 結局、倒した魔物はゴブリンが7体にワイルドボアが2体。

 ゴブリンについては使える部位が全くないため、討伐証明部位だけ切り取って、あとは焼却処分。

 正直、薄気味悪いし、見た目が人間っぽいので、これを解体しなくていいのは大変助かる。

 ワイルドボアはふつうに素材も売れるし、野営中の食料にもなるので大歓迎だ。


 周辺の魔物を狩り、3日間の野外実習のベースキャンプを整えた私たちは、今は冒険者ギルドでの実習では習わなかった植物素材採集の講義を受けている。


「……こいつはモーリュ。強い魔法耐性を持つ薬草で、鎧や盾に魔法耐性を付与するのに使われる。エデンだと鍛冶屋や武器屋からの依頼が多いな。効果が高いのは黒い根の部分だから、面倒でも根っこごと引き抜け」


「くっ、難しいなぁ」


「うん、無理せず少し周りの土を掘ろう」


 わたしがレイと協力しながら、ガイ先生が教えてくれたモーリュの採集に悪戦苦闘していると……。


「おい、あそこにもマグワートがあるぞ」


「ラッキー! さっさと採っちまおうぜ」


「ああ、同じ根っこからでも、マグワートはモーリュより全然抜きやすい」


「買取額は変わらんしな」


 そう言うと、少し離れたところにあるマグワートの小さな群生地に群がる不良冒険者たち。

 ザクザクと柔らかい土を掘り返し、マグワートを根こそぎ採取していく。

 これも授業の一環なんだから、多少大変でも効率が悪くても、色々な採集を経験した方がいいと思うんだけど……。

 まぁ、彼らは元々薬草採集なんかに興味はないみたいだし、どうせやるなら手っ取り早く稼げる方がいいっていうのもわかるんだけどね。

 それにしても……。


「ねえ、レイ、あの人たち全部取り尽くしちゃってるけど、あれっていいの?」


「ん?」


「いや、だって、全部取っちゃうと無くなっちゃうから、1割くらいは残しておくのが常識だよねぇ?」


「う〜ん、植物なんて放っておけば勝手に生えると思うが、リコの育った所では違うのか?」


「えっ? いや、その、どうだったかなぁ……」


 あれ? わたしが読んでた異世界モノだと、冒険者の素材採集は取り尽くさずに少し残すってのが定番だったような……。

 わたしは全然経験ないけど、現実のキノコ狩りとかでも、全部取り尽くすのはダメとか聞いた気が……。

 こっちの世界では違うのかなぁ……?

 念の為、ガイ先生にもそれとなく訊いてみたけど、やっぱりそんな常識はないらしい。

 単に植物や生態系に関する知識がないだけ? それとも、この世界の植物は発生の仕方が違うとか?

 そんなことを考えていると、頭の中にお馴染みのアナウンスが……。


『“植物図鑑 〜エデン周辺の植物〜”が入荷しました』


 おお! 待ちに待った『植物図鑑』だよ!

 これは、早速今夜にでも読み込まねば!


 その後もガイ先生指導の元、植物採集をしたり、新たに現れた魔物を(レイたちが)狩ったりして、1日目の野外実習は終わった。


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