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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第3部

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271「樹海炎上(1)」

 オレ達が博士の屋敷に移動してから2日後の早朝、それぞれの陣営が行動を開始した。

 主戦線では、攻撃体制を完全なものとしたノヴァの軍隊が、早朝より総攻撃を開始していた。


 一方、一旦は樹海のかなり深くまで後退した魔物の軍勢は、昨日の時点で再編成していたところをノヴァの空軍に半ば嫌がらせの攻撃をされていた。

 さらに昨日の朝から、ノヴァの樹海を開拓する作業ゴーレムの群れが森林の破壊を大規模に再開したので、焦らされる形で残存戦力を集めて防戦に出た。

 このゴーレムによる開拓、彼らからすれば世界の破壊を止めるのが魔物の一番の目的だから、引き下がるわけにはいかなかった。


 けど戦力差は、すでに歴然としていた。

 再開された戦闘では、魔物達は樹海という地の利を生かして防戦に努めているが、『ダブル』は 戦列を組まない少数パーティーでの樹海での戦いには慣れている。

 その上魔物は制空権もないので、空からも叩かれている。

 10騎もの疾風の騎士は、もはや空の暴力だ。


 しかもノヴァの軍の『ダブル』の中には、Aランクが多数含まれている上に、何名かのSランクまでいる。

 そうした強者が多数いては、魔物を各所で統率している数の限られた下級悪魔程度では太刀打ちできない。


 高ランクを相手にするには、最低でも複数の下級悪魔が連携して戦わないといけないが、下級悪魔がそんなに沢山いるとも思えない。

 それに戦いで連携しているのは『ダブル』の方なので、その差はさらに開く。


 そして結果としての戦闘は、ノヴァの側の一方的展開だった。本来、ノヴァの軍が想定していた状態だ。

 Bランクの『ダブル』でも、チームもしくはパーティーを組めば、十分に安全マージンを取った上で下級悪魔1体を倒すことができたと言う。

 他の魔物の群れについては言うまでもない。


 飛行する各種の魔物や地龍、3メートルを超える巨人サイズの魔物など一部例外もいるが、そう言った類いは例外だし、大きい魔物は既に殆どが倒されていた。

 しかも樹海に普通の人も動物はいないので、『ダブル』が嫌いなアンデッドもいない。


 そして訓練の行き届いているノヴァの市民軍が戦線を形成し、『ダブル』が各所で戦線を補強する形で戦闘を圧倒的優位に展開していく。。

 矮鬼ゴブリンなど下級の魔物を数の上での主力としていた魔物の軍勢は、対抗不可能だった。


 問題はBランクもしくはそれ以上の能力を持つ悪魔だけど、作戦会議で聞いた限りでは『ダブル』を中心にした精鋭で当たるので問題もない筈だ。

 何しろその精鋭は、Sランクも含まれている。きっと、オレ達より強い人も居る事だろう。



 その間現実では、妹様が大きな戦闘を前に少し興奮気味なので、オレは落ち着かせる事ばかりしていた。

 オレの部屋でゴロゴロするのは、ここ数日の日課と化している。


 それよりも、初めてのバイト代が入金されるので、28日に玲奈とのデートの予定だ。

 ここ数日、勉強とバイトばかりで玲奈ともあまり話せてないし、思いっきり羽を伸ばしたいところだ。


 一方タクミの前兆夢の方は、『夢』が少しずつリアリティが増しているとの事なので、さっさとノヴァでの面倒ごとを解決してハーケンなりに戻りたいところだ。


 だからこそ、今日の作戦は是非とも成功させたい。




「じゃあ、こっちも作戦を開始しましょう」


「「おおっ!」」


 早朝、まずは2騎ずつ合計4騎の竜騎兵が飛び立ち、各方面の偵察へと向かう。

 その間、残り全員が合流ポイント目指して移動を開始する。

 レイ博士とスミレさんも一緒だ。偵察は後ろ1人ずつしか偵察員を乗せていないのと、昨日買い込んだ荷物もあるので、移動の方は二回に分けて目的地に向かう。


 各竜騎兵は人以外のかなりの荷物も抱えているので、この状態を襲われたらかなりヤバい。

 しかし敵、少なくとも空を飛ぶ魔物が居ないのは確認済みなので、念の為の警戒だけしつつ集合ポイントへと向かう。


 そして予め決めていた集合ポイントに到着すると、すでに昨日送り出したロボットっぽいゴーレム12体が、きちんと到着していた。

 道中に魔物や魔物化した動物と戦った形跡がかなりあったが、ほぼ無傷だ。

 それだけ強いという事なのだろう。


 そして遊ばせておくのも何なので、博士に頼んでゴーレム達に集合ポイントの木々を倒してもらい、見晴らしをよくしてもらう事にする。

 ゴーレム達のパワーと頑丈さはちょっとした重機並みなので、澱んだ魔力で歪んでいるが案外ひ弱な樹木を見る見るなぎ倒していく。


 そしてゴーレム達が働く集合ポイントに、偵察を終えた竜騎兵達が戻ってくる。

 偵察先は、戦場外縁と攻撃予定地点。結果は、どちらも想定の範囲内だった。

 全員にうなずくと、早速作戦開始を命じる。


 大きく手を上げて振り下ろすだけだけど、それで一斉に動き始める。

 ボクっ娘は「じゃあ、ちょっと待っててねー!」と、いつも通りなので少し拍子抜けするが、自身とみんなの緊張を解すためだろう。多分。


 そしてボクっ娘が飛び立ったように、目立つのはヴァイスで、一気に空高く上昇していく。

 作戦ポイントに向かうのだけど、どうしても別行動を取る必要があったからだ。


 そして竜騎兵達は、集合ポイントを離れて最初の作戦ポイント外周上空でしばらく待機。周囲及び地表に注意すべき魔物がいないかだけを警戒する。

 地上にいるオレ達も、最初の作戦ポイントに向けて移動する。


 そうして10分ほど経過すると、白い影が物凄い速さで急降下してきた。

 十分に距離を取っていたのに、その白い影が通過した後で物凄い爆音と暴風が押し寄せる。

 そしてその後には、地表の大樹海に一文字の切れ目が出来上がる。

 音速爆撃ソニックボミングだ。


 音速爆撃は僅か3秒程度だけど、博士の屋敷にあった魔石かなり抱えていったが、ボクっ娘一人ではその後の戦闘も考えると、このくらいが限界だそうだ。

 しかし地表には、十分な森の裂け目が作られた。


 3キロメートルほどの直線で、ヴァイスが通過した直下の幅2、30メートルの木々がひしゃげるように押し潰された。

 さらにその周囲数十メートルの木々が、裂け目と逆方向に倒される。

 さらにその数十メートルにわたっても、幹ごと倒れたり多くの枝が払われている。


 結果、100メートル×3000メートルほどの空間が、大樹海の真ん中にポッカリと出現した。

 なんだか、森の中に滑走路でも出来たみたいだ。


 そしてその中心辺りに、次々に竜騎兵達が降り立って、背に乗っていた獣人達を降ろす。

 そして素早く降り立った獣人達は、周辺警戒のために数名ずつチームを組んで散開していく。


 裂け目の中心には、シズさんとオレ達、レイ博士、それに治癒魔法が使えるラルドさんも降りる。

 しかもオレ達の手持ち以外にも、ボクっ娘が持って行った以上の博士の屋敷にあった魔石を持てるだけ持っている。


 そこに一仕事終えたボクっ娘も降り立ってくるが、ヴァイスはしばらく待機だ。

 ここは魔の大樹海の奥地なので魔力の濃度が高く、高ランクの魔物にとっては魔力の回復にもちょうどいい。


 けど、竜騎兵たちの仕事はまだある。

 半数の竜騎兵が持ってきた荷物を、破壊された森林の際のあたりにばら撒いていく。

 撒かれているのはノヴァで買えるけ買ってきた様々な油で、中には可燃性を高める魔力が溶け混んでいるものもあった。


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