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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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507 「願いの分配(2)」

 ボクっ娘の言葉通り、神々の塔の出入り口から5人が出てきた。

 けど入った時とは違い、それぞれの手には様々な魔導器を抱え込んでいて、中に入れる人間を呼ぶ。

 希望する魔導器が部屋の中で現れてきたので、運び出すのを手伝えとの事だ。


 そして20個ほどの魔導器を運び出すと、求めていた人がそれぞれ受け取る。

 けどこちらは、ちょうど人数分だ。

 地味というか素っ気ない外見のものばかりだけど、魔法金属製の武具が部屋の中にたくさん転がっていた。


「アイテムは人数分なんですね」


「どういう事だ?」


 並んでアイテムを運んでいたレイ博士が、怪訝な表情を向けてくる。

 そういえば、ユニーク獲得の説明がまだだったので、かいつまんで話す。


「そうなのか。吾輩にも属性追加があったが、皆にもあったのだな」


「レイ博士は何の属性でしたか?」


「月帝をいただいた。もともと地皇以外2つあったが、これで天の三柱みはしらコンプリートだ」


「私も2つもらったよ。もともと月帝、水皇があったけど、空と無属性が追加ー」


 そこにトモエさんが、オレに後ろから抱きついてきた。

 レイ博士の羨ましそうな目線が印象的で、それを蔑んだ目で見ているスミレさんがいい味を出している。

 そこにハルカさんが歩み寄ってくる。

 トモエさんがオレに抱きついたから、ではなさそうだ。


「2つならショウとシズも同じね。トモエって、元は魔法属性2つ? キイロに魔法属性をもらったんじゃなかったのね」


「キイロは魔法を全部貸してくれてるけど、あれに属性は付いてこなかったよ。私、基本は脳筋ビルドで、属性2つ追加のユニークだったみたい」


「それじゃあ出現時で属性5つで、今回さらに2つ追加? もう規格外もいいところだね」


 同じように近づいてきたボクっ娘が、引き気味にかなり驚いている。

 それにひきかえ、悠里は少しショボンとしている。


「良いなぁー。私も無属性。魔法使いたかったのに〜」


「属性がなくても勉強すれば魔法は覚えられるよ」


「ハイッ、シズさん! 頑張ります!」


 悠里の場合、ここまでがセットだ。

 しかし、ボクっ娘の質問が消化されてないので、ボクっ娘がオレとシズさんをさらに見てくる。そしてさらにトモエさんにも目を向ける。


「ねえ、2つ追加って。3人が『世界』の恩恵を2回分もらったって事よね?」


「そうだろうな。2属性同時に体に入るというか、スイッチが入る感じがあった」


「オレも。なんか体の奥から力が湧いてくる感じがした」


「多分、魔力総量が多いか、属性を受け入れる許容量が大きいかで選んだんじゃないか? 5つ以上は普通聞かないしな」


「なるほど、有り得るわね。……もしかしたら、私も無属性も増えてるかも」


 そう言いつつ、ハルカさんが少し眉間にしわを寄せ、自分の開いた手を覗いている。

 さっきの魔法では、無属性の分は把握できてなかったのだろうか。


「えーっ、ハルカさんも? ハルカさんも元々4つだよね」


「ええ。けど間違いないと思うから、これで合計6属性分ね」


「で、無属性って何なんだ? 体の魔力が増えるとかじゃないよな」


「基本は、魔力による身体能力の向上。それに一度に身体能力などに使える魔力が増える。途中で増える事は通常ないので、凄く珍しい体験になるな」


「じゃあ、シズさんの魔法二つ増える方が普通ですか?」


 オレの言葉にシズさんが苦笑する。


「普通、属性は生まれつきの固定で増えることはないから、何を以って普通と言えば良いんだろうな」


「賑やかそうね」


 シズさんが肩を竦めたところで、火竜公女さんが近づいてきた。


「アイテムはこれでおしまいね。そちらはどうでした?」


「みんな追加属性のユニークをもらったわよ。それより、願いより多い属性付与の理由って何?」


 中に入ったうちの3人が揃ったので、ハルカさんがごもっともな質問を告げる。

 オレも気になるところだ。

 それに代表するように、火竜公女さんが口を開いた。


「あの中でわたくし達にも恩恵があったので聞いたのですけれど、これだけ大量の願いならばと、サービスして下さったみたい。機械みたいな『我々』さんですけれど、存外融通の聞く方みたいよ」


「なるほど。オレ達に属性二つ分がきた理由も似た感じですか?」


「アラ、そうなの。その事は話してませんでしたわ。ねえ」


「うん。まあ、くれるって言うんだから、もらっておとくけどねー」


 問われたトモエさんがアッケラカンと返す。

 それにみんながそれぞれ小さく笑う。

 しかし火竜公女さんは、少し不満げだ。


「けど、聞いてくださる。わたくし他にも色々と聞いてみたのですけど、あれはダメ、それは無理ばっかり。もうウンザリだわ」


 火竜公女さんが何を聞いたり頼んだのかは分からないけど、遣り取りは少し想像できた。

 けれど色々無理難題を言ったから、こうして『世界』がサービスしてくれたんじゃないだろうかとも思える。

 もしそうなら大金星だ。

 それを言ってみようかと思ったら、先に火竜公女さんが改まって口を開いた。

 表情が少し真面目になっている。


「それで、残りの願いは最終日待ち?」


「あ、はい。そうですね。任意の「客人」を呼ぶのと、望む人のドロップアウトをキャンセルする事ですから」


「じゃあ、あと6日ほどここでの滞在って事ね。飛行船で来てよかったわ」


「ここなら大型龍が居るから、世界一安全でしょうし、ノンビリ出来ますね」


「そうよね。海の上で航海していると思って、日光浴でもしようかしら」


 そんな呑気な会話を交わしたけど、いよいよ大詰めだ。


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