469 「様々な人との再会(1)」
「ようっ兄弟。久しぶりだな!」
自分たちの船の周りでヘタリ込む感じで休憩していたら、ほぼ戦いが沈静化したくらいに旧知の人達がやってきた。
ジョージさん達だ。
「お、お久し振りです」
「と言っても、体感的には三ヶ月ぶりくらいだな」
「流石の勇者様もお疲れのようだな」
「勇者はハルカさんですよ」
レンさんのジョークに、思わず力のない笑みを浮かべてしまう。
その横では、マリアさんとサキさんが、ハルカさん達と挨拶を交わしている。
そして驚きの声が聞こえてきた。
「えっ? シズトモのトモ? えっ? じゃあ、シズって、シズに似てるからそう名付けたんじゃない、とか?」
マリアさんが混乱しているのは、かなり貴重なシーンだ。
同時に「シズさんの事はそう思っていたのか」と納得する。
そのあとも話は続いているけど、それよりも気になる事があった。
「それにしても、どうしてここに?」
「そりゃおまえ、ショウ達が運営してるホームページを見てたからに決まってるだろ。他の連中も、大なり小なりそうだと思うぞ」
「ノヴァの空母が合流してきた時は流石に驚いたがな」
「そうだったんですね。でも、何で?」
そう、オレ的には話がまだ見えない。
オレが何してきたかなど、今年の6月から公開しっぱなしだ。数日前にも、『帝国』を立つ辺りまでの話をアップしたところだ。
ただ、なぜ今ここに現れたのかがさっぱり分からない。
けど、そんなオレの間抜け面に二人が苦笑する。
「これまで地皇の聖地は、行った奴がほぼゼロだ。あっても上空から見たとか、玉砕報告だった」
「それを兄弟達が『帝国』と一緒に攻めるってんなら、行けるチャンスありってみんな思ったんだよ」
「チャンス、ですか?」
「何しろ兄弟達は、ノヴァで大暴れしただろ。そいつらが攻めるってんなら、突破できそうだろ」
「何しろ今話題のSランパーティーだからな」
「オレ達が?」
「知らないのか?」
首をフルフルと横に振るしかない。
そう言えば、最近色々と忙しくて他のまとめサイトも見てないし、部員や講演会に来る人達ともあまり話してないから、他の情報や噂とかはさっぱり拾えてなかった。
そんなオレに、二人して「ダメだなぁ」と首を横に振られる。
「いいか兄弟、今『アナザー・スカイ』で活動してる『ダブル』の中で、少なくともオクシデント地域で最強パーティーは兄弟達って言われてるんだよ」
「何しろ、上級神殿巡察官に尻尾が5本もある獣人魔導師、それに疾風の騎士に雷龍の使い手だからな」
「さらにハーレムメンバー追加とか、反則だろ」
「ハーレムメンバーって……」
「まあハーレムはともかく、あのサムラーイがモデルさんって、マジなのか?」
ジョージさんが、トモエさんをチラ見する。
「マジですよ。当人もそう言ってるでしょ。それに、めっちゃ強いですよ」
横で行われている女子トークでは、トモエさんは普通にリアルバレをしている。らしいと言うべきだろうけど、隠す気ゼロだ。目元で横ピースとかして、ポーズまで取っている。
似合ってるけど、サムライっぽいスタイルでやると違和感半端ない。
そしてシズさんについては訳ありという事で、機会を見て話すという事に落ち着きつつある。
まあ、この4人には、いい加減本当の事を話しても良いだろう。
それに例のバズった写真の件を考えると、ボクっ娘と悠里までいるんだから、誤魔化しても仕方ない。
しかし男子チームは別の事に関心が向いていた。
「まあ、その話はマリアさんに任せるとして、だ」
「そうだな。それよりチラっと見たけど、『帝国』の皇子ってマジだったんだな」
「ええ。マーレス殿下には、色々と助けて頂きました」
「なるほどな。あと、ゴーレムマスターが居るって話だが? これもマジなのか?」
「ええ。呼びましょうか? 船の中だと思いますよ。大勢の前は嫌だって、言ってましたから」
「えっ? ゴーレムマスターって実はコミュ障?」
「ええ、まあ、多少」
思わず目を逸らしてしまう。
それほど隠キャでもないけど、色々と問題はあるだろう。
けど横目の先で、そのダメな象徴の一つが歩いてきた。
「ショウ様、我が主人がお呼びです。如何致しましょうか?」
「重要な話?」
「いえ、あのオタクの戯言に過ぎません。大した事はないでしょう」
「じゃあ、後で顔出しますって伝えといて」
「畏まりました」と慇懃にお辞儀をして去って行った。けど、問題はむしろここからだろう。
二人とも、いや隣の女子2人も目を丸くしたり、呆然とした表情を見せている。
近くに居るのがジョージさん達だけで良かった。他の『ダブル』もいたら、レイ博士の株はさらに下がったところだ。まあ、今更な気も多分にするけど。
「で、あの人は?」
「てか、何かのコスプレか? 流石にあれはレギュレーション違反だろ」
「あれは、レイ博士のゴーレムの一種?」
「何で疑問系なんだよ。で、実際は? そういう設定、ってだけじゃないだろうな」
「いや、マジで魔導器です。他にも、似たようなのが歩いてたでしょ」
「そう言や猫耳執事も居たよな」
「まあ、機会があれば紹介しますが、博士秘蔵のゴーレムってやつは、結構な数が旅に同行してます」
他に、騎士と神官、それにガキンチョもいる。
同行するなら紹介する事もあるだろう。
それにこの人たちには、この件もいい加減真実を話すべきかもしれない。
「そうなのか。それにしても、ようやく入った男子メンバーがゴーレムマスターとか、どうなんだよ?」
「まあ、年齢とか趣味とかかなり差があるのは確かですね。けど、今回の旅だけですが、男子メンバーはもう一人いますよ」
「そうなのか?」
「絵描きの人です。多分、そのうち向こうでもカミングアウトして、絵を一杯アップすると思います。意欲満々でしたから」
「なるほど。旅の絵師か。リアルには記憶と技術しか持ち帰れないから貴重だよな」
「あのサイトで絵を描いてる人か?」
レンさんが感心するより先に回答にたどり着いた。
だから素直に頷く。
「はい。でも一応オフレコって事で」
「それは勿論。しかし次は神々の塔だろ。これは貴重だな」
「で、行けそうなのか?」
ジョージさんの言葉に腕組みしてしまう。





