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チート図書館を手に入れた転生女子は、家出王女と冒険者になることにしました  作者: Ryoko


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28、剣舞

「そのぉ、お願いがあるんだけど、レイの剣術、ちょっと見せてもらえないかなぁ?」


 午後の解体実習も終わり、ひと段落したところで、レイにそんなお願いをしてみる。


「別に構わないが……。明日の実習を気にしてるなら心配ないだろう。

 明日、明後日の剣と魔法の実習は、技術の習得を目的としたものではないからね。

 基本的な剣や魔法での戦い方は教えられるだろうが、それはあくまでも最低限のはずだ」


「最低限……」


「実戦レベルの技術なんて、そう簡単に身につくものじゃないからね。

 まずは、剣や魔法による戦闘というものを理解してもらおうという目的だから、今のままでも特に問題は無いはずだ」


 う〜ん、その()()()が問題なんだよねぇ……。

 剣とか魔法とかが当たり前に存在する世界での最低限だ。こちらに来るまでは本物の剣すら見たことがなかったわたしとは、最低限の認識が違う気がする。

 魔法にしたって、確かに強力な攻撃魔法を使える人は少ないかもしれないけど、簡単な生活魔法は割と当たり前に使われているみたいだし……。

 それに、今後も冒険者として活動していくとか、そうじゃなくても、他の街に行ってみるとかなったら、やっぱり自分の身を守る手段は必要だ。

 講習の最後には野外実習もある。

 魔物解体のときみたいに、事前に剣術や魔法の本が手に入れば、かなりの下準備ができると思う。

 何せ、勉強する時間は無限にあるのだ。

 日本にいたときみたいに、準備の時間が十分に取れなくて時間切れ、なんてことには絶対にならない。

 それこそ、何年でも何十年でも、自分が納得いくまで準備に時間を使うことができる。

 でも、そのためには、本の入手が絶対条件!


「うん、でも、やっぱり少し心配だし……。それに、純粋にレイの剣術を見てみたいってのもあるから……だめ、かなぁ?」


「うッ、まぁ、別に構わないが……。

 なら、訓練場に行こうか」


 よし、OKもらえた!


 >


「それで、リコは何を教えて欲しい? 打ち合いはまだ早いと思うが……。

 まずは剣の持ち方からやってみるか?」


 訓練場の壁に掛けられた剣を手に取ったレイが、その刀身を確かめながらそんなことを言う。

 鈍く光を反射する剣は、やっぱり剣で……。

 いや、当たり前なんだけど、いざ目の前に大きな刃物があると、やっぱり怖いというか……。


「えぇと、その、まずはレイの剣技を見せて欲しいかなぁ。こう、剣の型? みたいのとか、必殺技? みたいのとか……」


 いや、だって、今のわたしに剣とか、絶対無理だし!

 やっぱり、事前にレイにお願いして正解だった。

 明日の実習でいきなり本物の剣とか持たされたら、きっと怖くて手が震えていたと思う。


「う〜ん、一応、訓練のための剣舞の型はあるが……」

(ノーム王家の秘伝だから、あまり無闇に見せるのはまずいのだが……)


「剣舞! それ、絶対カッコいいのだよね! ぜひ、見てみたい!」


「……じゃぁ、ちょっとだけだぞ」

(戦勝祈願の儀式では、騎士団の皆に見せることもあるから、まぁ、見せるだけなら問題無いだろう)



 シャン! ダン! シュッ! ザザッ!

 シュン! シュン! ビュン! ダン!!


 こうして始まったレイの剣舞は、素晴らしかった!

 右手の剣は天を貫き、左手の指先は地を指し示す。

 片足立ちで天地を刺し貫いた姿勢から前に踏み出すと、大きな踏み込み音と共に地面が揺れ、目の前の空間が両断された。

 ある時は地面を滑るように、ある時は宙を舞うように、レイが繰り出す剣が周囲の空間を縦横無尽に切り裂いていく。

 武器はなんだか怖いなんて思ったことも忘れて、夢見心地でわたしはレイの剣舞に見惚れていた。


 ザン!! シャキン!


 剣を鞘に収める音が響き、レイの剣舞が終わる。

 それと同時に、わたしの頭の中に響くメッセージ。


《“秘伝・ノーム王家流正統武術”が入荷しました》


(よし、やった!)


 それにしても、“ノーム王家流正統武術”かぁ……。

 タイトルからして、冒険者の実戦武術とかじゃないよねぇ。

 (にら)んだ通り、やっぱりレイは騎士とかそういう家の生まれで間違いなさそう。

 もしかしたら、武門の名家とかかもしれない。名門貴族とか?

 とはいえ、今は家を出ているっていうし、特に態度が高圧的とかでもない。

 だったら、わたしも特にレイの出自云々を気にする必要はないだろう。


「ありがとう、レイ。すごくカッコよかったし、とても勉強になったよ!」


「なら、よかった。正直、まだ今のリコのレベルでは参考にならないと思うが、こういうものは後々生きてくる場合もあるからね」

(すごく嬉しそうだし、とりあえず、剣術に対する不安くらいは消せたかな……)


 お目当ての本が手に入った事もあり、思わず満面の笑みでお礼を言うわたしに、なんだかレイも嬉しそうだ。

 なんだかんだで、30分以上は剣舞を舞い続けたレイは汗びっしょりで、なんだか清々しい感じになっている。

 かく言うわたしはというと、推しのスポーツ選手の練習を見学に来ているファンみたいな感じで、もちろん汗ひとつかいていない。

 わたしから剣を教えて欲しいと誘っておいて、これはどうかとも思うんだけど……。

 まぁ、目的は達成できたわけだから、これで問題無いだろう。


「なんだか観ているだけで疲れちゃったみたい。レイも汗すごいし、混む前にお風呂にいかない?」


 これ以上いたら、今度はリコも少し剣を振ってみよう、とか言われそうなので、早々に撤収を促す。

 少しだけレイが物言いたげな視線を向けてきたけど、結局その日はそのままお風呂に直行することになった。


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