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チート図書館を手に入れた転生女子は、家出王女と冒険者になることにしました  作者: Ryoko


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24、自然の防壁

 次の日も、午前中は教室での講義で午後は実技というスケジュール。

 一日目と違って、もういきなり不良冒険者に絡まれるなんてことも起きなかった。

 また絡んだところで結果は同じだろうし、昨日はCランクの魔物を前に揃って震え上がっていた仲だ。

 今さら自分たちは経験者だとかランクが云々だとか言っても、大樹海の魔物の前では五十歩百歩。説得力に欠けるよね。

 不良冒険者たちもそれを自覚したのか、今日の午前の講義では自分たちのランクが云々なんて言葉は全く出てこなかった。

 その辺りも考えての、昨日の実技指導だったんだろうね。

 そんな訳で、今日の座学の講義はとても平和だ。

 ぶつぶつ文句を言ったり突っかかったりする人がいないからね。


「…………と、この辺りが街や街道周辺に現れる魔物だな。

 基本大樹海では高ランクの魔物が街や街道近くに現れることは滅多にない。

 なぜか分かるか?」


「えっと……。人を恐れるからですか?」


 ガイ先生の質問にわたしが答える。


「不正解。他国では魔物と人はお互いを恐れて棲み分けがされている場合が殆どだが、ここ大樹海ではそれは当てはまらない。

 大樹海の魔物の中には、それこそ一体で街一つを滅ぼしかねない奴もいるからな。

 高ランクの魔物は弱い人族の群れなど恐れはしないし、低ランクの魔物にしたって、凶悪な魔物の生息地域よりも、弱い人族の生息地域の方が余程安全だと考える。

 人の多い街や街道を避ける理由など、大樹海の魔物にはないんだよ」


 確かにそうかも……。

 動物が人を恐れるのは、明らかに人の方が動物よりも強い時だけだよね。

 考えてみれば、日本でだって野良猫や鳥は人が近づくと逃げていくけど、街に現れた猪や熊なんかは全然人を怖がっていなかった。

 ニュースで通行人が普通に襲われているところとか見た記憶がある。

 でも、なら、どうして?


「正解は、人間の方が強い魔物を避けて、弱い魔物の生息地域を選んで街を作ったからだ。

 研究者によると、龍脈やら植生やら気候やらの関係で、魔物の生息地域というのはある程度決まっていて、勝手気ままにふらふら移動するものではないらしい。

 で、冒険者だった初代国王陛下は魔物の分布状況を調べて、比較的安全な地域を選んで街を作り街道で繋げたってわけだ。

 で、結論だが、とにかく街や街道から離れるな!

 基本、街や街道から離れるほど強い魔物に襲われる危険性が高くなる。

 他国から来た素人の中には、曲がりくねった街道を直進してショートカットしようとしたりする奴がいるが、明らかな自殺行為だ。

 街道が曲がりくねっているのは、それだけの理由があるってことだからな」


 あぁ、ちょっと思いました。

 この国の地図を見て、どうせ徒歩なら、ここ街道を通らず直進した方が早いのでは? とか……。


「これはもう百年以上前の話だが、当時ノーム王国の西にあった国が、ポーションの利権目当てに、正規のルートを通らずに直接聖都を目指したことがあった。

 まぁ、いわゆる侵略行為だな。

 本来ならエデンから入国して王都を通らないと、聖都には辿り着けない。

 だが、街道を無視して考えれば、位置的には大樹海の西にある聖都は、侵攻国にとっては目と鼻の先だ。

 わざわざ大樹海の東に回って、街道を通ってエデン、王都と侵攻するよりも、魔物を蹴散らして大樹海を進む方が余程楽だと考えたんだろうな」


 地図の上だと、大樹海の西の境から聖都までは、直線距離で百キロメートルあるかないか……。

 確かに、これくらいなら何とかなりそうに思える。


「記録だと聖都を制圧するために万に近い軍を率いて進軍したらしいがな……。

 聖都に辿り着く前に全滅したらしいぞ。

 それこそ、公式の記録では、全て魔物にやられて誰も戻って来なかったそうだ」


 一万の兵が全滅って……。


「そんな訳で、ノーム王国に攻め入りたければエデン、王都と街道伝いに順に侵攻するしかないってのがこの世界の常識だ。

 そして、街道伝いに侵攻するにしても、大きく街道から外れた進軍はできない。

 軍が膨れて街道からはみ出せば、途端に凶悪な魔物の餌食だからな。

 大軍による侵攻が難しく、侵攻ルートも限定される。これがノーム王国が他国に攻められない最大の理由だな。

 いくら精強な騎士団や冒険者が多いっていっても、人口で考えれば小国規模だ。

 それに対して、得られる利は大きい。

 貴重な魔物素材や植物は勿論、聖都のポーションに魔工都市の魔道具。うまく征服できれば他国と比べて百年は進んでいるといわれる高度な魔法技術が手に入る。

 それなのにどこも攻め込んでこないのは、そういうことだな…………」


 この冒険者講習は、この国の義務教育的意味合いもあるせいか、単純な冒険者にとってのお役立ち知識以外にも、こういった社会常識的なことも教えてもらえるのがうれしい。


「色々話したが、要は無闇に街や街道から離れるなってことだ。

 では、今日の講義はここまで。

 午後の実技指導は魔物解体の実習をするからな。集合場所は資材棟だぞ。

 あぁ、あと、特にリコ」


「はい?」


「魔物の解体は慣れていない奴には結構キツいからな。昼飯はほどほどにしておけ」


 そんな有り難い忠告をいただき、午前の講義が修了した。


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