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百合チート持ちで異世界に転生したとか百合ハーの姫になるしかない!!  作者: 無色
竜魔胎動編

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86/311

75.お別れしないと、と彼女は言った

 キノーフィスを出発してから一時間半。

 ラジアータ号はオーベルジオの麓の草原地帯を走っている。


「なぁなぁ、それすっごく速いな!オイラと同じくらい速いぞ!」

「ハハハ、うちの錬金術師の自慢の作品だからね」


 時速は100キロを超えているけど、プランは笑いながら付いてくる。

 小さくなっても素の力は変わんないらしい。


「ねえプラン、竜泉郷はまだ先なの?」

「そろそろだぞ!あの森を抜けた先だ!」


 森の手前に辿り着いてラジアータ号を降りる。

 ここから先は歩いていかないと。


「この奥か…んっ」


 森に入った途端、クラクラするくらいの魔力(マナ)が私たちを包んだ。


「すごいわね。まるで魔力(マナ)の海だわ」

「魔物の楽園ってのはあながち間違いじゃないっぽいな。全然感知が働かない」


 【世界地図】を使ってみると、ノイズがかって上手く表示されない。

 大気中に魔力(マナ)が漂ってるんじゃなくて、魔力(マナ)が大気の役割を果たしてるみたいな感じ。

 空気が澄みすぎてむしろ息苦しい。


「っ、リコリス」


 そのせいで反応が遅れた。

 気付けば辺り一面魔物でいっぱいだ。


「大丈夫だぞ。こいつらは何もしないから」


 プランが頭の上でそう言うと、魔物たちは私たちを襲うことなく、一様に同じ方向に歩き出した。

 なんていうか生気が無い?

 身体に傷を負った魔物もいるし。


「どうなってるの?」

「わかんないけど、とにかく行ってみよう」


 魔力(マナ)の中を掻くように進むこと数分。

 視界が開けると、一面の花畑が私たちの目に飛び込んできた。

 それから湯けむり立ち昇る温泉に、魔物たちが静かに浸かっている不思議な光景。 


「ここが竜泉郷…。猿とかカピバラが温泉に浸かりに来るって話は聞いたことあるけど、魔物も温泉が好きとか?」


 これだけ近付いても魔物たちは警戒することはおろか、私たちを気にかけてすらいない。


「どれどれ…おお、気持ちいいな。湯加減ちょうど」

「この温泉、純度の高い魔力(マナ)が溶けてるわね。とんでもない癒やしの力を感じるわ」

「癒やしのって…ってことは、ここの魔物たちはみんな湯治に来てるってこと?」

「お湯に浸かってるのはそうなんじゃない?花畑でお昼寝しているのは、単純に癒やしの時間を過ごしているように見えるけど」

「たしかになんか落ち着くような気がするよな」

「…なんで脱ぎだしたの?」

「え?いや、温泉入ろうかなって。え?ダメだった?」

「そういうわけじゃないけど」

「敷居も何も無いとこで裸になるのってなんかいけない気持ちに……あ、いやん見ないでドロシーのエッチー♡きゃー♡」

「こっちはもうあんたの尻の穴まで見てんのよ」


 あんま言うなそういうの。


「他に人間いないし、まあよくね?感知働かなくてもプランがいるし。な?」

「おー!オイラに任せろ!何か襲ってきたらオイラが噛み砕いてやるぞ!」

「心強すぎる」

「リルムたちを探すんじゃなかったの?」

「慌ててもしょうがないだろ」

「心配じゃないの?」

「信じてるだけだよ。あいつらは私の従魔だぞ」


 その辺に服を脱ぎ捨てて温泉に浸かる。

 だぁー気持ちいー。


「だから安心しろ。ゲイルもトトも私が見つけてやるから」

「……ええ」


 ドロシーは肩を落とすと服を脱いで私の横に腰を下ろした。


「気持ちいい…身体中に魔力(マナ)が染み渡るわ…」

「な。入ってるだけで魔力(マナ)の容量が増えてるみたいに感じる」


 効能は…傷の回復、自然治癒力上昇か。


「竜泉郷の温泉はな、ドラゴンの魔力(マナ)が溶けてるんだぞ。オーベルジオのもっと上の方に源泉があって、オイラたちドラゴンはそっちによく入るんだ」

「私たちが入ってんのはドラゴンの残り湯ってことか…そう聞くとなんか微妙だな。気持ちいいからいいけど。こうやって魔物とお風呂に入ってると、子どもの頃思い出すなぁ」

「子どもの頃って?」

「アルティが学園に入学してからくらいかな。私にも寂しいなーって時期があったのよ。村には同年代の友だちとかいなかったしさ、歳上の人ばっかりで友だちって感じじゃなかったんだよ。あの頃はまだ【百合の姫】も上手く制御出来たなかったし、あんまり関わらないようにしてたってのもあるんだけど」

「へえ。あんたも自重してた頃があったのね」

「うるせー」


 そんなときはいつもリルムたちが傍にいてくれた。

 森で追いかけっこして、木の実を食べて、お昼寝して。

 いっつも一緒だった。いっつもいっつも。何をするにも。


「お風呂がさーめっちゃ大変なの。リルムはすんなり付いてくるんだけど、シロンはめんどくさがってたまにしか入ろうとしないし、ルドナは水浴びで済まそうとするし、ウルは濡れるのが嫌いでさ。いっつも苦労させられたよ。ほら、あいつらただでさえ個性強いだろ?」

「立派に飼い主に似てるじゃない」

「どういう意味だコノヤロー。でも、自分勝手に自由で、そういうとこが可愛いんだよな」

「十年以上一緒なんだものね。ゲイルとトトは出逢ってまだ数ヶ月だけど…アタシもリコリスと同じ。あの子たちを大切に思ってる」


 私はそっと、心配そうに目を伏せるドロシーの肩を抱いた。

 

「絶対に見つける」

「ええ」

「なぁなぁリコリス、オイラも仲良くなれるかな?」

「リルムたちと?もちろん。プランもみんなも、私の仲間なんだから」

「ヘヘヘ、だといいなぁ」


 私の胸に頭を預けるプランを撫でながら、何も言わずに消えてしまったリルムたちに思いを馳せる。

 自由を縛ることはしないけど、ちゃんと最後には帰ってこいよって。

 



 ――――――――




「ゴア=フォルタ到着〜!ここがオースグラードでも一番の温泉の名所か〜!」

「ルウリお姉ちゃん、あっちに温泉玉子売ってる!」

「あっちには飲める温泉があります!」

「何それあたしも食べたい!行くぜ行くぜー!」

「「おー!」」


 立ち並ぶのは温泉施設ばかり。

 アイナモアナでも似たような光景を見かけましたが、漂う湯けむりにすら魔力(マナ)を感じる。

 ただの温泉というわけではなさそう。

 それに、竜人族の里というだけあって、やはり竜人の姿がそこかしこに見られる。

 見た目は普通の人間と大差ない。

 頭に角があったり尻尾があったり、身体の一部が鱗で覆われていたり、或いは腕や脚が竜のそれであったり。


「もっとリザードマンのような方々を想像していました」

「竜人族はあまり外では見かけませんからね」

「そっその辺りは、種族柄…みたいなこと、だと思います」

「そうじゃな。外界と繋がりを断っているわけではないのじゃが、竜人族はドラゴンを何よりも神聖視しておるからの。奴らのお膝元でもあるオースグラードを離れる理由が無いのじゃろう」

「しかし、なんだか全員様子が」


 変。というかおかしい。

 何故かやたらと辺りを気にしているように見える。


「ア、アリソンさんが言っていた、竜王のことが気になってる…のかも」

「フフ、そうだろうね」

魔力(マナ)を喰らいに人の世に紛れる…でしたか。竜王が確認された事例などあるのですか?」

「無いとも。竜王の隠遁は完ぺきだ。向こうにその気が無ければ、こちらから感知することは不可能だよ。たとえ(やつがれ)やテルナ君であろうとね。竜人族(彼ら)もああして探す行為が無駄だと知りつつも、僅かな可能性に賭けて竜王の姿を、声を感じれないかと気を張っているのさ。そもそも分身を飛ばしているだけだから、ありがたみが有ると感じるかどうかは気構え次第だろうけど」


 いじらしいというか何というか。

 なんだか恋をしているみたいです。


「おい聞いたか!あっちの通りでいきなり魔力(マナ)が減った奴がいるって!」

「なんだって?!そりゃ竜王様に違いない!おれたちも行ってみよう!」

「今の話本当?!祝福を受けたって?!」

二度喰(にどば)みはあったか?!おれの魔力(マナ)も食べてくれー!」

「竜王様ー!」


 私たちのすぐ近くで男の人たちがそんな話をして行ってしまった。

 連れて周りにいた人たちも後を追っていく。


「おやおや、なんの偶然か。竜王もゴア=フォルタに来ていたらしいね。君たちも気になっていれば探してみてはどうだい」


 アリソンさんはそう言うけれど。


「いえ、たしかに興味はありますが、気になっているかと問われると特に。勝手に魔力(マナ)を食べられるのもいい気はしませんし」

「クハハ、まあそのとおりじゃな。竜饗祭(りゅうきょうさい)を楽しむという点では、昨夜の竜星郡(ドラゴンズパレード)で十分じゃろう。あっちの三人は待てずに行ってしまったようじゃしな」

「じゃ、じゃあ私たちも」

「どこから回りましょうか」

「こっちに案内板がありますよ。薬草温泉に果汁温泉、塩温泉、砂温泉に、竜骨温泉。これだけあると迷ってしまいますね。垢すりマッサージなんていうのもありますよ」

「えと、雷温泉…っていうのが、一番人気です、よ…」

「なんですかその入ったら痺れそうな温泉」


 でもちょっと楽しそうですね。


「おーいみんなー!はよはよー!」

「置いてっちゃうよー!」

「今行きます。アリソンさんも」

「フフ、ああ」


 


「っあ゛ぁ〜最ッ高じゃ〜」


 薬草温泉は読んで字の如く、温泉に数種類の薬草を浮かべた薬湯。

 赤紫色のお湯から昇る爽やかな香りが鼻に抜けて、気分を楽にさせられる。

 

「甘くていい匂い〜」

「おいしそうです〜」


 マリアとジャンヌは果汁温泉が気に入ったらしい。

 ジュースの中に浮かんでいるみたいとはしゃいでいましたが、飲んじゃダメですよ。


「あっ、ちぃ…でーもこれはたまんない…」

「余計なものが…ぬ、抜け落ちます…ね」


 塩温泉というのは、塩を身体に塗って入るサウナのことだった。

 余分な汗と皮下脂肪が抜けるらしいのですが、やはり私は暑いのは苦手です。


「すぅ…すぅ…」


 あのシャーリーですら一瞬で眠気を誘う砂温泉。

 地下熱であたためられた砂場に寝かされ、更にその上から砂をかけられる。

 絵面こそ拷問のようですが、これがなんとも気持ちがいい。


「竜骨温泉は太古に朽ちた竜の骨の成分が溶けているとされ、浸かれば玉の肌に、飲めば百薬の長になると謂われているんだ」


 白濁の湯に浸かりながら、惚けた風にアリソンさんが言う。

 なるほど、これは一味違った風情がある。

 

「次は雷風呂ですね。見た目は普通の温泉ですが」


 ビリッ


「んっ、あっ」


 雷の魔石が反応して、チクチクピリピリと肌を刺激する。


「やっ…これ…んあっ」


 筋肉がほぐれる。

 細く痛くない針で身体中を突かれているみたい。


「あ、あんっ」

「嫁スケベだな」

「はしたないですよアルティさん、公共の場で」

()()(つがい)なだけあるのう」

「や、違っ…んんっ!」


 そういうのじゃありませんから!




「ぁ゛〜温泉入って酒を飲んでマッサージ…極楽じゃのう」

「旅の醍醐味って感じだよね…ぁ〜そこそこキク〜♡」


 竜人族秘伝のツボ押しマッサージを受ける二人を横目に、冷えたミルクを一杯。

 

「んく、んく…っは。やけに濃厚なミルクですね」

「オーバーカウのミルクだよ」


 オーバーカウというのは、下手すれば小高い丘と見間違うほど巨大な牛型の魔物で、オースグラードの固有種らしい。

 性格は極めて温厚。

 巨人族の村で酪農の目的で飼育されているのだとか。

 採れるミルクは濃厚で栄養も豊富。

 飲めば大きくなるそうです。乳房が。

 ドロシーにお土産を持って帰ってあげましょう。


「ゴクゴク…いっぱいミルク飲んで、私もおっぱい大きくなる!」

「私もー!」

「大きくても特に良いことは無いんですよ?肩が凝るだけですし」

「でもおっぱい大きいとリコリスお姉ちゃん嬉しいでしょ?」

「おっぱい大きくなったら、マリアと一緒にお姉ちゃんのことギューってするんです!」

「それは…気絶しそうなくらい喜びそうですね」

「アルティお姉ちゃんもギューってしてほしい?」

「大きくならなくてもしてください」

「じゃあ、ギュー♡」

「ギューです♡」


 本当、リコリスがまだ幼いこの子たちに手を出しませんように。

 

「ふにゃっ…?」

「はわっ…?」

「どうかしましたか二人と、も――――」


 何の前触れも無く、気配も無く。

 身体の力が微かに抜ける。


「これは…魔力(マナ)が…」


 ハッと周囲に気をやるけれど、()()の姿はどこにも無い。


(やつがれ)魔力(マナ)も喰われた。居たようだね、つい今しがた。ここに竜王が」

(わらわ)たちも喰まれた。誰にも気付かれぬとは、さすがは王を冠する者よの」

「ほんのちょっぴりだからべつにいーんだけど、つまみ食いされたみたいで変な感じ」

「実害な無いので怒りづらいところですね。竜人族の方々はこれを祝福としているようです――――」

「アルティさん!」


 言葉が紡ぎ終わる前に、私は糸が切れたみたいに背中から倒れた。

 シャーリーが受け止めてくれて何事も無かったけれど、今のは…


「どした嫁?湯あたり?」

「わかりません。けど、急に身体が…。一気に魔力(マナ)が減って…」


 すると、その様子を見ていた竜人族のマッサージ師が羨望の眼差しでこちらに寄ってきた。


「すごい!あなた二度喰(にどば)みを受けたのね!」

「二度喰み…?」

「竜王様は気に入った人の魔力(マナ)を二度食べられるの!この目で見られるなんて感激!握手してもらってもいいかしら!」

「は、はあ…」


 私と握手して何か意味があるのだろうか。

 だいたい二度食べられたからといってそれが何だと。

 しかし、ほぼ虚脱状態まで魔力(マナ)を持っていくとは。


「大賢者の魔力(マナ)を根こそぎか。とんだ大食らいのようじゃのう竜王とは」

「何か変化はあったかな?」

「変化?虚脱感以外は…いや、なんだか身体の奥が熱い気も…?」


 これが何なのかはわからない。

 竜王の祝福ないし贈り物ということなのだろうけど。


「ごちそうさまでした」

「?!」

「どっ、どうかしましたか…アルティちゃん?」

「今…いえ、なんでもありません」


 魔力(マナ)を喰い散らかしているだけかと思いきや、存外律儀なところもあるようで。

 声を掛けるくらいなら姿を見せてくれればいいのにと、私は力が入らないまま天井に向かって息を吐いた。




 ――――――――




 夜になった。

 竜泉郷の奥の奥まで進んで、ついにはオーベルジオの絶壁に触れるところまで来た。

 ひとしきり歩き回ったけど、まだリルムたちは見つけられていない。


「何を頼りにここまで来たのか訊いてもいい?」

「勘」

「訊いたアタシが間違ってた」

「私の直感は当たるぞ。特に女に関しては」

「前から言ってて気にはなってたんだけど、あんたって魔物も女として見てるの?」

「仲間に限った話だけどな」

「よかったわ。今まで野生のゴブリンやオークに欲情してたわけじゃなくて」

「しろって言われたら出来るが?」

「人の道を踏み外しし者」


 結構強めな罵倒じゃねーか。


「冗談はさておき、こっちで合ってるとは思うんだよね」

「感知は働いてないんでしょ?」

「うん。でもわかる」


 私は絶壁に手を伸ばした。

 瞬間、空間が歪んで壁が消え、その先の谷が現れた。


「おー!すごいなリコリス!グレイブドラゴンの幻術を見破るなんて!オイラたちですらこんなことなかなか出来ないぞ!」

「グレイブドラゴン?なんかよくわかんないけど、これは侵入者を阻むための結界だったってこと?」

「うーんたぶんそうなんじゃないか?オイラもこの先は知らない場所だから。この山はそれぞれのドラゴンが縄張りにしてたりするからな。勝手に入るとケンカになることもあるんだぞ」

「ドラゴンのケンカか…考えたくないな。でも」

「ええ。アタシにもわかった。この先にみんながいる」


 五感も魔力(マナ)も遮断する高度な幻術と結界。

 冷たい風と共にとてつもないプレッシャーが運ばれてくるけど、そんなのに怯んでられるか。

 私たちは竜泉郷の奥地へと歩を進めた。




 魔力(マナ)が宿った鉱石で青白く照らされる谷を進んでいると、しばらくして開けた場所に出た。

 行き止まりみたい。耳鳴りするくらい静かな場所だ。


「リルム?シロン?ルドナ?ウル?いないの?」

「ゲイル、トト?…気配だけはするのに」


 辺りをキョロキョロしてると、ドロシーの周囲に光る蝶が舞った。

 ドロシーが指を立てるとそこに留まり、翅を休めて粒子と消えた。


挿絵(By みてみん)


「これ…【月魔法】…。トト…いるの?ねえ、いるんでしょ?どこ?姿を見せて!」


 そして、


「ドロシー」


 か細い声が反響した。


「トト…トト!どこ?どこなの?」

「ゴメンね、勝手にいなくなって。怒ってるよね?」

「心配させられたんだから当然でしょ、まったくもう。さあ、帰りましょう」


 ドロシーの言葉にトトは何も返さない。


「リー」


 次いで、どこからともなく私を呼ぶ声がした。


「リルム…?やっぱりここに…ていうか今、【念話】じゃなかった…?リルム、喋れるようになったの?」

「リルム、喋れるよ」

「めっちゃすごいじゃん!成長…いや、進化か?なんだよ私たちを驚かせようと思っていなくなったの?それならそうって言えよー。めっちゃびっくりしたじゃんか。シロンたちもそこにいるの?みんな待ってるよ。怒ってないから一緒に帰ろうぜ。そうだ、今日は久しぶりにリコリスさん特製のグラタンでも――――」

「リー」


 リルムの声はいつになく震えているように聞こえた。


「リルムたち、みんなとお別れしないと」

「……は?」


 それはあまりにも突然だった。

 私たちを氷漬けにするくらいは衝撃的で突拍子も無くて。

 けれど、受け入れ難い現実だった。

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