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第19話

 少しでも楽しんでいただければ幸いです。

 土日は家族と過ごし、空いた時間を見つけては色々と調べて回った。

 その結果、ある程度今世について理解が進んだと思う。

 極端な情報とかも色々あるのだろうけど、今世も日本で本当に良かった。いや、国によるのだけど、基本的に強いものが正義って考え方が一般的で。

 つまり、お世辞にも男性の立場が強いと言えないような国だってあるって事だ。

 前世でもあったのだけど襲った側は完全無罪なのに、襲われた側は法律どころか憲法すら犯したとして死刑ってのもあるらしい。

 そんな修羅の国に生まれなくて本当に良かったと思う。


 ただ、だからと言って平和な訳じゃない。

 笑い話にもならないのが、行為中に膣に力を入れ過ぎたら男性の象徴が千切れちゃったとか言う記事を見た時……男性諸君ならその衝撃を理解してもらえると思う。

 そりゃ、性事情に男性が消極的なの頷けるってものだ。俺だって流石にそれはごめんこうむる。

 詳しく調べたところ、膣を特別鍛えてなければ大丈夫って話だったのだけど。それは本当なのだろうか? 行為中は男性は痛がる事が多いので優しくするのを心がけましょうって記事が圧倒的に多かった時点で、油断は禁物としか思えない。

 ともかく、女性を怒らせるような男が生きていけるような世界ではないと、そう理解できた。


「ほんと現代日本って生きていくのにイージーな世界だったんだなぁ。いや、ここも現代日本だけど」


 月曜日になり、通学途中で憂鬱な気分のままため息と共にそう吐き出す。

 俺が前世で読んでた男女比が狂っている世界は、滅茶苦茶男性優遇されてたものばっかりだったんだけど。作り物と現実なんて剥離して当然だよなぁ。

 ともかく、安易に女の子と仲良くなったり結婚できれば良いって事でもなくなったわけだ。

 正直痛みしか感じられないなら、俺だって積極的に性行為なんてやりたくない。

 でも、それを乗り越えないと子供も作れないって訳だ。

 俺の能力程度じゃ精子提供なんてありえないわけで、となると、その辺りの問題もクリアしていく必要がある。

 それには、パートナーとなる女の子達の理解が必要な訳で――


「結局やる事は変わらないか」


 しっかり女の子と仲良くなると言う目的は変わらないので、そう口にした。

 何はともあれお互いに尊重しあって愛し慈しみ合える仲を築くのが最も大切って事だ。

 それと、安易に女性の誘いに付いて行かないってのも気を付けないといけない。

 とにかく気持ちよくなりたいとか男を征服したい、屈服させたいって女性から押し倒された後なんて想像したくない。どう考えても蹂躙される未来しか見えないからな。

 で、再起不能にされて女性恐怖症に陥り殺処分になる男性も少なくないって事実もあるし。

 なんだかんだ強い言葉を使う男が一定数いるのは、自分の身を守るためなのかも。

 いや、やり過ぎると屈服させたい女子から襲われる可能性が上がるみたいだし……ほんと綱渡り状態だったんだな俺って。


「家族には感謝しないとな」


 家に帰ったら、改めて家族を労わろうと思いそう口にする。

 身内から襲われるって事も、それを法律で禁止しているこの国ですらある一定数以上起きているそうだし。

 ただ、基本外の女性から身内の男性を守るのは、その家族の女性の義務でもあるようだ。

 だからこそ俺は無事だった訳であり。ほんと家族には感謝しかない。

 過剰なスキンシップとかも多いけど、その程度なら甘んじて受け入れられるってもんだ。

 安易に考えて来たけれど、ほんと怖い世界に転生してしまったんだな。


「上田君、おはよう!」


「竹本さん、おはよう」


 色々と考えながら歩いていたら、竹本さんから元気よく話しかけられた。

 笑顔で話しかけてくれたあたり、だいぶ俺に慣れてきてくれたのだろう。

 それが嬉しくて俺も自然と笑顔になりつつ、挨拶を返しそのまま会話を始める。


「今日も元気そうだね」


「うん、上田君と会えたからだよ」


「おお、竹本さんのような美人さんから言われると照れちゃうな」


 ちょっと前までのゴミを見るような目つきはどうしたのだろう? って言いたくなるほど竹本さんは上機嫌が見て取れる。

 そして、明け透けな言葉に俺は言葉にした通り照れてしまう。

 こんな美少女にこうも好意的に接されると、いくら物騒な事を調べて気付いたからってやっぱりデレデレしてしまうよ。

 なんだかんだ実際酷い目にあった事が無いのも大きいとは思うから、流石に調べた事情のような酷い目に合わされたらどうなるかは分からない。

 とは言っても、結局殺処分を回避するためには少なくとも誰かと子供を作らないといけないし。やっぱりこのまま竹本さん含め皆と仲良くなろう。

 結局はやる事は変わらないから、とりあえず今日も手を繋いでみようかな。

 その思いのまま、俺は竹本さんの手を握った。


「おおっ、びっくりしたぁ」


「あっ。ごめん。嫌だった?」


「ううん、全然そんな事はないのだけど……えへへ」


 驚いた様子を見せた後、はにかむように笑顔を見せてくれる竹本さんは凄く可愛い。

 そう言えば、彼女も俺からすると超人的な身体能力を見せてくれた訳だけど。手は凄く柔らかいし、いい匂いがする。

 きっと何かしら理由とか理屈とかこの世界ならではの法則があるのだろうけど、超人的身体能力の持ち主には全然見えないなぁ。

 俺からすると長身の言動は可愛い美人さんってしか思えない。

 まあ、喧嘩とかしちゃったら叩きのめされちゃうのだろうけど。

 ちらりとそう思うものの、やっぱり可愛らしい美少女には違いなくて。仲良く手を繋いだまま気分よく登校するのだった。





「おはよう、上田君。今日はいよいよ私ね」


「おはよう、赤井さん。よろしくね」


 教室に辿り着くと、赤井さんが俺にも分かるくらい気合が入った様子で挨拶をしてきた。

 そんな彼女が好ましくて俺も笑顔で答える。竹本さんはじゃあまたねと、そこで別れた。どうやら登下校以外の時間は1人1人の時間になるっぽい。

 ところで、あまり当てにならない俺の勘だけれども、たぶん彼女は俺の事を嫌っているって事はないと思う。

 勿論林さんの例のように全然外れていて、嫌われている可能性だってあるのだけど。

 でも、勢いよく俺の右手は赤井さんの左手、俺の左手は赤井さんの右手で掴まれた時点で嫌われているって事はないって思った。


 うん、だって今赤井さんがしまったぁって顔しているからね。

 希望的観測も入っているかもしれないけど、たぶん竹本さんとの様に手を繋ぎたかったんだと思う。

 それは俺の席までだろうし、とっても短いけど少しでも手を繋ぎたいってのは好意が前提にあるのならおかしくないから。

 で、しまったって顔になったのは、向かい合って手を繋いでいる状態だと移動がすごぶるし難いからだろう。

 まあ、あくまで俺の予想だけど、外れてなければ赤井さんからは好意的な興味を持たれているで間違いないと思う。


 それもこれも、中高生の女子は性的興味は人一倍らしいし。林さんと言う例外はあれどある程度好意的に話したら嫌われることってないと思ったからだ。

 まあ、俺の前世の感覚も入っちゃっているのだけど。基本この世界の女子って男にモテるって事は物凄く少ないみたいだから、たぶん間違っちゃいないと思う。

 ただ、だからこそ赤井さんだけじゃなく林さん以外の女子から襲われるのだけは警戒しなきゃいけないのだけど。

 林さんに限れば、俺の事が嫌いらしいし、わざわざ嫌いな男を襲うような事もしないだろう。名家と近しい家でもあるし、男にだって困ってない可能性も高いしね。


 と、色々考え込んでしまったけど。目の前で何も言えずに固まっている赤井さんにいい加減フォローの言葉を掛ける事にする。


「赤井さん。俺は君と手を繋げて嬉しいけど、何かあったんじゃないの?」


「は? え? え?」


 俺の言葉に赤井さんはかあっとより顔が赤くなった。

 うん、まあ前世で女慣れしていない男がって考えると。納得できる反応だよね。

 だから、苦笑いを浮かべつつも手を繋ぎなおし、赤井さんの右手を俺の右手で引いて赤井さんの席に向かうのだった。

 赤い顔のままされるがままで付いてくる赤井さんは、今までのイメージ全てをぶち壊すくらい乙女乙女していてとても可愛らしかった。

 赤井さんが率先して声掛けとかしてきて来てたけど、彼女も竹本さんや金田さんのように初心なんだろうなと。俺はそう思うのだった。

 もし楽しんでいただけましたら、作者のパワーになりますので評価やお気に入りをよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 普通におもしろかったです。 既に更新が止まっているようですが、続きが読みたく思ってます。 再開されることを心待ちにしてます
[一言] 一息に読んでしまいました、とても面白いです 多くの男女比ものと比較してイージーハーレムでない そしてそれとは真逆のハードモードでもないのがとても良いです 各々のキャラクターの掘り下げが楽しみ…
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