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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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467 「救援(1)」

「我が友よ、貴殿らは逃げよ。我らが時を稼ぐ!」


「殿下!」


 オレとマーレス第二皇子は背中合わせに追い詰められ、それぞれの前には赤鬼と青鬼。

 相手は何かしらのブーストが、まだ効果を発揮してるらしく元気いっぱい。

 こちらをどう料理するか算段中のご様子だ。


「言うな。もとよりワシが巻き込んだようなもの。内紛にまで巻き込んだ上に、この体たらく。本当に我が身が情けない。故に、せめて殿しんがりくらい任せて欲しい。これは友としての頼みだ」


「そんな事言われたら断れないでしょう」


 少し鼻の奥がツンとなったが、グッとこえらる。

 そして次の命令を出そうとした時だった。


 次々に黒い影が真上からいくつも飛来してきた。

 地表で見るのは初めてだけど、今まで何度か見てきた光景だ。


音速爆撃ソニックボミングっ!」


「疾風の騎士!! 神殿騎士団かっ!」


 山火事の向こう側に、かなりの時間の疾風の騎士の必殺技が炸裂し、山火事による炎の壁を乗り越えようと密集していた魔物の集団が音速の衝撃波に蹂躙される。

 そして音速爆撃は一度ではなかった。


 さらに2回。1回は最初の一撃の90度別方角から、半円を2本の線でなぞるように炸裂。

 もう1回は、既に焼け野原となった神殿の結界の外で遠距離攻撃をしている魔物の集団に対して、神殿に対して横一文字で炸裂。

 予想外の攻撃に、赤鬼青鬼もオレ達の事を忘れたかのように呆然としている。


 そして3騎の疾風の騎士は、それぞれの仕事を終えると、続いて川の方から迫りつつある魔物が操る飛行生物の集団へと襲い掛かる。

 そしてその巨鷲には見覚えがあった。


「天鷲! 空軍元帥だ!」


「知っているのか、我が友よ!」


「ノヴァの空軍総司令です。けど、なんでこんな所に……」


「そうか。だが、それだけではないようだぞ。アレは『帝国』の兵だけではないな」


 そうしてマーレス殿下が視線を顔ごと向けた先には、低空から地表を圧するように進撃してくる、竜騎兵の編隊がいた。

 編隊は2つ。

 片方は赤い飛龍と2騎。もう片方は、2つの編隊に別れた黒い飛龍と7騎。

 合わせて11騎の竜騎兵は、混乱する魔物の軍勢にそれぞれ襲い掛かる。


 黒い飛龍が率いる編隊は、音速爆撃で大混乱の魔物の群れにさらに混乱を広げていく。

 赤い飛龍は炎の壁をものともせずに乗り越え、神殿側の魔物の残余を自ら放つ火炎によって蹂躙する。

 そしてその赤い飛龍にも見覚えがあった。


「黒いのはゴードのやつだが、あの赤い飛龍もショウの知り合いか?」


「ハイ。ノヴァトキオの貴族、火竜公女のテスタロッサです」


「そうか。では、こちらも反撃と行こうか、我が友よ!」


「はい。けど、奴らの相手をしたいのは、オレ達だけじゃないみたいですよ」


「それは重畳。では、このままワシは青を抑える! その間に赤いのを潰せ!」


 小声で囁くと、一気に青鬼へとマーレス殿下が飛ぶ。

 そして同時にオレも赤鬼へと挑み掛かる。

 ちなみに、青鬼がスピード、赤鬼はパワー+魔法と言った感じで、赤鬼を先に倒すのは正しい。

 魔法が使えない奴は、孤立させてしまえば袋叩きしやすいからだ。

 オレも一度経験させられたから、骨身にしみて分かる。

 それを後で青鬼に分からせてやろうと心の片隅で思いつつ、赤鬼に渾身の一撃を見舞う。


 オレの一撃を、赤鬼は巨大な竿状の巨大な斧、ヴァルデッシュとか言うやつでなんとか受け止める。

 そしてそこに、2体目の上級悪魔を一刀で倒しそのまま切り込んできたトモエさんの黄金に輝く日本刀がシャープに切り込んできて、赤鬼のがら空きの胴体へと叩き込まれる。

 普通なら上下バラバラになるほどの一撃。けど、よほど頑丈らしく、それなりの深手という程度にしか切り裂けない。


「かったーい!」


 思わずトモエさんが愚痴るほどだ。

 そしてその間にもオレは次々に刃を繰り出す。

 トモエさんも同様で、2対1なら十分に相手の動きを封じ込める事ができる。


 けど、当然ながらそれだけでは勝てない。

 もっともこの場合、動きを封じ込めれば良かった。

 少し離れた場所からは、本来なら魔物の集団へ向けるべく構築していた魔法の完成を伝える鋭い声が響いてきたからだ。


「高貴にして光輝なる神々の王よ、その槍の力もて汝に仇なす神敵を貫け! 行け、『神槍撃』! 二人とも避けて!」


 オレ達が戦っている横合いから、5つの魔法陣を展開していたハルカさんの魔法が殺到する。

 光の槍よりさらに派手で痛そうな輝く槍が、ちょうど1ダース。

 突き刺さる瞬間にオレとトモエさんが飛び退くと、樽に入った海賊船長を剣で突き刺すゲームで、最後の1本まで飛び出さなかった時のように、四方八方から見るからに痛そうな槍の十字砲火が突き刺さる。

 いや、ほぼ全てが貫いている。


 どす黒い体液が赤かったら壮絶な光景だろうけど、相手は悪魔、魔物なので同情すら湧かない。

 そして槍は核となっている場所には刺さらなかったらしいので、速攻追い打ちをかける。

 トモエさんも同じ考えで、一瞬だけ視線を交錯させる。


 輝く槍が消えるタイミングで、オレは魔力相殺を目一杯載せ、大上段から一気に振り下ろす。

 トモエさんは瞬間のタイミングを見計らって、左右から心臓の辺りを横に一閃させる。

 ここまで瞬間的に合わせてくるとか、どんだけ天才的な動きなんだと感心しそうになったけど、この一撃は見事に嵌った。


 4つに分断された赤鬼の体は、オレの全力の魔力相殺にもメゲず、一瞬いつものスライム状になりかける。kれど、トモエさんの一撃が見事悪魔の核を捉えていたので、それも不発に終わった。

 しかしそこからは予想外だ。


 普通ならオリハルコンの刃で斬り裂けないものなどないのだけど、「キンッ!」と鋭い音がして、何かが刃の軌道の先へと弾き飛ばされいったのだ。

 そしてオレの優れた動体視力は、弾き飛ばされた物が何なのかを正確に把握していた。

 赤いキューブだ。


(なるほど、赤鬼なわけだ)


 と、妙に間抜けけな事を一瞬思ったけど、青鬼はそうではなかった。


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