39話 今回もお世話になります
気絶したライトくんを小脇に抱えて依頼主のお姉さんの家まで戻り、元のローブに着替えた。
「セツナさん、今日はありがとうございました」
「いえ、スーツをボロボロにしてしまってすみません」
「構いません、あれは元々差し上げるつもりでしたので。あ、依頼完了の手続きはこちらでしておきますね」
「ありがとうございます」
それは助かるね。あまり遅くなると家族に心配されるかもしれないし。
「セツナさん、報酬の件ですが、私は大したことはしていませんし、やっぱりお金でお支払いします」
「いえ、血を頂くだけで本当に助かってますから、本当にいいですよ」
「で、でも......」
「ではこうしましょう。私はできれば人間の世界で暮らしていきたいので、私の正体のことは秘密にして頂きたいんです。報酬のお金はそのための口止め料ということで」
「っ............わ、わかりました」
どうやら納得してもらえたようだ。
顔を見られただけで吸血鬼だ!なんて言われるようになったらたまったもんじゃないからね。報酬の白金貨1枚はだいぶ高額ではあるけど、俺は異世界ではお金に困らないし、暮らしやすさのために使う価値は十分にある。
「......私、吸血鬼のことを誤解していたかもしれません」
「それは誤解じゃないです。吸血鬼には気をつけてください」
「えぇ......?」
こうして依頼主のお姉さんと別れた俺は、異世界へのもう1つの用を済ませることにした。
ーーーーーーーーーー
見ーつけた。
「やっほー」
「......何ですか」
魔術大好き、ユーリアちゃんだ。
今回もお世話になります。
「ちょっと聞きたい魔法があるの」
「何か困り事でも?」
「うん、幻影魔法で髪と目の色を変えられたのはよかったんだけど、ナンパされちゃって......何か、ナンパにいい魔法はない?」
1つ目はこれだ。
赤金チャラーズにナンパされた時はうまく撃退できたけど、次もそううまくいくとは限らない。
「ナンパなら、思考誘導の魔法がいいです。魔法陣はこんな感じですね。対象から自分への興味を一時的に失わせます」
思考誘導......なかなかヤバそうな単語が出てきたね。
興味を失わせるって。
それだったらストーカーされちゃった時も使えそうかな。
俺が最初にユーリアを見つけた時も、もしこれを使われてれば俺は地球に帰れなかったかもしれないね。
俺はユーリアが展開していた魔法陣を覚えた。
「そして、あともう1つあるんだけど......」
2つ目は、日光への対策だ。
透明化の魔法では可視光を消したら体の被害が少なくなったが、赤外線と紫外線も消せばそれが完全になくなるはずである。
そして、全ての光を消した状態でも周りから見えるようにできれば、日光の問題は解決できたと言っても過言ではない。
このことを聞いてみた。
「透明化の魔法なら、こうすれば光が全て消えますよ。することが増えるので魔力消費は多くなりますが」
おお!
赤外線と紫外線についてはちゃんと伝わったようだ。
これで透明化している時は目以外日光の心配をする必要がなくなった。かなり移動がしやすくなるね。
「それで、光を消すけど周りから見えるようにするのは......うーん、難しいですね。でも理論上は、できる、かもしれません......?考えてみます」
「そう......ありがとう!」
さすがに難しいか。
俺の幻影を纏う魔法を作ってもらうのもありだと思うけど、あれ服装の自由が利かないんだよね......
でももし光を消しながら自分が周りに見えるようにできれば昼でも外に出放題である。
気長に待ってみよう。
「そういえば、ユーリアは科学の勉強は進んだの?」
「はい、今『物理基礎』って本を読んでます」
「え?」
それ高校の教科書やんけ!?
どういうスピードだよ!
国語やら数学やらいろいろ教科書あげた時からせいぜい2ヶ月半だよね!?
この人どうなってるの!
ってことは、もう日本語も使えるのか......?
『原子番号の8番は?』
『え?酸素、ですよね?』
日本語で質問したら日本語で返ってきた。
まじか。
発音はちょっと異世界語由来の訛りがある気がするけど。
さすが、恐れ入るね。
それから少し話をしたら、もう異世界への用は済んだので地球に戻ることにした。
ユーリアはどうやらこの前あげた寿司を気に入ってくれたようで、寿司を作る魔道具を作ってしまったようだ。食べ物も魔法で作るってこの子チートすぎないかな?
「じゃあ、そろそろ帰るわね」
「......!」
そう言うと、突然何かに気づいたように首元を庇って後ろに飛び退くユーリア。
......吸われると思ったのかな。
「今回は別の人から吸ったから大丈夫よ」
「えっ、い、いったい誰が犠牲に......」
「じゃあ、ばいばーい。今日はありがとね」
「え、ええ......」
ということで、俺は転移魔法を使って家の前まで転移した。
日本は夜になっていた。
「ただいまー」
「おかえりお兄!どこ行ってたの?」
今日も妹が玄関まで来て迎えてくれた。かわいい。
「ちょっと異世界まで撮影にね」
「異世界!?見たい!」
「え」
どうしよう。
今日のは結構もろに見えちゃってるし、さすがに恥ずか......いや、妹にはパンツ姿で体のいろんなところのサイズを測られたこともあったな。別にいっか。
俺は妹に動画を見せた。
「わっ!何これ!?」
「イカの魔物だね。触手責めの動画を撮りに行ったんだよ」
「あっ、あっ、痛そう......」
水面にすごい勢いで叩きつけられる俺。
するとカメラがあらぬ方向を向き、依頼主のお姉さんの心配する声が入った。
少しして撮影が再開されると体中を触手に巻き付かれる俺の姿が映った。
「わ、えっ、えっ!?」
「なかなかいい感じでしょ?」
「こ、これを投稿するの?服が......」
「いや、一瞬くらい触手でいい感じに隠れると思うから、そこを写真にして投稿するよ」
「な、るほど......?」
こうして見ると結構大変なことされてたね。
というか、がんばって堪えてたつもりだったのになんか思ったよりエロい顔しているな。
「そうだ妹よ、異世界行っちゃったから血を吸わせてくれない?」
「あ、そっか......う、うん。いいよ」
それから妹の部屋に行って、血を吸わせてもらった。
『イカに触手責めされました』
3000リオワータ 2.3万フェバ
コメント:
『すげえ』
『服が......w』
『えっっっっっっ』
『表情がグッド』




