41話 到着
それから俺たち3人は電車に乗り、コミケ会場に向けて出発した。
「これが電車ですか。走った方が速そうですね」
「うん、そうだね」
「えっと、2人は何を言っているの......?」
みーさんは何が何だかわからなそうだ。
ちゃんと異世界について説明してあげようか。
ただし、前世については伏せる。
俺が元男だなんてバレたら大変だからね。
そして、説明するにあたって、周りの人たちの注意が俺たちの会話に向かないようにユーリアに思考誘導魔法をしてもらった。魔法ってすごい。
ーーーーーーーーーー
「じゃあ、麻衣ちゃんとはどういう関係なの?」
「麻衣は私の居候先の家の子だね」
俺は異世界出身で、偶然この世界に来て高橋家に居候してる吸血鬼ってことにした。居候の代わりに毎日洗浄魔法を使っているとすれば、ただの穀潰しにはならないはず。
「なるほど......」
服部とは長い付き合いって言っちゃってるから、服部と知り合った7年前は既に日本にいたことになるので、8年前に日本に来て高橋家に拾われたということにしておく。
このことは後で妹にも話して口裏合わせをしておこう。
こうして、みーさんに異世界のことを説明したり、ユーリアにこの世界の常識を教えたりしていたらどんどん時間は過ぎていき、いつの間にか会場の最寄り駅に到着していた。
駅を降りたら人の流れに乗って歩いていき、しばらくするとついに会場が見えた。
逆さになった四角錐が4つ繋がったあの建物だ。
「な、なんですかあれ!?それに人がこんなに......どこかのお城でしょうか?」
確かに、異世界の人間があれを見たらそうなるよね。
俺も想像以上の壮観に呆気にとられていたけど、ユーリアの反応を見てなんか逆に落ち着いてきた。
記念にあの建物を撮影して、早いところ服部たちと合流しようか。
ーーーーーーーーーー
「お、来たか」
「こんにちは」
服部たち男グループは既に4人全員集まっていたようだ。
「えっスノウちゃん!?みーさん!?」
「なんでここに!?」
「まさかHTRさんが呼んでた知り合いって......」
おや?もしかして俺たちが来ることは教えてなかったのかな?
服部も粋なことをするね。
「はい、この子らですね。ただ、俺も初めて見る子が1人いるんですけど......」
ユーリアに視線を飛ばす服部。
「初めまして、ユーリアといいます。スノウさんの知り合いです」
「ああ、君が」
「来る途中にばったり会ったので、連れてきちゃいました。よかったですか?」
俺がそう言うと、服部は男グループの方に振り返り、返事を促した。
「そりゃもう美少女が増えるとか大歓迎!」
「女の子とオフ会......」
「俺、HTRさんと仲良くてよかったよ」
3人ともOKのようだ。
確かに、美少女は多ければ多いほどいいよね。
「ありがとうございます」
と言って微笑むと、3人は俺を見て呆然としていた。
「ああそうだ、初対面の人もいるでしょうし、自己紹介しましょうか。俺もユーリアちゃんとは初めましてだな。HTRです、スノウちゃんとは友達だね。よろしく」
服部に続いて、男たちは順番に自己紹介をしていった。
「ヨウジです!ちなみにスノウちゃん推しです。よろしく!」
「マッチです!みーさん推しです」
「おはしです。俺もスノウちゃんかな」
えぇ、自己紹介で言うことそれなの?
てかなんかみんな木の棒っぽい名前だな。
というか、この人たちの名前にはなんか聞き覚えがあるな。
「皆さん、私の超乱闘募集に来たことありますよね?」
「う、うん、覚えてくれてたの?」
「はい、皆さんとても強かったので」
「まじか......幸せで死にそう」
どうやら全員前に俺と戦ったことがある人だったようだ。そして全部俺が負けている。さすが服部の知り合いってことか。
一通り挨拶を終わらせたので俺たち女子グループはさっそくコスプレ衣装に着替えることにし、男たちと一旦別れてコスプレイヤー用の女子更衣室に向かった。
でも更衣室は入場料が要るのでユーリアは外で待ってもらう。
かなり人がいる中で女の子1人置いてくことになるけど......まあユーリアなら大丈夫かな。
ーーーーーーーーーー
「スノウちゃん、顔赤いよ?大丈夫?」
コスプレ衣装に着替え、さっそく更衣室を出ようとしたところでみーさんにそんなことを言われるが、原因はまさにこの子だ。
まさか俺の目の前であんな無防備に服を脱ぐとは思わなかったよ......
「だ、大丈夫」
「そう?ならいいんだけど」
俺は気を確かに持って煩悩を殺し、さっきユーリアに教えてもらった日光対策魔法を発動したら、更衣室を出た。
「......あれ?スノウちゃん、日光は?」
「日光が当たらなくなる魔法をユーリアに教えてもらったんだよ」
「そうなんだ!じゃあ、外でも普通に過ごせるね!」
「うん」
そのユーリアは、更衣室を出たところで物珍しそうにキョロキョロしながら待っていた。
「ユーリア、おまたせ」
「はい。......その格好は?」
「コスプレっていって、物語とかの人物の格好を真似する文化だよ」
俺たちはなかなかいい感じに超乱闘のキャラクターに扮することができている。
俺は竜女のコスプレということで、女白騎士っぽい感じで金色のギザギザの剣を持っている。まあ剣はただの紙だけど。
一方みーさんはモンスター使いの少女のコスプレなので、水色の袖なし服と赤いミニスカ、白帽子をつけている。
黄色のショルダーバッグとずっと右手に持っている赤白のボールがキュートで、コスプレ関係なしにかなり似合っていると思う。
布面積は少なめだが今日はかなり暑いのでちょうどよかったな。ちなみに、俺は日光をカットしてるので全然暑くない。
「コスプレ......日本にはそんなのがあるんですね」
「うん、来るとわかってれば、ユーリアのも用意したんだけど」
まあ、ユーリアは黒いローブ姿なので、魔女っ子のコスプレに見えなくもないかな。
「ユーリアちゃんは、エルフ女王とか合いそうだね!」
確かにユーリアはエルフ女王と同じ金髪碧眼だからね。
「ふむ、ちょっとそのエルフ女王ってのを見せてもらえますか?」
「え?うん」
俺はスマホでエルフ女王の画像を検索し、ユーリアに見せた。
「なるほど......ここが、こうで......こっちは......」
「な、何してるの......?」
「できました」
できましたって、何が?
なんて思っていると、次の瞬間、周りの人が全員同時に向こうの方を向いたかと思えば、ユーリアの服が一瞬で変わった。
「は?」「へ?」
「ちょっと私には派手ですかね......」
ユーリアは少し恥ずかしそうにそう言って、突然現れた白いドレスのスカートを両手でつまみ上げた。
......この子って何でもできるのかな?
「ユーリアちゃんがエルフ女王になった!!」
ユーリアは白いドレスにピンクの前掛けとたくさんの金の装飾をつけていて、ちょっと胸が大きいけど完璧にエルフ女王の格好になっていた。
ご丁寧にエルフ耳まで再現している。
めっちゃかわいいんだけど、どうなってんだこの子。
「幻影......?」
「いえ、耳は幻影ですが、服は本物ですよ」
まじか。
ちょっと画像を見ただけで完璧に衣装を作れるとか、頑張って作った俺達は涙目だ。まあ作るのも楽しかったからいいんだけどね。
こうして超乱闘のキャラとなった俺たちは、服部たちの待つコスプレエリアへと向かった。




