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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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410 「茶番の真相(1)」

「敵を欺くにはまず味方から、ねえ……」


 魔物との戦いが終わった側で、ようやく全員が集合した。

 当然とばかりに、トモエさんも側にいる。

 周りでは『帝国』の騎士や兵士が、戦場の後片付けをしている。

 オレ達は部外者的な立ち位置なのと、つい先ほどのハルカさんの儀式魔法による負傷者の一斉治癒をした事で下にも置かない扱いだ。


 それに加えて、魔物が駆る竜騎兵8騎をあっという間に倒した上に、上級悪魔2体もオレ達が倒したので相当驚かれた。

 態度も半ばドン引きって感じだ。

 けれど、前線で戦える凄腕の魔法職がいない、もしくは少な過ぎる事の方が、この世界の軍隊は魔物に対して戦力的にアンバランスなんだと実感させられた。

 逆に言えば、最初からある程度強い『ダブル』の魔法職が、それだけ珍しいのだろう。



 それでも『帝国』軍と魔物との戦闘は、負傷者こそ多数出すも戦死者は意外に少なかった。

 三剣士のカーンも、その名に恥じぬ働きという奴で悪魔を2体ばかり仕留めたらしい。

 けど仕留めたのは下級悪魔止まりだ。


 あの場にいた上級悪魔2体は、踏みとどまった1体をトモエさんが二人のサポートを受けながら仕留め、残り1体はその場から逃げ出しオレと鉢合わせしたやつだった。

 単に逃げたのではなく、どこかに情報を持ち帰ろうとしたのだろうとは、ゴード将軍の推測だ。


 そして戦い終わって負傷者を数え上げると、『帝国』の連れてきた治癒術師と神殿の神官では全然追いつかない有様だった。

 魔物が相当強かったのもあるけど、『帝国』のセクショナリズムのせい、デカイ組織の弊害のせいだ。

 苦労するのはいつも下っ端や現場というのは、どの世界でも変わらないらしい。


 けれど、呆れてばかりもいられないのがハルカさんで、オレ達を集めて魔法構築の補助や魔力タンク役として、一気に数十名を治癒してしまった。

 危ない人もいたのでフルパワー状態で、魔法発動時に聖人特有の「キラキラ」が出るのも気にせずに魔法を使った。

 短期間でまた魔力が増えたせいで、徐々に開き直りつつある気がする。


 けど、意外に何も言われる事はなく、言われたのは感謝の言葉だけだった。

 そして今は、簡易の天幕で仲間だけで休憩中だ。

 魔力を大量に使ったハルカさんなどは、魔力と脳の糖分補給の高級チョコで心身共に癒してすらいる。



「私達も、早朝に合流したゴード将軍の配下から話を聞いた時は疑ったよ」


「そりゃそうですよね。けど、『帝国』兵とガチで戦わずに済んで良かったですよ」


「もう、包囲網に突撃する寸前だったもんね」


「トモエじゃあ、ショウの手綱を握るのは無理か」


「私がシズに握ってもらわないとダメなくらいだからね」


 そう言って、トモエさんがシズさんにもたれかかる。


「まあ、結果オーライって事で。それで、一通り聞いてもいいですか?」


「勿論。と言っても、要するに私達が保有する神々に繋がる魔導器、つまりキューブの争奪戦が今回の騒動の原因だ」


「『帝国』の急進派と、オツムの良い邪神大陸の悪魔達の両方が、神々の塔へと入る為にキューブを探してるんだってさー」


 今度はボクっ娘が、言いながら常磐姉妹にもたれかかる。

 そしてシズさんがボクっ娘を抱え込む。

 ほんとこの人たちは、抱き合うのが好きだ。


「しかも『帝国』では、一つは聖女となっているが、それを知る者はごく一部だ。魔導師協会のものも知っているのはごく僅かな上に、魔導師協会の『帝国』本部は帝宮並みかそれ以上の厳重な警備ぶりだ。

 そこに、のこのこと私達が来たというわけだ」


 そこでオレは手を上げる。

 そしてシズさんが、すぐに察してくれた。


「ウルズでの件の事を、どこかで嗅ぎつけたんだろ」


「あの時の『帝国』の探し物って、やっぱりクロ、というかキューブだったんですね」


「探し物の一つ、だな。もっとも『帝国』は、キューブ状ではなく球体スフィアだと考えていたようだ。

 何しろ、今世界中で『ダブル』を出現させて回っている上に、目撃情報はそっちの方が多いからな」


「それは初耳です」


「そりゃそーだよ。『帝国』がこっそり調べて隠してた事なんだから。と言っても、ゲットした事はないみたいだけどね」


「手に入れていたとしても1つか2つ、そして少数では神々の塔には入れない。それが恐らく連中の結論だろう。

 で、この話は、ゴード将軍の穏健派も神殿もしくは聖女二グラスも知らない話だった、という事になる」


「悪魔も知らなかった?」


「知ってたのは、キューブの方みたいね。邪神大陸を全体を根城にしているから、もしかしたら保有しているかもしれないって、ゴード将軍達は睨んでいるわ」


「で、キューブを探し求めに『帝国』に魔物どもがやって来てたのを察知したから、一芝居打ったと? けど、悪魔相手なら茶番で良いんでは?」


 オレの言葉にシズさんが少し難しい顔をする。

 ハルカさんも似たような表情だ。

 ボクっ娘は、両手を上に向けてお手上げポーズをする。


「『帝国』も、邪神大陸の魔物には何度も煮え湯を飲まされているそうなんだけど、やって来る悪魔には魔力持ちの感情を魔力で朧げに察知する能力もしくは魔導器があると踏んでるのよ」


「私は半信半疑だがな。単なる情報漏洩だろう。魔物相手でも、金品や物品を提示されたら、情報を売り渡すくらいのクズはどこにでもいるからな」


 その通りだ。ハーケンでもランバルトでも現にいた。しかも片方は、オレ達と同じ『ダブル』だ。


「ちょっと胡散臭いよねー」


「少なくとも『帝国』はそう考えているから、欺く為にも本気で逃避行と追跡をしてもらわないとダメだったのよ。現に誘い出せたわけだし」


「いい迷惑だよなー。おかげで2日もライムに会えなかったし」


 こういう時には特に話さない悠里も、ご立腹ではあるらしい。

 まあ、ちょっとした気分転換には悠里のようなコメントも貴重だ。

 

「で、早朝に魔物が本格的に動き出したので、そっちでネタバレがあったと?」


「そうだ。恐らくだが、捜索隊がショウとトモエを追い詰める算段がついたのを見計らって、漁夫の利を得ようと魔物どもが動き出したんだろう」


「ただ、ゴード将軍は二人の正確な場所を知らないから、本当は最後まで偽るつもりを変更して、先に私達に話してくれたのよ。

 万が一大立ち回りになったら、魔物と戦う前に『帝国』軍の追跡隊の大損害は予測できたでしょ。それに二人に万が一があったら、特にショウ何かあれば、私に謝るくらいじゃ済まないって考えて下さったのよ」


「それにゴード将軍は、私達が『ダブル』だけが持つ秘術で、相手の居場所を正確に知っているんじゃないか、という読みもあったそうだ。

 『ダブル』が向こうで情報交換する事ができるのを、この世界の住人でも知っている場合があるという事だな」


「だから空から先行して、何とか間に合ったってわけだね。地形とか細かく聞いてて助かったよ」


「そういや、向こうの玲奈とも電話で長話したなあ」


 オレの言葉にみんなが苦笑ぎみだ。

 しかしトモエさんは別だった。

 オレの言葉にハッとしたようになって、そのままハルカさんに視線を注ぐ。

 何かを思い出そうとしている感じだ。


「トモエ、どうした?」


 やはり姉妹だ。シズさんの方が、オレより早くトモエさんの様子に気づいていた。


「うん、さっきからずっと引っかかってて、やっと思い出したことがあるんだ。ハルカさん、苗字は山科じゃないですか?」


 トモエさんの何気ない言葉に、ハルカさんがビクッと見た目で分かるくらいに驚き、そしてトモエさんに全神経を集中するように視線を注ぐ。

 そして少しの間見つめ合うが、ハルカさんの顔は疑問形な感じだ。


「私、トモエさんに会った事はなないわよ、ね?」


「うん。私も初対面です。シズからも何も。でも、写真で見た事あるんです。さっきまでデジャブか他人の空似と思ってたんだけど、向こうって言葉でピンと来て。私、○○高校の2年です」


 何だか先輩後輩な感じのトモエさんの言葉で、ハルカさんの表情が納得顔になる。


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