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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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474 「同乗者選び(2)」

 その後、万が一の場合に備えて相応の装備を整え、話すべき相手の元へと向かった。


「残念ながら、ワシの飛行船はしばらくここで擱座かくざだ。魔物どもにやられすぎた。故に、ゴードが乗ってきた船で向かう。それに護衛に2隻伴う予定だ。家臣達には、無謀だと散々諫言かんげんされたわ」


 そう言ってマーレス殿下は肩を竦めるので、それに愛想笑いをしてから気になる事を口にする。


「それじゃあ、ここの『帝国』軍の指揮とかは?」


「それはゴードの、騎龍将軍ゴードが皇帝陛下から賜ったお役目だ。それに引き換えワシは、お主らが何をするのかを見定める役目があるから、断っても後ろから付いて行くぞ」


「それは構いません。ただ、また青鬼が襲ってくると思いますよ」


「赤いのは倒したし、空の上では何もできまい。それにここからは竜騎兵も半分連れて行く。ここの魔物もあらかた殲滅したので、騎士も強い奴らを選ぶ。

 それにもしワシ、いや『帝国』も神々の塔へ入れるのならば、皇族が行かねばならんからな」


 そう言われてしまうと、こちらとしては止めようがない。

 あとは多少気になることがあるので、話題を変更する。


「それなら本懐を遂げてください。それより妖人を昨日の夕方から見てないんですが、知りませんか?」


「ん? そっちには挨拶なしか? 『帝国』軍が多数来たので、魔物が完全に消えた後、挨拶もそこそこに慌てて出て行きおったぞ。あそこまで警戒しなくても良いものをな。

 しかしそちらに一言もなしという事は、用が済んだという事だな。妖人にとって『客人』は道具みたいなもの、という伝承もある。あまり気を許さん方が良いぞ」


「そうなんですね。気をつけます」


 それに対して「うむ」と返事をし、そこで一旦言葉を切ってからオレの方へ正対して、すごく真面目な表情を向けて来た。


「あとひとつ。友として、そして『帝国』第二皇子として、我が名と神々に賭けて誓おう。ショウ達、いやルカ殿の邪魔は決してせぬ。また抜け駆けもだ。家臣にもさせぬ」


「お言葉ありがとうございます。ではオレ達も、マーレス殿下と『帝国』が神々の塔に入れるよう、最大限ご助力させて頂きます」


「うむ。直に神々に助けられるより心強い言葉だ。では、共に参ろうぞ」


「そういきたいところなんですが、オレ達の同郷の人達も付いて来るらしいので、話を付けてきます」


「そうか。ショウも色々と大変だのう」


「殿下ほどの重荷は肩に背負ってませんけどね」


 そう言うとマーレス殿下が豪快に笑った。

 そしてその笑い声に送られつつ、『ダブル』達が朝食をとったりたりたむろしてる所へと向かう。




「ジョージさん達はどうするんですか?」


「違うでしょう。皆さんにお聞きしたいのですが、神々の塔へ向かう人はどれだけいますか? ただし、危険は覚悟して下さい。これは脅しじゃありません」


 ハルカさんが少し大きな声で周囲に呼びかけると、大勢の『ダブル」がこちらを向く。

 けど即答はない。

 ここの人達は、浮遊大陸のギルドかハーケンのギルドの人達だけど、何か問題があるらしい。

 マリアさんがその回答をくれた。


「それなんだけど、私達が乗ってきた『帝国』の飛行船の終着駅がここなのよ。神々の塔へ行くとしたら、改めて船に乗せてもらうしかないわ」


「そうなのね」


「ええ。それに私個人としては、ハルカと会えたからまずは満足よ」


「地皇の聖地にも来られたしな」


「巡礼のアミュレット持ってくるんでした」


「ここに来た記念品くらい探さないとな」


 マリアさん達の軽口で、周りも似たような雰囲気になる。

 その間、後ろで仲間達の小声の相談が聞こえる。



「無理したらあと何人乗れそうだっけ?」


「単に数だけで言えば今の倍。無理やり詰め込めば、4倍も可能だろう」


「それでも、ここに居る半分にもならないか」


「倍はともかく4倍も乗せたら、往復の食料が足らへんで」


「お風呂はともかく、お手洗いも大変な事になるわよね」


「うん。4倍は乗れると言うだけだからな」


 どうやらダメという結論になるようだ。

 オレ達に近い位置の『ダブル』達も、その声が聞こえてるのでダメというのは伝わっている。

 けど、飛行船はまだある。


「じゃあ、ノヴァの飛行船にも聞いてきます。少し待ってて下さい」


「でも期待しないでねー」


 ボクっ娘の気の抜けた言葉を最後に、言葉通り今度はノヴァの飛行船へと向かった。

 ノヴァの飛行船は、遠目で見た通りオレ達のエルブルス号よりも大きな龍巣母艦型の大型船だ。

 『帝国』の船にも劣らない威容って感じがする。

 そしてそこで、空軍元帥と火竜公女さんをつかまえる。


「話は分かったが、連中を全員乗せるのは無理だな。こいつは軍艦で、必要人員に合わせて物資を載せておる。10人程度ならともかく、120人は無理ゲーだ」


「そうよね。どうしてもって人だけ、クジか何かで選んでいただける?」


「それとこの船はノヴァの予算と、派手、じゃなくて男爵夫人バロネスのポケットマネーで動いておる」


「だから、相応の運賃は頂くわよ。わたくし達に護衛は不要ですから、護衛代で相殺とかもなし。ですけど、場所が場所ですので後払いはok。それと好き好んで危険な場所に行くのですから格安でお乗せいたしましょう、とお伝えくださる」


「分かりました。ありがとうございます」


「辺境伯がお礼を言ってどうする」


 そう言えばそうだな、という言葉を背に次へと向かう。

 成り行きとはいえ、オレ達がここまで骨を折ルものかとぼんやり考えていたけど、同郷のよしみで構わないくらいにこの時点では思っていた。


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