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百合チート持ちで異世界に転生したとか百合ハーの姫になるしかない!!  作者: 無色
竜魔胎動編

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79.なんてことしてくれたんですか


 リコリスのイメージCVは伊達さゆりさん

 が、今のところ一番しっくりきてるかもしれません

「おお、おおーーーー!」


 ケイト少年はラジアータ号の中から見える景色に興奮していた。


「フフン、どーよ少年。私の愛車は凄かろう」

「へんっ!なんだこんなの!ヴァルキュリア号の方が速いしカッコいいぞ!」

「なんだとコノヤロー蝶々結びにすんぞ」

「なんでそこまで大人げなく出来るんですか」


 キノーフィスを出発してから約二時間ほど。

 長閑なぶどう畑が見えてきた。

 草花の青く若い香りが辺りに漂っている。

 ここがサルウァナ。小人族の街。

 建物の大きさは平均的だけど、とにかく大きい街。

 街行く小人族は、小さい子どもが手のひらに乗るくらい、大人でも膝下くらいの大きさだ。

 ただなんていうか数が多い。


「ミニ○ンみたい」


 言いたいことはわかるけど捉え方次第じゃ悪口だろそれ。

 

「自然の匂い、主様、ここはすごく居心地がいいですね」

「そうねゲイル。心が安らぐ感じがするわ」

「果物と花のいい匂い!」


 ロストアイ出身の三人は特に街に良い印象を抱いているようだった。


「おっ菓っ子〜♪」

「おっ菓っ子〜♪」

「こっちだぞ。すごくうまい店があるんだ。ついて来いよ」

「うんっ!」

「はーい!」

「おいこらクソガキ遊ぶのはいいけど手ェ繋いでいいとは言ってねえぞ!!」

「なんて器が小さいのあんたって奴は」

「男はみんなチ○コ触ってるってのがお父さんからの教え」

「汚い」

「ったくよぉ。ドロシー、シャーリー、一応ついて行ってあげてくれる?」

「かしこまりました」

「主様、一緒に」

「私も行く!」

「ええ」

「リルムとプランも一緒に行っておいで」

「いいのか?」

「お菓子に興味津々って顔してるしね」

「行ってくるー」


 んで、私たちはどうしようか。


「のうリコリスよ。あっちの方からのう、大層甘くて芳醇な酒の香りがのう」

「わかったわかった。止めないから飲んでおいで」

「ひゃっほーなのじゃー!」

「あたしも行くー!」

「ではお供するのでございます」

「拙者も失礼して」


 師匠(せんせい)とルウリはともかく、ルドナとウルも飲める口だったのか。

 それとも人化したから興味あるだけか、どっちにしろ楽しそうならいいや。


「くぁ、ぁ…なあボクは寝ててもいいだろ?」

「お前はブレないなシロン…」

「【兎竜の怠惰(ベルフェゴール)】っと。何かあったら呼んでくれ…ふぁぁ…」

「ふぁぁ…じゃねえよ何を寝るためだけに異空間に閉じ籠もってんだ!無駄な力の使い方しやがって!こら出てこい突撃大好きホーンラビット!」

「やめろぉ〜…ボクは眠いんだぁ〜…」


 空間ぶち破って引きずり出してやったわ。

 これじゃなんのためにルール捻じ曲げたのかわからんだろ。


「くそぅボクの眠りを妨げるなんて…」


 シロンは魔法で真っ白な雲のクッションを出現させると、それに身体を埋めて浮かび上がった。


「ふぅ…これなら文句無いだろ」


 結局寝るんかいってなったけど、顔が見える分まだマシだ。


「んじゃま、小人族の街を探検するか」




 街の通りには両端に白線が引いてある。

 これは他種族用の歩行帯で、小人族の通行を妨げないように配慮されたものらしい。

 普通に歩くだけで足に当たっちゃいそうになるくらいだから、それも当然の措置なんだろう。


「いらっしゃいいらっしゃい!ハニーさつまいものステーキが焼けてるよ!」

「今が旬のブライトマスカット!今ならお買い得の金貨1枚!」

黒飴栗(くろあめぐり)氷柱柿(つららがき)のジュースだよ!甘くておいしいよ!」


 小さい身体に似合わない威勢のいい声。

 見たことのない野菜や果物が多く並んでいて、露店から漂う甘い香りが私たちを誘惑する。


「小人族が作る野菜に果物、それから作られる料理にお酒か。どれも見たことなくて楽しいな」

「お菓子のように甘いシュガートマト、じゃがいもと干し肉を掛け合わせた品種のジャーキーポテト、果肉に潤沢な酒精を含んだドランクメロン。どれも興味を惹かれますね」

「リ、リコリスちゃんが料理、したら…おいしいご飯が出来そうですね…」

「いいねそれ。話の種にちょっと買っていこうか」


 目に留まった野菜と果物をひと通り買ってみた。

 どんな風に料理しよう。楽しみだ。

 そんな風に通りを物色してたときのこと。


「これは…」


 とある果物屋の片隅に置かれた木箱の中に、卵みたいな長楕円形の木の実を見つけた。

 これって…


「カカオ?」

「おやおやお嬢さんよく知ってるね」


 小人族の店主さん曰く、この辺りでは昔からよく採れているものらしい。

 熱帯だか亜熱帯だかで栽培される植物だったと思うけど、温泉の地下熱が成長しやすい環境を整えているのかもしれない。


「おいらたち小人族の間じゃ、昔から薬としてよく飲むんだけどね。栄養だけはあるもんでこれが効くのは効くんだが、なんせ苦いし口当たりも悪いしで誰も欲しがらないんだよ」

 

 たしかに人気は無いらしい。

 見るとカカオがパンパンに入った木箱が三つも四つも置かれてる。

 誰も要らないのか。

 なら、これを逃すリコリスさんじゃない。


「せっかくだし記念に買っていこうかな。いくら?」

「一つ銅貨3枚だよ。木箱丸ごと買ってくなら銀貨5枚にまけとくよ」

「じゃあ全部買うからもうちょっとまけて」


 冗談のつもりで言ったんだろう店主は驚いた顔をした。


「全部?そりゃあ持ってってくれればありがたいけどね。なんせ在庫も在庫だから。そうだな、じゃあ全部で大銀貨1枚でどうだい?」

「うん、それでいい」


 安い〜♪

 こんなところで見つかるとは思わなかったなぁ。


「こんなに買ってどうするんですか?」

「あとのお楽しみってやつだ♡」


 これだけあったらチョコレート食べ放題♡

 お菓子に幅が出るな〜♡


「シシシ、楽しみ楽し、み――――おお?」

「リコ?」

「なんだ今の。身体の力が抜けた」


 容量が増えたはずの魔力(マナ)がごっそり持っていかれた。

 って言っても十分の一くらいだけどね。


「竜王に魔力(マナ)を喰べられたようですね」

「ああ、なるほどこれがそうなのか…って、おおっ?また力が抜けた?」

二度喰(にどば)みといって縁起が良いそうですよ。竜王に気に入られた証だとか。私も先日同じように喰べられました」

「ほーん」


 てことは今そこに竜王がいたってことか。

 縁起物ならそう思っておくことにしよう。

 勝手に私の女をつまみ食いしたのは厳罰ものだけどな。


「へ?あ、あれ?」


 おや?


「誰か何か言った?」

「なっ何も言ってません…よ?」

「気のせいか?今声が…」

「ちょっ、ちょっと待っ、なに?!何これ?!何したの?!何されたの?!」

「ほらやっぱ何か聞こえ」

「ダ、ダ……ダメぇーーーーーーーー!!」


 グンッ、て浮かんだら。


「はへぁ?」


 ビューーーーンって飛んでいったよ。

 私がね。


「ほぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!!!」

「リコ?!!」

「リ、リコリスちゃん…?!」

「なんで、なんで空を飛んでるんですか?!!」

「私の意思で飛んでるわけねーだろ何かに首根っこ掴まれてんの!!」


 ていうか冷静になってないで…


「誰か助けてぇぇぇぇーーーーーーーー!!!」




「今なんか姫の声しなかった?」

「どうせまた女の尻でも追いかけてコキュられとるだけじゃろ」

「あーね想像容易。ならいっか」

「このお酒おいしいでございますね」

「甘露でござるなぁ」

「よーし次はあっちの店じゃー!皆の者突撃ー!」

「ウェーイ」




「?」

「どうかしたシャーリー?」

「いえ、今リコリスさんの声がしたような」

「どうせまた女に手出してコキュられてんのよ」

「フフ、それもそうですね」

「ドロシードロシー!このパイすっごくおいしいよ食べてみて!ほらゲイルもー!」

「うん。これ、すごく好き」

「おいしいねー」

「うまいなー。リコリスのご飯も好きだけど、このお菓子もオイラ好きだぞ」

「ケイト君のオススメのお店おいしいね」

「うんっ。とっても」

「そ、そうか?ヘヘヘ」


 


 心配とかしない?

 君たちの愛する女ぞ?




「あ゛ぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!」


 って、なんか知らないけど三十分近く空の旅を味あわされて。


「おぺっ!!」


 やっと止まったと思えば地面に叩きつけられた。


「なんなんだ…てかここどこ…」


 【世界地図】っと。

 オーベルジオ…霊峰の天辺も天辺じゃねーか。

 どうりで空気が薄い気がするわ。って、スキルで自然影響無効化されてるから関係無いけどね☆

 土埃を払って立ち上がり、


「誰?」


 気配を感じて暗がりの奥に向かって声をかける。

 姿は見えないけど尋常じゃない存在感。

 それもとびきりの。超弩級にえっちな美女の気配に私は静かに高揚した。


「なんて…」

「ほぇ?」

「なんてことしてくれたんですかーーーー!!」


 怒声が一つ。

 殺風景な洞窟の風景が消えて明るい花畑と宮殿が現れた。

 宮殿の頂きから白いドラゴンが姿を見せると、その背中にはなんっっっっとも可憐な超美女が乗ってるじゃないか。

 闇に濡れた髪と、禍々しくも美しい紫に輝く角。

 人間じゃないのはすぐにわかった。


「ううう…!うううう…!!」


 怒ってる?泣いてる?

 美女はドラゴンの頭から降りると、早足で私に詰め寄ってきた。


「もうっ!あなたはいったいなんなんですか?!人がせっかく…せっかく…ううう…!」

「あの、あなたは?」

「私は竜王!あなたたち人間が終焉の竜と呼ぶ者です!」

「竜王?!ほんとに?!ドラゴンの姿も美しかったけど人間態はハチャメチャに可愛い!!えっち!!好き!!私と二人っきりで竜星群(ドラゴンズパレード)しませんか?!♡」

「へっ?!すすす、す?!すっ好きとかそういうのは、あのその…しょっ生涯で唯一人のああ、あ、愛する(つがい)に使う言葉でですね…たったしかにあなたは魅力的な容姿と魔力(マナ)をしていますけど…だ、だからといって簡単に靡いたりするわけはなくて…そ、その…」

「竜王様、静粛に」

「はひっ!!」


 後ろの白いドラゴンが呆れ気味な声を発すると、顔を真っ赤にして狼狽えていた竜王さんは背すじを張って硬直した。


「突然の無礼を赦しなさい赤き人の子よ。私はスノウホワイトドラゴン。竜王様に仕える竜です」

「あ、リコリスですよろしく。無礼も何もなんで私はここに連れて来られたんですか?」

「立ち話も疲れるだけです。まずは腰を下ろして気を楽にしなさい」


 スノウホワイトドラゴンが小さく息を吐くと、冷気が渦を巻いて氷の椅子が二脚出来上がった。


「人の流儀どおり茶を出すということも出来ませんが」

「いえいえ。お気遣いありがとうございます」


 背もたれに触ってみたけど全然冷たくない。

 そういう魔法なのかな。


「まずはようこそ。(そら)(みや)……招かれし者のみが立ち入れる王の領域へ。ここから先は言葉を選びなさい。生きてこの地を出たいと願うなら」


 ……え?死ぬことあるの?

 聞いてませんけど。

 どうかお手柔らかに願いたいね。


挿絵(By みてみん)




「えっと、とりあえず状況を整理したいんですけど」

「はい…。改めて、私は竜王。当代の竜たちの頂点に立つ者です。リコリスさん、単刀直入に。あなたをここにお連れしたのは、私の力を返してほしいからなのです」

「力を返す?」


 取った覚えが無いんですが?


「赤き人の子よ。竜饗祭(りゅうきょうさい)についての知識は有していますね?」

「まあ一応それなりに。竜王さん…あ、様?」

「どちらでも結構ですよ。言葉遣いも崩していただいて」

「じゃあ失礼して…竜王さんが子どもを産むための最後の期間みたいなことは」


 にしてはお腹が膨らんでるように見えないな。


「千年に及んで魔力(マナ)を体内に溜め込み、人の魔力(マナ)を以て出産(かんせい)と成す。そうして竜王様は幻獣として成り、新たな竜王様の誕生を迎える。それがあなたたちが竜饗祭(りゅうきょうさい)と呼ぶ我々の神聖な儀式です。しかし」

「私たちの誰にも予想だにしないことが起こりました。それが今しがた、リコリスさんの魔力(マナ)を喰んだときのことです。あろうことか…千年もの間溜め込んだ私の魔力(マナ)が、逆にリコリスさんに吸収されてしまったのです」

「吸収されたって…そんなことした覚えが無いんだけど」


 ていうか、そんな大量の魔力(マナ)が流れ込んできたとしたら私がわかるんじゃない?


「あの…リコリスさんって人間じゃないです、よね?」

「最近人間辞めて半神半人(デミゴッド)になった」

「半神…どおりで…」

「この人の子の存在が異端なのはさておき、見たところすでに何体かの幻獣と契約を果たしているようですね。それに加えて空のように広く海のように深い膨大な底知れぬ魔力(マナ)。只者でないことは一目でわかりそうなものですが」

「ひゃうっ!!すみませんゴメンなさい!!魔力(マナ)がおいしそうってだけでよく考えずに喰べました!!」


 なんて腰が低い王様。

 けどそんなとこが可愛い。


「まったくあなたという方は」

「だ、だって…リコリスさんの周りの人もすごくおいしい魔力(マナ)をしてて…。特にあの銀の髪の子の魔力(マナ)は極上で、それよりおいしそうな気配をしてるリコリスさんの魔力(マナ)は、いったいどんな味なんだろうって…だから、うう…」

「食いしん坊さんなんだね竜王さん」

「その結果が千年の魔力(マナ)の消失とは。歴代の竜王様もさぞ嘆き…いえ、呆れられていることでしょう」


 そんでこのスノウホワイトドラゴンが辛辣なんだ。

 仕えてるって言ってたけど、部下とか配下とは違うみたい。

 友人って方が合ってる。


「私が魔力(マナ)を吸収しちゃったって言ったけどさ、私にその自覚無いよ?」

「正確にはリコリスさんの中にいる何かに、です。私に匹敵するようなとんでもない大食漢とでも言えばいいのでしょうか。心当たりはありませんか?」

「私の中…って言われてもなあ。私はべつに妊娠してるわけでも…」


 え?してないよね?

 して…………いや、ない!!ないよ!!

 だって生やしてないもん!!みんなに!!

 いや、待てよ…


「性欲を抑えきれずに(けだもの)と化したあいつらが寝てる私を蹂躙してたらほげぶっ!!」

「あなたじゃあるまいしそんなことするわけないでしょうこの非人道的性犯罪者予備軍」


 アルティよ…じゃあ婚約者の頭を後ろから蹴飛ばした挙げ句にテーブルに踏みつけにしてる貴様は何に該当するんだ…


「あ、あなたは」

「不躾に失礼。お初に…とは変でしょうか。アルティ=クローバーと申します。竜王様とお見受けしますが」

「は、はい。あの、どうやってここに?」

「リコの魔力(マナ)を追ってきました」


 と、アルティは背中に生やした氷の竜翼を砕いた。

 すげえそんなこと出来るようになったのね。

 診たらアルティにも【竜の加護】が付いてる。

 竜王さんが付けたもののようだ。


(追ってきた?魔力(マナ)を奪われているとはいえ、竜王様の気配の隠遁はこの世の誰にも悟られることはない。この地は外部からはけして発見出来ず、侵入も不可能なはず。それをこの銀の人の子は…)


 スノウホワイトドラゴンは何か言いたげにアルティを見つめるけど。

 とりあえず。


「足どけろ貴様…」


 竜魔胎動編も終盤。

 あと2.3話を予定しています。

 にしてもキャラが増えましたね…人気キャラ投票でもしようかな。

 あとそのうちキャラまとめとか作ろうと思います。

 スキル、加護の解説とか。

 

 ここまで飽きずに読んでくれている皆様、ありがとうございます!

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 今後もよろしくお願いします!





 pixivの方でボツ案の竜王様絵を供養しておきます。

 今までの挿絵も投稿しているので、興味がある方はユーザー名で無色または、百合チート持ちで異世界に転生したとか、で検索してみてください。

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