6.
「これ……痣……よね……」
茉理のメイクを落として現れた痣だらけの顔を見て美玖が呆然となる。
「殴られたり叩かれた痕……だね……」
祐樹もその痣を見て絞り出すように声を出す。
「やっぱり、DVにあっているんじゃ……」
「やっぱり?」
美玖の言葉に祐樹がそう声を出す。
「えぇ……。茉理とその旦那さんが今も一緒にいるかどうかは分からないのだけど、私と茉理が会っていた頃、茉理、鼻の上に痣を作ったことがあったのよ……。私が「どうしたの?」って聞いたら「転んだだけ」って返ってきたのだけど、転んでついた痣にしては変な場所にあるなって思ったの……。それで、「もしかして暴力を振るわれているんじゃないの?」って聞いたんだけど、何も答えなくて……。その後で、茉理の旦那さんが私たちを会わせないように茉理を連れて遠くに引っ越ししていったのよ……」
美玖がそう言葉を綴る。
「でも、遠くに引っ越したのだとしたら、なぜここに……?」
「茉理だけ、実家に戻ってきたとか……そういう事なのかしらね?」
祐樹の言葉に美玖がそう返事をする。しかし、美玖は茉理が実家に戻っているとしたら、それも一つの疑問がある。
茉理があれだけ嫌がっている母親の元に帰るとは考えられないからだった。
「……とりあえず、今は彼女が目を覚ますのを待とう」
祐樹の言葉に美玖が頷き、今は茉理が目を覚ますのを待つことにした。
「……電話……ですか?」
奏が茉理の勤めていた会社にお邪魔して、上司だという町田から茉理の旦那からクレームのような電話がよくかかってくることを聞く。
あの後、奏たちは茉理が務めている会社に出向くことになり、こうしてやって来たのだが、聞き込みは基本タブーと言われているので、透たちは外で待機して、奏が茉理の友達を装い、聞き込みをすることになった。今日は会社が休みということだったが、運よく町田が会社で片づけなくてはいけない仕事があったので、休日出勤をしていた。なので、他の社員はいないこともあり、町田は奏を職場に通して話をしてくれた。
「あぁ……。そういった類の電話が良く岸田さんの旦那さんからよく掛かってきていてね。こちらも困っているという話をしたばかりなんだよ。それに、旦那さんから暴力を受けているんじゃないかということも会社では噂されていてね。岸田さんは仕事に関してとても真面目な方だし、会社の戦力にもなっているのは確かなんだが、旦那さんからのああいった電話が続くとなると、こちらも考えなきゃならなくてね……。その旦那さんが会社に怒鳴り込んでくるんじゃないかと毎日冷や冷やしているんだ」
「そうだったんですね……」
奏が町田の話を聞いて、そう言葉を綴る。
確かにあの敦成という旦那は何かを隠している感じではあったし、仕事もしている感じではなかった。恐らく、敦成は仕事をせずに茉理からお金を毟り取っている可能性がある。しかし、ならなぜ刺したのが敦成ではなく母親なのか?その状況であれば敦成の方を刺すはずだが、刺されたのは母親の淳子の方……。そこには話を周りから聞くだけでは分からない「何か」があるのかもしれない……。
「奏ちゃん、一人で大丈夫かな?」
紅蓮がポツリと呟く。
外で待機している透たちは奏が入っていったビルの近くで待機していた。
「……そういやさ、気になってることがあるんだけど……」
紅蓮がそう言いながら顔を俯かせる。
「気になっていること?」
槙がそう言葉を発する。
「うん……。奏ちゃんって夜の方はどんな風に乱れると思う?」
「「……は?」」
紅蓮の言葉に透と槙の口から同時に変な声を出す。
「……お前、唐突に何を言い出すんだ?」
透が呆れ果てた顔でそう言葉を綴る。
「だってさ~、気になるじゃん!奏ちゃんのイメージ的にはそういった事をしそうにないけどさ!彼氏がいるわけだからそーいう事もしているわけだろ?!なんかイメージが無さ過ぎてどんな感じなんだろうって考えないか?!」
「「お前の頭の中はその事しかないのか?」」
紅蓮の言葉にこれまた透と槙が同時に呆れた声を出しながらそう言葉を発する。
「だってお前らも気になるだろ?!男として!!」
「アホか」
「そんな事ばかり考えてるのはお前くらいだ」
透と槙が紅蓮を冷ややかな目で見ながらそう言葉を述べる。
「うるせー!!ちきしょう……こうなったらホントに奏ちゃんのセカンドダーリンになって夜の営みを……」
紅蓮が目を光らせながら獲物を狙うハンターのような顔になる。
「「本気で埋めるぞ?」」
その様子を見て透と槙がそう言葉を綴る。
「お話、ありがとうございました」
奏が町田にそう言ってお辞儀をする。そして、会社の外に出ると透たちと合流した。
「……成程な。そういう事があったというわけか……」
会社から出てきた奏から聞いた話に透がそう言葉を綴る。
「あれ?紅蓮さん、何かありました?」
奏が紅蓮の表情がいつもと違うことに気付き、そう声を発する。
「「気にするな」」
そこへ、すかさず透と槙がそう言葉を発する。
「……それにしても、もしその話が本当なら敦成の暴力が嫌で家に帰らない可能性もあるということか……」
透がそう言葉を綴る。
「しかし、確かに奏の言う通り、それなら敦成を刺すはずだ。しかし、刺されたのは母親の方……。もしかしたら、他にも何か理由があるかもしれないな……」
槙がそう言葉を綴る。
なぜ、敦成ではなく母親を刺したのか?
なぜ、敦成は茉理に暴力をふるっていたのか?
「……簡単な公式じゃないと思います。もしかしたら、裏に表に出なかった事件が隠されているのかもしれません……」
奏がそう言葉を綴ったので、茉理を捜索するとともに、今回の事件を深く調べてみることにした。
『茉理!寒いだろ?暖めてやるよ!』
敦成が優しく微笑みながら茉理を抱き締める。
『可愛いな~……茉理は……。茉理は俺だけのものだからな!』
優しい声。温かな腕の中で抱き締められながら茉理は敦成に身を任せている。
砂嵐が起きて、場面が切り替わる。
『俺に口答えするんじゃねぇよ!!』
敦成がそう言いながら茉理の首を絞める。茉理は声が出ない。
苦しい……。
苦しい……。
「あぁぁぁぁぁぁ――――!!!!」
「茉理?!大丈夫?!」




