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チート図書館を手に入れた転生女子は、家出王女と冒険者になることにしました  作者: Ryoko


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38、中休み

 冒険者講習も今日で六日目。

 座学の授業は今日で終わりで、明日からはいよいよ森での野外実習が始まる。

 で、2泊3日の野外実習から帰って、最終日に試験を受けて、それに合格できたら晴れて冒険者だ。

 そんな訳で、今日の午前中の座学は、明日からの野外実習に向けての注意や役割分担などについて。


「リコ、お前には周囲の警戒と魔物の解体、あと料理を担当してもらう」


「おいおい、周囲の警戒って、全員がすることだろう? それって、つまり、この嬢ちゃんは魔物との戦闘には一切参加しないってことだよなぁ?」


「まぁ、そうなるな」


「はあ!? おいおい、冗談じゃないぞ! そんなんでいいなら講習とか試験とか必要ないだろ!」


「はぁ〜、馬鹿かお前ら。何度も言うが、冒険者ってのはただ剣を振り回してればいいってもんじゃないんだよ。仕留めた獲物の処理の仕方一つで、高額報酬の素材が一瞬で無価値になることだってあるんだ。

 そういう意味では、腕のいい解体職人がいるってだけで、そのパーティーの実入(みいり)は大きく変わってくる。

 それになぁ、お前ら、料理できないだろう? もしリコが同行しないとすると、ここにいる全員、明日からの3日間、水と携帯食だけの生活になるぞ」


「ぐっ、だ、だが、女なら他にもいるだろ!」


「私は料理は一切できないぞ」


「わたしもよ。そもそも、どうして料理は女がするものって当たり前に決めつけるのかしら?

 大体、わたしは先生なんだから、先生の料理くらい生徒が用意するのが当然でしょう?」


 ガーネット先生にそう言って睨まれ、黙り込んでしまう不良冒険者たち。


「まぁ、とにかくだ、明日からの戦闘では、教師である俺たちとリコは、護衛任務における護衛対象という認識で考えるように。

 どうしてもって時には手を貸してやるが、基本戦闘はレイと野郎どもの5人で、護衛対象3人を守りながら戦うって前提でフォーメーションを考えろ」


 初めはわたしだけずるいと文句を言っていた不良冒険者たちも、なら、わたしも戦闘に参加させて一緒に戦うのか? って言われちゃうと、それこそ邪魔にしかならないのはわかっているようで……。

 最終的には適材適所ということで渋々だけど納得してくれていた。

 いや、わたしだって申し訳ないとは思うんだよ。

 でも、魔力も体力も全く無いってわかっちゃった以上、ここで無理して戦闘に参加するのは、単なる自己満足にしかならないからね。

 ここはガイ先生の言うとおり適材適所で、わたしは解体や料理の方でがんばろうと思う。

 幸い、料理は人並みにはできるし、この国の食文化は日本人転生者の影響をこれでもかってくらいに受けている。

 大抵の日本の調味料は揃っているし、調理器具も似たようなものがある。

 解体技術の修行のおかげで、今ならプロ並みの包丁さばきができるから、調理技術も転生前よりも遥かに上がっていると思う。

 戦闘で役に立てない分は、料理や解体で貢献していこう。


 と、いうわけで、今、わたしとレイは、屋台のおいしい食べ物屋さんを回る買い食いデートの真最中。

 午後からは、個々に明日の準備をするようにとのことで、午後の授業はお休み。

 そこで、野営向きの料理のアイディアを得ようと、街に出かけることにしたんだけど……。


『だったら、私も一緒に行こう。リコ一人で何かあっては大変だからね』


 そう言って、レイもついて来てくれることになった。

 いや、むしろ護衛が必要なのはあなたでしょう! とは思ったんだけど……。

 レイとの街歩きという魅力的な提案には抗えなくて……。

 結局、二人で出かけることにしてしまいました。


「おお! これはうまいな! リコも食べてみろ」


「ありがとう、こっちもいけるよ」


 レイが半分ほど残した串焼きを渡してきて、わたしは代わりに自分のサンドを半分に切り分けてレイのお皿に乗せてあげる。

 色々な味を試してみたいということで、どれも一品ずつ頼んで、レイと半分こっつにして食べることにする。

 別にいちゃいちゃしてるわけじゃないよ。

 これはあくまでも野外実習に向けての料理の研究だからね。

 半分ずつ分けるのは、できるだけ多くの料理を効率よく試すための合理的な行動に過ぎないのだ。

 別に他意はないから!

 その証拠に、色々食べ歩いて帰る頃には、無事新たな本、『外でもできる簡単クッキング』をゲットすることができた。

 あとは、今夜この本を読み込んでおけば、料理の方も問題ないはずだ。

 そうなると、あと事前に準備できそうなのは……。


「ねえ、レイ。この街でできるだけたくさんの種類の薬草を見れるのってどこかなぁ? やっぱり冒険者ギルド?」


 屋台での買い食いを満喫……ではなく、研究し終えたわたしは、同じく満足そうな顔で向かいに座るレイに訊いてみる。

 確か、『エデンのさ迷い方』にも色々書いてあった気がするけど、あまり必要そうじゃないところは軽く目を通しただけだから、一々覚えてないんだよね。

 今はレイと一緒だし、この場で確認するわけにもいかないからね。


「う〜ん、冒険者ギルドでも主だったものは見られると思うが、時期やタイミングによってムラがあるだろうし……。

 やはり、確実に多くの種類の薬草を確認したいのなら、薬種商に行くのが確実だろう。

 ここからなら、レイド商会が近かったはずだ」


「レイド商会?」


 どこかで、聞いた気がする……。


「ああ、冒険者講習でガイ先生が話してた“魔物避け薬”を覚えているか? あれを売り出してるのがレイド商会だ」


 ああ、そう言えば、そんな話を聞いた気がする。

 魔物避けポーションと比べて値段も安くて、弱い魔物ならそれで十分だから、おかげで冒険者の護衛依頼が減っちゃってるとか……。

 でも、材料になる薬草の買取価格は高めだから、新人冒険者にとっては狙い目だとか……。


「え〜と……確か、マクラ……」


「マグワートだ」


「そう、そんな名前だった」


「うん、きっと明日の野外実習ではマグワートの採集もするだろうし、せっかくだし行ってみようか?」


 そうして訪れたレイド商会には、本当にたくさんの薬や薬草が並んでいた。

 ここでは、国内外からやって来る薬師に薬草などの薬の原料も売っているし、商会が調薬した薬を一般に売っていたりもする。

 その中でも、例の魔物避け薬はここのオリジナル商品みたいで、この薬目当てに来店するお客さんは多いみたい。

 まだ他国からエデンにやって来て数年の、新参の商会だって聞いたけど、魔物避け薬の人気もあって、なかなかに繁盛しているそうだ。

 おかげで、マグワート以外にも色々な薬草や薬の原料を見ることができたけど、残念ながらお目当ての本は手に入らなかった。

 できれば、明日からの野外実習用に、植物図鑑とか薬草図鑑みたいのが欲しかったんだけどなぁ。

 そのあとも何軒かの薬種商を回ってみたけど、結局ダメで……。

 よくわからない理由で落ち込んでいるように見えるわたしに、レイが色々と気を遣ってくれて……。

 自分用の武器を何も持っていないというわたしのために、レイが包丁としても使える軽めのサバイバルナイフをプレゼントしてくれたりもした。

 一般的な装備は冒険者ギルドでも借りられるけど、自分用だし、レイからのプレゼントだし、なんかうれしいよね!

 初めてのプレゼントが刃物ってのがちょっとなんだけど……いや、逆に縁起が良いって聞いた気もするし!

 運命を切り開くとか何とか……。

 ともあれ、レイと二人、なんだかんだと楽しい半休日を過ごせて満足だ。


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