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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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419 「待ち伏せ(2)」

 そうして準備が整い、しばらく待つ。

 こういう時間が一番焦らされる。


 そして夕日が後30分もあれば地平線へと沈む頃、駐屯地の周囲上空を哨戒飛行していた飛馬が何かを見つけ、そして魔法のマジックミサイルで落とされた。

 続いて、基地の外周にある見張り櫓の一つが攻撃を受けて火に包まれる。


 それを確認して、すぐに出られる場所で待機していたオレ達は、キューブを魔法の袋などから出して人型の姿を取らせる。


「クロ!」

「ミカン!」


「ハハッ!」

「呼んだ?」


「自分の身を守れ。絶対に捕まるな!」

「ミカンもね。それと、打ち合わせ通りあの辺りに立ってて」

「クロもよろしく!」


「畏まりました」

「分かった」


 短いやり取りで、二体が罠の餌の場所に移動する。

 それに合わせてオレとハルカさんも、二体をガードするイメージで場所を少し移動する。

 ボクっ娘と悠里は、ずっと相棒と待機していたので、すぐさま飛び上がる。

 そしてシズさんが、魔法の構築をすぐに開始。

 その頃にはアイが、クロとミカンの側にまで移動。

 その代わり、トモエさんがシズさんのガードと魔法構築の手伝いに入る。


 基地の『帝国』軍は、基地施設と使う予定の魔法陣の防衛に専念。非戦闘員も多いので、その人達はすぐさま退避する。


 そうしてお出迎えの準備が終わった頃に、基地のフェンスって感じの木の塀を破壊して、魔物の集団が突入してくる。

 目視した段階でそれ程強い魔力は感じないけど、見た目と動きから幾つか高い魔力を感じさせる。

 魔力の放射を抑える能力を持つか、アイテムを持っているのだ。


 数は30体程度。最低でもCランクの魔物。半数は下級以上の悪魔。空を飛ぶ魔物、人型以外の魔獣はいない。

 そしてその中に、とびきり強そうな魔力総量を持つ奴がいた。

 オレのイメージでは、魔の大樹海で戦ったゼノと同じくらいの強さだ。

 しかも全ての魔物が、見た目で装備がしっかりしてるのが分かる。


 そして魔物達が、目標であるオレ達に魔法を投射してくる。

 けど、遠距離攻撃できる第二列の魔法なら、すでに構築されていたハルカさんの魔法防御を簡単には突破できない。

 魔物の魔法を防いだのは、儀式魔法陣を用いた広域防御魔法の『防陣』で、基地の魔法陣の補助に加えて魔力マシマシで展開されているので、時間限定ながら生半可な攻撃は通じない。

 この魔法は、魔物の襲撃すぐにハルカさんが構築したものだ。


 そして遠距離攻撃が通用しないと見た魔物達が、一斉に速度を増して突撃してくる。

 目標はクロ達だ。

 やはり何らかの方法で、キューブの魔導器だと分かっているのだ。

 だから、オレとハルカさんは、クロ達の前に立ちはだかる動きを取る。


 そしてあまり動いていないオレ達を超えて、一つの魔力ギンギンな球体が急速に通過していく。

 その1秒ほど前、魔物が突撃する直前に「行け、『熱核陣』」と言う、死の宣告のように静かな言葉が後ろから小さく聞こえていたので、それが何かをオレ達は間違える事はない。

 防御魔法も、どちらかと言うとこれ対策だった。


 けど、目の前の魔物達にとっては、この魔法は初見だ。

 何しろ『ダブル』が生み出しはいいが、使える者が凄く少ないので殆ど実戦で使われた事がないという極悪魔法だ。

 それでも、魔力から危険だと考えてさらに近寄る速度を速めた悪魔もいたが、それは無駄な努力だった。


「防殻!」


 ハルカさんの言葉と次の防御魔法の発動に一瞬遅れて、儀式魔法陣で強化され、魔石を大量に使った『熱核陣』が盛大に炸裂する。

 ここが飛行場だから出来たので、普通の城や砦だったら建物ごと破壊するから、別の手段を考えないといけなかっただろう。


 そして今まででも最大規模、しかも破壊範囲ではなく破壊力自体を引き上げた爆発が、体感的には目の前で発生する。

 そして凄まじい轟音の後、中心部の鉄すら溶かす数千度の超高熱の熱気が上昇することで、ちょっとした規模のキノコ雲を形成する。

 しかしそれを拝むには、少し離れた場所にいるか、爆風の影響を受けない状態でないといけないだろう。


 オレ達はハルカさんの防陣と防殻で守られているが、効果範囲の周囲は爆風が吹き荒れて、一瞬何も見えなくなる。

 けど、オレとハルカさんに油断はない。

 当然だけど、これで敵が一撃で全て吹き飛んだとは考えていない。

 ゼノに匹敵すると見られる奴は、確実に生き延びていると言う確信があったからだ。


 そして今回の「お出迎え」では、悪魔ゼノと同程度の魔物を想定して作戦を立ててある。

 だから戦闘姿勢を崩さないし、「やったか!」などという妙なフラグを立てるセリフもない。


 そしてすぐにも、作戦の第二撃が上空から見舞われる。

 爆風の中に、上空から悠里の操るライムが低空まで一気に突撃し、魔物が居た辺り一帯に広域の雷撃咆哮ライトニングブレスを、最大威力で叩き込む。


 ハルカさんも、自身の周りに次々と魔法陣を構築していく。もはや見慣れた『光槍陣』だ。

 自動命中ではないが、脅威度の高い魔力への向かう性質の魔法なので、脅威が残ってる間に可能なかぎり早く叩き込む積りなのだ。

 しかも、向こうも視界不良だろうから、避けるのはさらに難しい筈だ。

 後ろでも、シズさんとトモエさんが、長距離攻撃魔法の準備に入ってる。構築されてる魔法陣からして痛そうだ。


 そして完全に『熱核陣』の爆風が収まりきる前に、次々と魔法が投射されていく。

 光の槍、炎の槍、レーザービームっぽい電光。

 それぞれ魔力を感じる場所に突き刺さっていく。

 それにより、爆発前に感じてた魔力も随分どころか、ほとんど感じなくなる。


 そしてトドメとばかりに、戦闘開始からひたすら上空に急上昇してたヴァイスとボクっ娘が、超音速で急降下してさらなる破壊を撒き散らす。

 『ソニックボム』ほどではないけど、ピンポイントで全てを圧殺する『ソニックバスター』。

 スライム化した時のゼノとの戦いでも使った技だ。


 そして最後にオレが、残る魔力に向けて突撃する。

 まともに残っている数は殆どないし、残っていても倒れているか反応が大きく下がってるのが殆どなので、攻撃相手も絞りやすい。


 「ガキッ!」と、オレの愛刀が何かに激突する。

 攻撃してきた魔物のボス、恐らくSランクかSランクオーバーの上級悪魔、ゼノに匹敵する魔将デーモンロードだ。

 オレの剣を受け止めたと言う事は、装備も良いらしい。


 けど、爆風が晴れた先にいたのは、鎧などがボロボロに崩れ、肉体も半壊したダークエルフっぽい悪魔の姿だった。

 イメージとしてはゼノに近いけど、少なくとも今の段階ではグロさがかなり際立っている。

 元々なのか、肌が髪に合わせて青い。


「お、おのれ、謀ったな!」


「獲物を待ち伏せしただけだよ! ここまで簡単に喰いついてくれるとは思ってなかったがな! このマヌケ野郎!」


「クソッ!」


 そういって、相変わらずおしゃべりから始める悪魔に、蹴りを一発見舞ってやる。

 オレの剣を止めるのがやっとだった悪魔は、それで無様に倒れこむ。

 流石に弱っているらしい。

 そうしてここで見下ろして蔑んだ一言で浴びせてやればオレも立派な三下野郎だけど、オレは三下でもないし油断もしてないので、愛刀で猛ラッシュを加える。


 周りには、なんとか自己再生しようとうごめいている上級悪魔2体くらいしか脅威はない。

 他は、すでに魔石になった魔物、スライムには状態なれず、自己再生もままならない下級悪魔だけだ。


 そしてのたうっている上級悪魔2体は、すぐにもオレの仲間達が追い討ちをかける。

 そしてその間、オレはまだ名前も聞いてない魔将を、自己再生が暴走するであろう段階まで斬り続けた。


 これで第二弾、ゼノのようにスライム化が本格化する前に、さらに強い魔法の打撃を与え、出来れば核を露出させ、それを叩き壊す段取りだ。

 後ろでは、既にシズさんとトモエさん、それにハルカさんが、次の魔法の準備に入ってる。

 ライムもブレスの放射準備中で、ボクっ娘は上空のヴァイスの上で痛そうな矢の魔力をチャージ中だ。

 これだけ思い通りに戦いが進んでいるので慢心してしまいそうだけど、核を砕くか不活性にするまで手を止めるつもりはない。


 けど、第二次攻撃の開始寸前、後ろから悲鳴が聞こえた。


「ハルカ!」


 シズさんとトモエさんがハモる。

 そして何事かと一瞬後ろを向くと、何故かハルカさんが倒れていた。意識も失ってるように見える。

 けどハルカさんの周りに敵はいない。魔法や弓矢などが飛んできた気配もない。

 それ以前に、オレの前の魔将以外に動ける敵も魔物も見当たらない。

 何が起きたのか分からない得体の知れない焦りがオレを駆け抜ける。

 けれど、それが油断となった。


 強い衝撃を受けて、オレは吹き飛ばされた。

 とっさに愛刀をかざしたので致命傷はないけど、かなり大きく体を傷つけられた。


「覚えておけ! その神器は、またいずれ頂戴しに来る!」


 オレを切った当人、いや魔将は、それだけ言うや脱兎のごとく逃走を開始。

 一瞬遅れてだけど、オレ同様にハルカさんに気を取られていた悠里とボクっ娘が、ブレスと弓矢で追撃するけど、弓矢は再生途上の上級悪魔が盾となって止められ、ブレスは直撃を回避された。


 そしてその場には、何故か倒れて意識不明となったハルカさんと、呆然とするオレ達が残された。


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