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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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479 「航海(2)」

「ちゅーわけで、タダ乗り防止のための役割分担と、部屋割りを発表すんでー」


 説明が一通り済んだので、なんだか徐々に寮母さんのようになってきてるルリさんが仕切り始めている。


「この船の船室、据付で2段か3段ベッドになってんねん。そんで、念のため毛布とかシーツ、マットレスもベッド数の数だけ倉庫にしまってあるんや。せやから、寝床は心配せんでエエで」


「食料は?」


 ジョージさんがビシッと挙手する。

 今の議題から外れるけど、超真面目顔だ。

 まあ、確かに一番切実な問題だから先に聞きたいのだろう。


「そっちもな、初期の乗り組み予定者の半年分の穀類、保存肉、保存食、塩、油、味噌とかの調味料は積んであんねん。せやからこの人数でも、多少味とか我慢してもろたら4ヶ月は平気や。とはいえ、他が問題でなぁ」


「現地調達か?」


「せやねん。冷凍肉はある程度積んでるけど、生肉が欲しかったら暇見つけて狩りに行ってもらう事なると思うわ」


「どうやって?」


「ヴァイスかライムに乗せてもろて、どっかの地上で狩りして戻って来ればエエやろ。あの子らの方が、船よりずっと速いし、多分楽勝やで」


「厩舎に鶏が居たよな」


「食べたらアカンで。卵産んでもらうんやから」


「じゃあ足りないのは、あと生野菜か?」


「『ダブル』でも、壊血病は怖いもんなあ。せやけど、ある程度は保存食でカバーできんで。あと、もやし栽培してるから大丈夫や。他の青物欲しかったら、狩りのついでにでも採って来てな」


「もやし? 水耕栽培的な?」


「いいや。海綿を苗床にすんねん。これ現代知識チートな。あれ、水ごっつう吸い込んでるから、育てんのに水いらんねんで。まあ、こんだけ魔法使いおるから、海水から浄水して水耕栽培も出来るやろけどな」


 なんだかルリさんとジョージさんだけで会話が進んでいる。けど、うまくQ&Aになってて分かりやすい。


(それで、もやしメニューが多かったんだ)


 思わぬ納得までしてしまうほどだ。

 とはいえ、脱線甚だしい。

 それにみんな気づいているので、真面目な勇者様が遠慮気味に挙手する。


「あの、それで僕達の役割と部屋割りはどのように?」


「おおっ、忘れるとこやった。この食いしん坊のせいやから、堪忍やで」


 そう言って発表していく。

 基本的には、今までオレ達が個室で使ってた部屋を全部二人用にする。2人部屋にできる船室は12部屋あるけど、2部屋はまだ半分食料庫だ。

 そのうち1部屋を整理するので11部屋。うち2部屋はうちの家臣のホランさんとフェンデルさんの部屋。残り9部屋と船長室に、『ダブル』の男8人、女11人を割り振ることになる。

 そしてレイ博士だけ物持ちなのと、スミレさんとの愛の巣は邪魔されたくないと言う、オレへの密かな嘆願を受け入れてそのまま一人。リョウさんが、真面目な勇者様との相部屋で決着した。


「えっ? ショウ君とハルカさんが同室? えっと、そういう事?」


 最後に、真面目な表情で真面目な勇者様に真顔で質問されてしまった。自分達も男女混成のパーティーなのに、改めて聞く事かと思わなくもない。


「最初に言ったように、オレがエルブルス辺境伯なんですけど、世界竜エルブルスから領主として認めてもらう為に、元の権利を持つハルカさんと最低でも婚約関係になる必要があったんですよ。

 で、この船には、エルブルスの領民や家臣の人が乗ってますから」


「つまり仮面?」


「ちゃんとお付き合いもしています」


 そこはハルカさんが言ってくれた。

 けど彼女の言葉に、真面目な勇者様の女子2人が、羨ましそうな目線を向けてくるので、ちょっと状況を察してしまう。

 この真面目な勇者様は、要するに鈍感主人公キャラなのだろう。


 クズが居たと思えば、鈍感主人公まで居るとは、この世界の『ダブル』達は、何かのキャラの枠に自分からハマりにいっているのだろうかと疑いそうになる。

 まあオチとしてそんな話もあったけど、その後はつつがなく航海が続いた。




 地皇の聖地での戦闘が嘘のような平穏な航海で、半ば暇つぶしの甲板上での鍛錬が思わず長時間にわたるほどだった。

 そしてその鍛錬で、やはり真面目な勇者様はかなりの使い手だと分かった。

 向こうも、オレを正しい評価で認めてくれた気がした。


 しかしそれ以上に、ハルカさんの剣の冴えが格段に増していた。

 オレも多少は強くなったし剣も使えるようになったと思ってたので、軽くショックを受けるほどだ。

 魔力総量も増えてるけど、それ以上に身体能力も向上してるように感じられた。


 トモエさんも、『ダブル』歴がオレより一ヶ月しか違わないのが嘘のような腕前だった。

 特に急所狙いは、鍛錬とか訓練でなんとかなるものでないのが良く分かった。

 いや、分かりすぎるほど分かった。

 トモエさんの剣技は、基本的には天才の剣だ。

 その事はハルカさんも認めていたし、真面目な勇者様も「あの人は天才だな」と感心していたくらいだ。


 また戦闘職はオレ達Sランク組と、ジョージさん達Aランク組みに基本分かれていた。

 そして技術面では、ハルカさんとホランさんが抜きん出て先生を勤められるので、ジョージさん達『ダブル』は獣人のホランさんに色々と教わっていた。


 オレ自身は、久々にハルカさん以外の同格な稽古相手なので、かなり一生懸命取り組めたし充実していた、と思う。

 と言うのも、二回に一回の割合で、マーレス殿下が遊びに来ていたからだ。

 いや、遊びにではなく、稽古をしに来ていたと表現を改めよう。

 で、楽しそうに模擬戦をして、ルリさんの現代日本由来の料理を美味しそうに食べて帰るまでがワンセットだった。

 そして食事の席で、よくオレ達の世界の事を聞きたがった。

 なんというか、旅の間だけは世のしがらみから解放されたような雰囲気をヒシヒシと感じる。


 一方で、ボクっ娘と悠里は、一緒に艦隊を組んでる『帝国』とノヴァの飛行船に乗り込んでるご同業との充実した訓練の日々を過ごした。

 疾風の騎士と竜騎兵は、周りの偵察とか警戒も担当していたけど、合わせて12騎と数も多い事と平穏な航海な事もあり、十分に訓練もできた。

 そして空軍元帥と火竜公女さんも、マーレス殿下みたいに入れ替わりでオレ達の船に遊びに来ていた。

 やっぱり飛行職は、色々な面で自由な人ばかりだ。


 魔法使いの人達も、レイ博士とシズさんを中心に勉強や鍛錬に励んでいた。

 そしてレイ博士以外は全員女性なので、レイ博士が凄く嬉しそうな反面、博士の隣にスミレさんが居るので、シズさん以外はみんな引いていた。

 しかもそれにレイ博士は全く気づいていなかった。

 南無三。


 一方生活面だけど、数が増えたのもあってルリさんが主となるも、食事当番は常時2人程度が交代で補佐に入った。男尊女卑は関係ないので、男子も出来る事をやる。

 クロ達を頼っても良かったけど、基本旅の間クロ達は警報装置、偵察装置代わりを常時勤めるし、ズボラはよくないというルリさんの健全な考えで生活面に関わることはなかった。


 そして就寝時だけど、部屋割りでジョージさん達は、オレの予想に反して女子は女子、男子は男子で別かれていた。真面目な勇者様の仲間の人も同様だ。

 オレだけがハルカさんと同室という事になるけど、ボクっ娘が寝に来たり、夜になると誰かしらが遊びに来ていた。

 そしてオレが艦橋の当直の時は、船長室が女子会の場にされるのが定番となっていた。

 領地の人たちがいなければ、オレの別室を再び解放して、オレは小麦粉の袋に添い寝されていた事だろう。


 逆に男子会をする場合は、食事時以外の食堂が宴会場となった。

 けど、オレにとっては久しぶりに男子が多いので、修学旅行のような雰囲気も少しあり楽しく賑やかな旅となった。


 

 そうして『夢』の方での航海は順調に消化され、途中で気候的に暑くなってきたので衣替えをする事になる。

 何しろ邪神大陸を抜けると、そこは海賊の海、カリブ海。

 もっとも、この世界では名称未定なレベルの海で、海賊どころか人が住んでいない。

 陸地に近づかなければ、魔物に逢う可能性もゼロだ。

 しかも邪神大陸から抜けても、そのままかなりの高い空を飛んでるので、魔物に逢うわけがない。


 そして安全な事もあるので、普段着は半袖半パンな感じなり、女性陣も男子どもの目を楽しませてくれる薄着スタイルとなった。

 もっとも乗り合わせている男子の『ダブル』は、一見陽キャなジョージさんを含めて全員が隠キャ寄りなので、夏らしいイベントが発生する筈もなかった。

 オレのように個々でイチャイチャするのが精々だ。


 そして二つの大陸の細くなった辺りを1日もかけずに抜けると、そこは太平洋。この世界では大洋オセアニとだけ呼ばれてる、世界最大の海だ。

 そして海を3日ほど進めば、神々の塔のすぐそばのガラパゴス諸島。

 そしてその近くに、目的地の神々の塔がある。


 もっとも神々の塔自体は、カリブ海に出た辺りから、かなりはっきりと見えるようになっていた。

 最初は天を貫く細い糸のようだった。それが徐々にはっきりと見えてくると、白く細い塔と呼ぶにはあまりにも高い構造物だと分かってくる。

 頂上が全然見えない。

 ボクっ娘が言っていたけど、宇宙まで貫いてるというのはマジだと実感させられる情景だ。


 そして太平洋に出ると、その塔が徐々に太く見えるようになってくる。ただし一向に近づかない。

 それだけ巨大だと言うことだ。

 ようやくガラパゴス諸島まで来たら、塔の幅が数百メートル単位の巨大な、巨大すぎる天空を貫いて宇宙に達する塔だと自然と理解できるようになる。


 そして現代科学の知識を持つ『ダブル』だから、多少は現実感を持って理解できるけど、この世界の人々にとっては常識をはるかに通り越えた存在に見えてるらしかった。

 

 あと一日という辺りまで来ると、どの船でも口をあんぐりと開けて見上げる様が見えたと言う。


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