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百合チート持ちで異世界に転生したとか百合ハーの姫になるしかない!!  作者: 無色
竜魔胎動編

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71.霧の中の悪徳

 新章開幕!

 また気長にお付き合いください!

「ふぅ、やっぱいいねぇ船旅は優雅で。波の向くまま気の向くまま。くあぁ…眠くなるよ」

「優雅かどうかは怪しいところだけどね」


 馬車の屋根で膝に頬杖をついたドロシーが言う。

 静かな灰色の海。

 日の光も届かない深い霧の中、私たちはラジアータ号の舵をまっすぐ西に切っていた。

 舵っていうのは雰囲気で、実際はハンドルだけどね。

 あ、ラジアータ号っていうのは、ルウリが造ったバイクと馬車の名前。

 二機一対。水陸両用の移動手段であり、百合の楽園(リリーレガリア)本拠地(ホームベース)代わり。

 変型するのロマン〜。


「代わり映えのしない景色だこと」

「ミステリアスな雰囲気で私は好きだけどな。てか、暇なら中戻ってろよ」

「嫌よ。だって」




「〜〜〜〜♡フフッ、ウフッ、フフフフフ♡」


 バタバタ


「キャ〜〜〜〜♡」




「アルティの浮かれっぷりが凄まじいんだもの」

「あー…」




「嫁いつまでニヤついてんのウケるんだけど」

「だってリコが、リコが〜ウフフフフ♡」

「結婚ですか。おめでたい話ですね」

「い、いいなぁ…アルティちゃん…」

「フフ、フフフ♡もうっエヴァってばもうっ♡」

「いたっ、痛い…あの…叩かないで…」




「マウントじゃないけどね。そういう性格じゃないし。けど、いいでしょ私結婚を申し込まれましたよ、って幸せオーラが溢れ出てんのよ」


 テレサクロームを出発してから二日。

 竜饗祭(りゅうきょうさい)が開かれるというエヴァの故郷、オースグラード共和国を目指している途中なんだけど、未だアルティは身をよじって喜びに打ち震えている。


『結婚しよっか』


 結婚…まだ婚約の段階だけど、言葉にすると凄いことだ。

 かくいう私も思い出しては気恥ずかしくなる。

 けどそれ以上に誇らしいもんで、アルティがそうなるのもわかる。


「あんたも思い切ったわね」

「思い切ったってことはないだろ。いつかはこうなる予定だったんだ。タイミングの問題だよ」

「じゃあアタシたちにもタイミングを見計らって結婚を申し込んでくれるのかしら?それはもう、さぞロマンチックで情熱的な口説き文句を言ってくれることでしょうね。ね、花婿さん」


 くっそ…ニヤニヤしやがって。


「まあ、そのうちな」

「フフ。テレサクロームではモナに散々振り回されたけど、結局はいい方に転がったってことかしら。災い転じて何とやらね」

「シシシ、災いにしては可愛すぎたけどな。そういえば、意思ある災厄さんはどうしてんの?」

「ルウリの善戦むなしく」




「っあああ…ちゅらいのじゃあ…。頭痛い〜気持ち悪いのじゃあ…」

「テルナお姉ちゃん、お水飲む?」

「よしよししてあげますね」

「ふえええええ…」




「あののじゃロリは海の神にでも嫌われてんのか?」

「かもね。オースグラードにはあとどのくらいで着くの?」

「【世界地図】ではあと半日ほどになってる。ノンストップだと着くのは深夜だな」

「そう。運転変わらなくて平気?」

「余裕だけど、みんなは退屈してるだろうな」

「退屈とは違うんだろうけど」

「ん?どうかした?」

「トトたちが元気無いのよね」

「船酔い?」

「そういうのじゃなくて、ここ最近妙におとなしいっていうか」


 トトはさておき、従魔組は基本的に大人しいだろ。

 シロンとゲイルなんか特に。


「なんだろ。風邪でも引いてるのかしら」

「休憩がてら様子見に行くか」


 そろそろお昼ご飯にしないとだしね。




「ぅあ゛〜海なんて大っ嫌いじゃ…」

「はい師匠(せんせい)。ペパーミントティーだよ。船酔いに効くから飲んで安静にしてて」

「うぅ…」


 お昼はサンドイッチにしてみた。

 ヘビースキップジャックっていう大きい鰹が釣れたから、それを下処理してフライにしたものを挟んでみたよ。

 戻り鰹にしてはクセが少なくて食べやすい。

 脂も乗っててステーキを食べてるみたいな満足感だ。


『おいしー』

『うんいける』


 リルムたちの元気が無いって話だったけど、ご飯はモリモリ食べてる。

 ドロシーの杞憂だったのかもしれない。


「にしても」


 ルウリが窓の外に目をやった。


「すごい霧。テレサクロームの気候帯を出てからずっとじゃない?」

「こ、この海域は…年のほとんどが霧で覆われて…いますから。オースグラードのこっ国境に聳える霊峰…オーベルジオと、オースグラードの地下熱とが影響し合って、海域に深い霧を齎している…んだそう、です」

「霊峰オーベルジオ。"竜の巣"と呼ばれる巨大な連山ですね」

「竜の巣?」

「ラ○ュタ的な?」

「一緒なこと考えるなよ。で、そこに住んでるの?竜王だっけ」

「さあ」


 と、シャーリーは言い澱む。


「なんせ竜王を目にしたという話は半ば伝説。御伽噺のようなものですから。霊峰にドラゴンが群れをなして巣食っているのは事実ですが。オースグラードでドラゴンの被害があったという話もまた耳にしませんし、それだけ知能の高いドラゴンが揃っているか、ドラゴンを束ねる者がいるということなのかもしれませんね」

「ふーん。でも千年前には人前に現れてるんでしょ?そもそもなんで千年周期なの?」

「さあ、そこまでは」


 ドラゴンっていうのは普通の生き物とは一線を画した存在ってことみたいだけど、それがわざわざ人里に姿を見せるのはどういう理由なんだろう。


「ま、オースグラードに行けばわかるか」

「もっもう少し進めば霧も抜ける、と思い…ます」

「楽しみだなぁ。あ、せっかくの帰郷ならエヴァのご両親に挨拶も行かないとな。大事な娘さんをお預かりしていますって」

「は、はい!」


 景色はさておき落ち着いた航路を行っていたとき。

 異変は突如起こった。


『主殿』

「お姉ちゃん、何か変な感じするよ」


 ウルとマリアが何かに反応した途端、窓の外で高い波がラジアータ号を叩いた。


「きゃっ!」

「何?!」


 馬車の中は私の付与が働いているから何事もないけど、外は波が轟々と荒れ狂ってる。

 

「リコ」

「ああ、ただの荒れ模様じゃないな」


 この反応は魔物か。


「モニター出すよ」


 すげえハイテク。

 マルチモニターで外の様子が丸わかりだ。

 ラジアータ号の周囲を何かが旋回してるみたいだった。


「背ビレ?大きいわね。大人五、六人分はあるわよ」

「グレイテストオルカですね。凶暴と名高い海のギャングです」

「グレイテストオルカ…?」

「どうしたエヴァ?」

「あっいえ…」

「おっきいー!」

「ちょっと可愛いです!」

「どうすんのあれ。あたしの設計だから沈むことはないけど、なんとなくおこっぽくない?」

「というか興奮しているように見えますね。縄張りにでも入ってしまったのでしょうか」

「魔物だってんなら倒して進むだけだよ」

「私がやりましょうか?」

「海凍らされたら進めなくなるだろ」


 さて、屋根に出たはいいけどどうしようかな。

 攻撃でもしてこようものなら撃退するんだけど、じつは周りをグルグルしてるだけだし。

 これ以上先に進むなって威嚇してるみたいにも見える。

 目にちゃんと敵意が込められてるのがどうにも判断に困るなぁ。


「【神眼】…グレイテストオルカ、雌…」


 雌なら【百合の姫】で言うこと聞かせられるか。

 ん?待てよ?まだステータスに何か…


「ニューエル?名前持ち…もしかして従魔?」


 じゃあ近くにテイマーが…


「戻りなニューエル」


 霧の中から女の子の声。

 ニューエルと呼ばれた巨大シャチが海に潜ると、それまで辺り一面を覆っていた霧が晴れて、青々とした空が目に飛び込んできた。

 それと帆にドクロを掲げた、見るからに〜な海賊船。

 そして、


「変な小舟がいるってんで見に来てみりゃあ…ハッ、なるほどこいつは妙なお客人だ」


 舳先(へさき)に足を乗せて啖呵を切る、粗野っぽさのあるドえれぇ美少女。


「観光か?侵略か?生憎ここいらはおれの縄張り(シマ)だ。余所者の水遊びは認めてねえ」

「なんのこっちゃだけど…それは失敬したねお嬢さん。ビザが必要だってのは知らなかったよ。ここが国境なら通行税を納めるってことで、なんとか通してもらうわけにはいかないかな?」

「ああ、構わねえよ。ただし置いてくもんは身ぐるみ。行き先は海の底だけどなぁ!」


 少女が手を挙げると、それを合図に甲板から大勢が顔を覗かせた。

 ただし見るからに極悪人って風貌には見えない、年端も行かない少年少女たちが。

 どうも様子がおかしい。

 頭に鍋を被ってるし、手に持ってるのも木の棒とか麺棒とか。

 なんていうか…ごっこ遊びみたいな。

 

「略奪の時間だ!せいぜい恨むこった!このベリーディース海賊団船長、エーファ様に出逢った悪運をなぁ!」

「ベリー…ディース…?それって…」

「リッリコリスちゃん…ま、待って…待ってへぶち!!」


 慌てて屋根に登って来たエヴァが転んで顔面を打った。


「おーい大丈夫かー?」

「だ、大丈夫…です…。それより…エ、エーファ…!なっなにしてるの、こんなところで…」

「ねぇね…?」

「ねぇね?」

「あっ違う!そっちこそ何してんだよ姉貴!」

「エヴァ?」

「あ、えっと…あっあの子はエーファ=ベリーディース…。わっ私の妹…です」


 妹が海賊…

 なんだそれおもしれえな。


挿絵(By みてみん)




 何のご縁か因果か。

 ひょんなことからエヴァの身内とばったり遭遇した私たちは、エーファちゃんの船、ヴァルキュリア号への乗船を許可されたんだけど。


「会うのはかれこれ十年振りぐれぇか?ドラグーン王国で大賢者になったってのは聞いてたが、それが今は冒険者しながら旅してるってのはどういうこった?」

「そっそっちこそ…海賊なんて…なんでこんなこと…」

「そのオドオドした喋り方まだ直ってねえのかよったく可愛いなねぇねは…ン゛ン!!んで、あんたが姉貴の」

「未来の花嫁、リコリス=ラプラスハートです。よろしく」

「は、花嫁…エヘ、ヘヘヘ…」

「はんっ。こんなのが姉貴のね。趣味が()りぃな」


 なにおぅ?


「ねぇねのお嫁さんはおれだってのに…指切りして約束したじゃねぇかよくそっ…なんで覚えてねえんだよ…ボソボソ…」

「エーファ、な、何か言った?」

「なんでもねぇよ!!フンッ!!」


 あら^〜

 いいですねぇお姉ちゃん大好きオラオラ妹ですかぁ♡

 

「それで、あなたたちはいったい何を?」

「見りゃわかんだろ。海賊だよ」

「なら冒険者として退治もやむ無しと取りますが?」


 アルティの冷ややかな目に子どもたちが怯える。

 私も大概だけど、じつは私以上に力ずくなんだよなこいつ。

 

「余所者と話すことなんか何もねぇよ。姉貴に免じて(おか)まで送ってってやるが、おれらに口出しはすんな」

「エッエーファ…お姉ちゃんの友達に、酷いこと言っちゃダメだ、よ…」

「チッ。舵を取れ!(おか)に戻るぞ!」

「アイアイサー!」


 海賊行為はさておき、立派に船乗りはやってるらしい。

 ラジアータ号をロープで牽引もしてくれた。

 船が進みだすと、さっきのグレイテストオルカ…ニューエルが横をついてきた。


「可愛いねシャチさん」

「うんっ。大きくてツヤツヤしてる」

「へへん。ニューエルは船長の従魔なんだぜ。魔物なんか一飲みにしちゃうくらい強いんだ」


 マリアとジャンヌに自慢げにするのは、鼻の頭に絆創膏を貼ったショートヘアの男の子。

 頭の上には小さな角を一つ生やしてる。


「おれ魔人族のケイト!ベリーディース海賊団の副船長なんだ!」

「私マリア!」

「ジャンヌです!」

「マリアにジャンヌか!来いよ船の中を見せてやる!」

「いいの?やった!」

「ありがとう!」


 歳が同じってことで、子どもたちはすぐに仲良くなった。

 けど少年、二人に不埒なことしたらキン○バスターの刑に処すからな。


「てかエヴァっちに妹がいたなんて初耳〜」

「それはたしかに」

「ごっゴメンなさい…言う機会が無くて…」

「あぁん?私たちに隠し事は無しだろ〜?」

「うぇいうぇーい」

「あぁうぅ〜…」

「転生者であること黙ってたことは棚に上げてますか?」

「それはそれ」


 なんて風にウザ絡みしてる間に陸が見えた。

 天を衝く霊峰オーベルジオと、赤く色付いた大地。


「あれが…オースグラード共和国か」


 


 船は無事オースグラード共和国の首都、キノーフィスの港に到着した。

 街は飾り付けられ、行き交う人の陽気なこと。

 魔人領というだけあって、様々な魔人族が見受けられる。

 ゴブリンにコボルト、オーク、ケットシーにリザードマン。

 ドラゴンポートでもいろんな人種を見かけたけど、同じ大陸でもこうも住んでる人種に色が出るのかと認識を改めさせれた。

 ただ、みんなが仮装してるから脳がバグる。

 ともあれ、師匠(せんせい)がウルの背中で死んでること以外は平穏無事な入国だ。


「海賊船が港に堂々と停まっているのに、騒ぎになっている様子は無いですね」

「言われてみれば」


 むしろ…


「おーエーファ!見回りご苦労さん!」

「おう。祭だからってあんま飲み過ぎんなよおっさん」

「エーファちゃん、これうちの畑で採れた芋とかぼちゃ!子どもたちに!」

「仕方ねえな貰っといてやる。後で畑仕事手伝いに行くから覚悟しとけよババア」

「エーファお姉ちゃん遊ぼー!」

「ガキと遊んでるほど暇じゃねぇよ。菓子でも食ってろ。みんなで分けろよ」


 めっちゃ好意的。

 やっぱりただの海賊ってわけでもないようだ。


「ありがとねエーファちゃん。乗せてきてもらって」

「ケッ、姉貴を送っただけだってんだよ」

「あ、エーファ…わ、私たち家に帰るんだけど、よければ一緒に…」

「おれは用事なんかねぇ。帰んなら勝手にしろ。行くぞてめぇら」

「あ、待ってよ船長!またなマリア、ジャンヌ!」

「またねケイト君」

「バイバーイ」

「行っちゃったな。可愛い妹じゃん」

「は、はい…。昔はあんな感じじゃなかったのに…」

「大人になったんだろ。アルティも昔は甘えん坊だったし」

「うるさいです」

「いって」


 ドゥクシすんな。


「さてと、とりあえずこれからエヴァの家に行って、観光とかあれこれはそれから考えるか」

「のじゃ〜…」

師匠(せんせい)もこんなだし」

「こうなったら半日は調子悪いのよねテルナって」


 ほんとにね。




 港から徒歩で十五分。

 海が一望出来る高台に建てられた立派な一軒家の前に到着した。


「でかー。エヴァっちの家ってお金持ち?」

「いえいえいえいえ…そそそんなことないです…。中へ、どうぞ。た、ただいまー」

「まあエヴァ、おかえりなさい」

「フゴッ、フゴフゴ!フゴフゴ!(おおエヴァ!久しいな!元気にしてたか?)」

「う、うん。お母さんもお父さんも…元気そうでよかった…」

「フゴフゴフゴ?フゴフゴ、フゴフゴフゴゴ(どうかしたのか?連絡も寄越さないでいきなり帰ってくるなんて)」

「近くに来ることがあって…竜饗祭(りゅうきょうさい)の時期って、それで」

「そう。そちらの方々は?」

「いっ一緒に旅をしてる…仲間…」

「まあまあまあ、エヴァがお友だちを連れてくるなんて初めて。嬉しいわ。はじめまして皆さん、エヴァの母親のエスカノールと言います。どうぞよろしく」

「フゴッ!フゴッ!フゴフゴ!(父のエムドです!娘と仲良くしてくれてありがとう!狭い家だがゆっくりしていってください!)」

 

 インパクトが強えんじゃ。【言語理解】ってこういうのもわかんのね。便利。

 お姉さんと間違えるくらい若々しいどちゃくそ美人なお母様が、猿轡(さるぐつわ)と亀甲縛りで自由を封じられて四つん這いになったお父様の背中に馬乗りになっている。

 どういう状況?


「お馬さんごっこしてるー」

「楽しそうです」

「フゴッフゴッ。フゴフゴ?(ハッハッハ、君たちも乗るかい?)」

「妹に変な遊び覚えさせないでくださいエヴァのお父様でもぶん殴りますよ」

「フゴフゴ!フゴフゴ!!(本望だ!!来なさい!!)」


 ふぅ、なんだただのドMか。


「常軌を逸した目してんな。エヴァのお父様おしなべてヤバいじゃん」

「せ、世間の父親ってみんなこうなんじゃ…」

「世間の父親にどんなイメージ抱いてんだ」

「けど酔って性欲全開のときあんたもこんな目をしてるわよ」

「嘘だろゴメン改めるわ」

「さあ、立ち話もなんですから中へどうぞ。今お茶を淹れますからね」


 エスカノールさんは器用に手綱を引いて(エムド)さんを操り、私たちを客間へと案内した。




「フフ、緊張しますわね。こんな風にエヴァのお友だちにお茶を出すなんて夢にも思いませんでしたから」

「も、もうお母さん…いいからそんな…」

「照れてるエヴァさんも可愛らしいですね」


 揶揄われてエヴァは顔を赤くして小さくなった。

 エスカノールさんは私たちに紅茶を勧めた。

 青い紅茶…メリノシャスと呼ばれるオースグラードの特産品らしい。


「おいしいですね。普通の紅茶より香り高くて、砂糖を入れてないのにほんのりと上品な甘みがあります」

「ええ。それに微かに魔力(マナ)を感じますね」

「ほっとする味だわ」

「フゴフゴフゴフゴ(うーんいつもながらエスカノールの淹れた紅茶は最高だ)」


 なら床に置いた皿で飲むのやめられては?


「小人族が何代にも渡って品種改良した自慢の茶葉ですから」

「小人族?」

「オースグラードは、複数の種族が共存共栄して暮らしている国家なんです。魔法の扱いに長け魔物に近いとされる魔人族の他に、植物の扱いに長けた小人族、力自慢で大地と共に生きる巨人族、そして竜の末裔である竜人族。この四つの種族が手を取り合い国を成したのが、オースグラード共和国の始まりとされていますわ」


 ほーん。

 小人族、巨人族、竜人族…この三つにはまだ会ったことないな。

 魅力的なお姉さんがいらっしゃれば、ぜひお近付きになりたい。


「エスカノールさんは魔人で、エムドさんは人間だって聞いてます」

「ええ。この人、昔は冒険者でして。オースグラードに立ち寄ったときに一目惚れして求婚されましたの」

「フゴフゴフゴフーゴッ。フゴッフゴッフゴッ(今も昔も君は世界一美しいよ。凍るような瞳に僕はもうメロメロさ)」

「もうっ、あなたったら」

「フゴォォォ!!(ありがとうございます!!)」


 頭から熱々の紅茶ぶっかけた。

 この人大概ドSだな。


「そっそういえば、エーファに会ったけど…」

「元気にしていたでしょう。あなたがドラグーン王国に留学してから、とても活発に育ったの」

「活発って…」

「海賊やるのはちょっと活発すぎなんじゃないの?」

「そうね。でも、あれであの子なりに街のためにやってくれているのよ」

「街のため、ですか?」

「自警団…何でも屋とでも言うのかしら。あの子自身オースグラードで名のあるテイマーということもあって、それで街の用心棒みたいなことをしてくれているの。空き家を買って身寄りのない子どもの面倒を見たり、街で仕事を紹介したりね。多少言葉遣いは乱暴だけど、あれで優しい子なのよ。仲良くしてあげてね」


 それより、とエスカノールさんはエヴァに目をやった。


「大賢者襲名以降ほとんど手紙も寄越さず、帰ってもこず、旅に出たことはおろか、良い人が出来たことについても何一つ連絡しなかった親不孝者がいることの方が私としては引っ掛かっているのだけれど。そこのところどうなのかしら。ねえ、エヴァ。お母さん悲しいわ。久しぶりに会えた娘にお説教しなきゃいけないなんて」

「ひいいい!しゅみません!」


 この後、エヴァはこってり絞られた。

 なんかうちのお母さんに似てるなこの人。

 私もたまにはちゃんと手紙書こう。


「さてと。この時期に帰ってきたということは、竜饗祭(りゅうきょうさい)と収穫祭を楽しみに来たのよね?それなら滞在している間はここに泊まるといいわ。部屋は空いていることですし」

「いいんですか?」

「ええ。賑やかで楽しくなりますわね。そうだわエヴァ」

「あぅ…」


 叱られすぎてエヴァは虫の息だ。


「皆さんに街を案内して差し上げなさい」

「うっうん」

「みんな仮装するんでしょ?ならあたしたちもコスろーよ!」

「いいですね。衣装はお任せを」

「仮装ねえ…アタシ普段から魔女の格好してるんだけど」

「シシシ、いいじゃん楽しそうで」


 みんなどんな仮装するのかな。

 ニシシ、楽しみだな♡

 《プロフィール》


 名前:リコリス=ラプラスハート

 種族:人間

 性別:女性

 年齢:19歳

 職業:魔狼(フェンリル)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 称号:ドラグーン王国伯爵、アイナモアナ公国名誉子爵、ディガーディアー名誉子爵、竜殺し(ドラゴンキラー)夜会の主(ワルプルギス)

 加護:【自由神の加護】【遊戯神の加護】【精霊の加護】

 スキル

 【毒生成】【薬生成】【悪食】【念話】【誘惑】【前戯】【水泳】【芸術家】【欲情】【発情】【避妊】【射精管理】


 フレンドリースキル

 アルティ=クローバー(人間)

 【星天の盾(イージス)】【七大魔法】【魔導書(グリモワール)】【耐寒】

 ドロシー(ハーフエルフ)

 【月魔法】【眷属召喚】【採取】【交渉術】【商人】【金の恵み】

 マリア(獣人族)

 【爆炎魔法】【電光石火】【天駆】【神速】【直感】【言語理解】

 ジャンヌ(獣人族)

 【大海魔法】【術理】【並列思考】【見えざる手】【言語理解】

 テルナ=ローグ=ブラッドメアリー(吸血鬼(ヴァンパイア))

 

 シャーリー(人間)

 【影魔法】【暗殺術】【短刀術】【蹴撃】【投擲】【針使い】【操糸】【暗視】【姦淫】【礼儀作法】【苦痛耐性】

 エヴァ=ベリーディース(半魔人)

 【重力魔法】

 ルウリ=クラウチ=ディガーディアー(自動人形(オートマタ))

 【錬金術】【人形師(ドールクリエイター)】【魔力装填(マナチャージ)】【魔力変質(マナアルター)】【解析】

 フィーナ=ローレンス(人間)

 【花の神の加護】【指揮】【宮廷作法】

 ミオ=ホウヅキ(妖怪族)

 【水上歩行】

 アウラ(エルフ)

 【空間魔法】【剛力無双】

 クルーエル(エルフ)

 【蒼炎魔法】【狂戦士】

 ヘルガ(エルフ)

 【鉄魔法】

 ティルフィ(エルフ)

 【翠嵐魔法】

 ネイア(エルフ)

 【毒魔法】【給仕】


 コントラクトスキル

 リルム(グラトニースライム)

 【暴食】【超速再生】【アイテムボックス】

 シロン(スロウスラビット)

 【怠惰】

 ルドナ(グリードホーク)

 【強欲】【風魔法】【空気抵抗軽減】【奇襲】

 ウル(プライドウルフ)

 【傲慢】【闇魔法】【影分身】【危機感知】【隠密】【索敵】


 エクストラスキル

 【聖魔法】【神眼】【武神の恩寵】【技術神の恩寵】【鍛治神の恩寵】【酒神の恩寵】【炉神の恩寵】【状態異常無効】【覇気】【付与魔術】【世界地図】【魔力吸収(マナアブゾーブ)


 ユニークスキル

 【百合の姫】【管理者権限アドミニストレートスキル】【記憶創造】【混沌の王】



 名前:アルティ=クローバー

 種族:人間

 性別:女性

 年齢:18歳

 職業:魔狼(フェンリル)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 称号:(しろがね)の大賢者

 加護:無し

 スキル

 【魔眼】【耐寒】【氷結無効】【念話】

 エクストラスキル

 【七大魔法】【魔導書(グリモワール)】【状態異常無効】

 ユニークスキル

 【星天の盾(イージス)



 名前:ドロシー(真名:ドゥ=ラ=メール=ロストアイ)

 種族:ハーフエルフ

 性別:女性

 年齢:130歳

 職業:精霊(エレメンタル)級冒険者、薬師

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 称号:亡国の皇女、森羅の継承者

 加護:【精霊の加護】

 スキル

 【調合】【採取】【交渉術】【商人】【金の恵み】【念話】

 エクストラスキル

 【精霊魔法】【月魔法】【眷属召喚】【状態異常無効】



 名前:マリア

 種族:獣人族

 性別:女性

 年齢:10歳

 職業:妖精(フェアリー)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 称号:竜殺し(ドラゴンキラー)

 加護:無し

 スキル

 【剣術】【直感】【言語理解】【念話】

 エクストラスキル

 【爆炎魔法】【電光石火】【天駆】【神速】【状態異常無効】



 名前:ジャンヌ

 種族:獣人族

 性別:女性

 年齢:10歳

 職業:妖精(フェアリー)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 称号:竜殺し(ドラゴンキラー)

 加護:無し

 スキル

 【執筆】【描写】【言語理解】【念話】

 エクストラスキル

 【大海魔法】【術理】【並列思考】【見えざる手】【状態異常無効】



 名前:テルナ=ローグ=ブラッドメアリー

 種族:吸血鬼(ヴァンパイア)

 性別:女性

 年齢:1999歳

 職業:神竜(ドラグニール)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 称号:真紅の女王(ブラッディークイーン)、血の福音、意思ある災厄

 加護:【最高神の加護】

 スキル

 【鑑定】【鑑定阻害】【隠蔽】他、現存する全てのスキル

 エクストラスキル

 【召喚魔法】

 ユニークスキル

 【全知全能】【無限】【紅蓮魔法】



 名前:シャーリー(シャルロット=リープ)

 種族:人間

 性別:女性

 年齢:25歳

 職業:子鬼(ゴブリン)級冒険者、裁縫師

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 称号:(うつ)ろの影

 加護:無し

 スキル

 【暗殺術】【短刀術】【調合】【器用】【蹴撃】【投擲】【針使い】【操糸】【暗視】【詐欺】【窃盗】【姦淫】【礼儀作法】【苦痛耐性】【鑑定阻害】【念話】

 エクストラスキル

 【影魔法】【状態異常無効】



 名前:エヴァ=ベリーディース

 種族:半魔人

 性別:女性

 年齢:18歳

 職業:悪魔(デーモン)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 称号:奈落(ならく)の大賢者

 加護:【混沌神の加護】

 スキル

 【念話】他、取り込んだ魔物のスキル

 エクストラスキル

 【状態異常無効】

 ユニークスキル

 【混沌】【重力魔法】【混沌付与魔術(カオスエンチャント)



 名前:ルウリ=クラウチ=ディガーディアー

 種族:自動人形(オートマタ)

 性別:女性

 年齢:18歳

 職業:悪魔(デーモン)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 称号:錬金術師

 加護:【機械神の加護】

 スキル

 【射撃】【精密動作】【解析】【念話】

 エクストラスキル

 【錬金術】【人形師(ドールクリエイター)】【魔力装填(マナチャージ)】【魔力変質(マナアルター)】【状態異常無効】




 従魔

 名前:リルム

 種族:グラトニースライム

 契約者:リコリス=ラプラスハート

 スキル

 【家事】

 エクストラスキル

 【超速再生】【アイテムボックス】

 ユニークスキル

 【暴食】



 名前:シロン

 種族:スロウスラビット

 契約者:リコリス=ラプラスハート

 スキル

 【跳躍】

 ユニークスキル

 【怠惰】



 名前:ルドナ

 種族:グリードホーク

 契約者:リコリス=ラプラスハート

 スキル

 【空の眼】【空気抵抗軽減】【奇襲】

 エクストラスキル

 【風魔法】

 ユニークスキル

 【強欲】



 名前:ウル

 種族:プライドウルフ

 契約者:リコリス=ラプラスハート

 スキル

 【危機感知】【隠密】【索敵】

 エクストラスキル

 【闇魔法】【影分身】

 ユニークスキル

 【傲慢】



 名前:ゲイル

 種族:パンツァービートル

 契約者:ドロシー

 スキル

 【突撃】【統率】【砲撃】【高速機動】

 エクストラスキル

 【金剛体】



 名前:トト

 種族:上位月霊

 契約者:ドロシー

 スキル

 【念話】

 エクストラスキル

 【精霊魔法】【月魔法】

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― 新着の感想 ―
[良い点] ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛船旅でへなちょこになってるテルナ様可愛いいいいい 好き エヴァちゃん妹さん居たんですねえ めっちゃ好きなどストライクの妹さんで心が踊ります 次の話も楽しみにしてます…
感想一覧
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