表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

317/402

435 「返答(2)」

「おおっ、ちゃんと返事きたんだ。良かった良かった」


 その後すぐ近くのファストフードでトモエさんと合流し、そのまま駄弁りこむ。

 トモエさんはオレの「活躍」を弄るつもりだったけど、機先を制して返事の件を切り出した。


「トモエさんにも全面協力してもらいましたしね」


「プライベート情報とかねー。それで返事の相談って、シズさんも交えてする?」


「シズ、今日は遅いって連絡あったから、私達で決めちゃおう。返事があんまり遅いとダメだし。それで、二人の今後の空きスケジュールは?」


「もう一人の天沢さんは、シズさんの家庭教師以外はノープロブレム。あ、でも、明日はダメだね」


「オレは来週埋まりまくりです。土曜の夕方までくらいですね」


「えーっと私は……」


 と、トモエさんは、スケジュール帳を出して確認している。

 女子はスケジュール帳を持っている事が多いけど、トモエさんの場合はガチで仕事予定とか書いているんだろう。


「……土曜の午前中なら大丈夫。10時から昼にかけてで如何でしょうか、くらいにしとく?」


「はい。じゃあ、文面考えましょうか」


 そう言いつつメモ帳を取り出す。

 そして3人で文章を考えて、下書きの内容を確認してもらってから返信する。


「これで返事待ちだね。土曜ならシズも休みだから、多少離れた場所でも車出してくれるって言ってたから」


「最近仕事忙しいんですね」


「仕事は普通。今忙しいのは、家の神社の方もあるから。祭りは平日だから言って無かったけど」


「ボク、というか、もう一人の天沢さんは周知だけどね」


「えーっ。なんでみんな教えてくれないんですか?」


 意外だった。

 けど、秋祭りと年末年始は忙しい的な事を言っていたので、今がその時期なんだろう。

 確かに今は秋祭りシーズンだ。

 そしてオレのブーイングに、主にトモエさんがなだめに入る。

 これが玲奈ならともかく、ボクっ娘では効果がないと踏んだんだろう。

 正しい判断だ。


「伝統は動かせないって事で祭りは平日だし、地元だけのものだからね。それと屋台とか少ししか出ないし、マジで地味」


「それでもお神輿とか獅子舞とかあるんじゃあ?」


「お神輿だけだね。神社の脇に倉庫があったでしょ。あの中にあるよ。あと私らは、氏子のジジババを黙らせる為に、お神楽の練習。今日はシズの番で、私も午前中参戦してた。

 舞はもう覚えてるから、ジジババに練習してますよって見せるだけだけどね。これが煩いんだ」


 そうトモエさんは、後ろ手を組んで呑気に言う。


「えっと、運動会に来てて良かったんですか?」


「学校の用事って言ってある。あ、それと玲奈の事務所の件だけど、話して良いのかな?」


「うん。向こうでもう一人の天沢さんが聞いてるし、ここには記憶が残ってるから全然平気」


 そう言って頭を指差す。


「なんかそういう言い方すると、スッゲー便利に聞こえるな。あ、ゴメン」


 思わず感心しそうになる。

 しかし感心して良い事じゃないので、ちょっとバツが悪い。

 しかしボクっ娘は、小さく苦笑くらいしかしない。


「まあ、ボクとしては、互いを覗き見できない状態でのリバーシブルなら歓迎なんだけどね。たまにこっちに来たいし」


「向こうで体もう一つはともかく、こっちで二つってわけにもいかないもんね」


「向こうで二人だと、ショウがその内干からびちゃいそうだけどね」


「だよね。ショウ君は私の愛人でもあるし」


 そう言って軽くウィンクしてくる。

 それに対して、ボクっ娘が珍しくジト目状態になっている。


「トモエさん、それマジに思ってる?」


「マジだよ。ショウ君には、シズを助けてもらった感謝しかないし。勿論、レナやハルカにもね。あと、アクセルさんだっけ? あの人にも一度お礼に行かないと」


「オレは、みんなまとめて宴会でも開いて奢ってくれるくらいで十分ですよ」


「そう? まあ、レナやハルカに返せるものが当面なくて困ってるし、不公平も良くないかもね」


「ハルカさんは、今回の件でチャラって言うと思いますよ」


「おっ、流石分かり合ってるねぇ。レナ、負けちゃうぞ」


「良いよ負けで。ボクも、ハルカさんには恩があるし。それにボクが狙ってるのは二号さんだから」


「恩だったら、今返そうとしてるから、叶えばチャラなんじゃあ?」


「あー、それはそうなるのか。けど、ボクはそれで十分だよ」


「レナにしては弱気だね」


 いつの間にか、オレの件で恋バナっぽくなってて、しかも二人ともかなり真面目に話してる。

 思わず席をはずしたいと思うけど、二人の視線に止められてしまい、気まずくコーヒーを飲むくらいしか出来ない。


「あのねトモエさん、ボクの場合、さらにもう一人の天沢さんも居るんだよ。その上、現状だとポッと消えちゃうかもだし。今はそれ以上望めないんだよ」


「そっかー、ゴメンね。ショウ君も大変だね」


「そうでもないですよ。少なくとも消える心配ないって思ってますし」


「おっ、強気の発言。その根拠は?」


 トモエさんが何か面白いものを見つけたように、興味深げに見つめてくる。


「オレ、『夢』の関わることは、楽観主義になるって決めてるんです。でないと、奇跡なんて信じてられませんから」


「確かにそうだよね。でも、男だね。マジ惚れるかも」


「でしょ。偶にこういう所見せるんだよね、ショウは。その上、向こうだとあの強さだし」


 机に片膝をついて、そこに顔を乗せたレナが、「どうしてこうなのかなー」みたいな感じで見てくる。


「強さは関係ないだろ? それにオレが出来る事って、前に向かって進むか、剣を振り回す以外にないだけだって」


「その結果、今やオクシデント有数の剣士様だよ。ノヴァの頃に苦戦してた上級悪魔も、もはや敵じゃないって感じだったし」


「私より凄いよね。驚いた」


「トモエさんは、魔法のヴァリエーションの豊富さとか、オレにないもの一杯あるでしょ。贅沢ですよ」


「そうだよねー。でも、そういう事言っちゃダメだよショウ。トモエさんだって努力した結果なんだし」


「あー、魔法は私マジで努力してないんだ。細かいことは現地着いたら話せるけど、今はゴメンね」


 ボクっ娘の言葉に、トモエさんの苦笑交じりの言葉が続く。


「何か秘密があるんですね」


「それは着いてからのお楽しみ。これからの旅に秘密の一つや二つないと、面白くないでしょ」


 さも楽しそうにトモエさんが笑う。

 確かに、面白い事、楽しい事の一つや二つないと、やってられないかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ