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11 大冒険時代

 救援活動を終えると日が落ちる前に村へと戻った。


 そして村に戻ってからは役割分担を決めてそれぞれ冒険者たちからダンジョンの情報を聞き取り、話を纏めることになった。



「1階層に現れる魔物の情報はこんなところか」


 俺は主にダンジョン内に出現する魔物の情報を聞き取った。


 1階層からCランクの魔物が現れたということで冒険者たちは「難易度の高いダンジョンだ」と口を揃えて言っていた。



(しかし、Cランクならこの村のみんなでもいけるんじゃないか?)



 ユミル村の周りに出る魔物は元々Cランク以上だ。


 村のみんなは気付いていないみたいだがそのレベルの魔物を相手に余裕をもって対応している。


 ガオンたちのような自警団の見習いレベルでは苦戦するかもしれないが一人前の団員たちは普通にCランク程度の魔物であれば普通に狩っている。


 だったら自分たちでダンジョンに潜ってもいいのではないか。


 俺のこの考えは冒険者パーティーが今回の探索で手に入れたアイテムの話を聞いてさらに深まることになった。


 話によると柄に宝石のついた短剣や、鉄ではないそれよりも頑丈そうなのに軽い盾といった珍しいアイテムが入手できたらしい。


 冒険者ギルドに行って価値を確認することになるがかなりのお宝であることは間違いないだろう。



「村長さん、ちょっとお話が……」


 俺は思っていることを率直に村長さんに相談した。


「なるほど、では村のみんなにはこのダンジョンはそこまで危険なダンジョンではないと伝えることにしよう」


 救援に向かった団員たちも2階層で遭遇した魔物たちは大した強さじゃなかったと言っていたこともあってこのダンジョンは自警団の訓練場所として使われることになった。






「兄貴~、いっしょにパーティーを組みましょうよ~」


 あれから1週間。


 ユミル村では冒険者志望の若者を中心にパーティーを組むというのが流行はやりになった。


 ダンジョンに潜る日に備えてのものだが、やたらめったらダンジョン行きが認められているわけではない。


 名目上は自警団の訓練の一環ということになっているし仕事や家業の手伝いに影響がないようその合間にということになっている。


 村の外から冒険者を募っていることもあるので、あまり村の者たちでダンジョンを占拠するのは良くないだろうという配慮もある。


 パーティーは3人以上で組むことになっていてそのうち一人は成人した自警団の主力メンバーかOBを入れるというルールになっているんだが……。


「祭りの優勝者は成人扱いだそうです」


 ガオンと一緒に来たヘンリーがそう説明してくれた。


 つまり、若手のガオンとヘンリー、特例で成人扱いの俺とでパーティーを組めるということだ。


「俺と一緒のパーティーでもポーションは自分持ちだぞ、あとシロも一緒でいいなら」


 ガオンたちはそんな奴じゃないことは分かってはいるが俺が作るポーション目当てに俺と組もうとする連中が出かねないからそこのところははっきりさせておいた。


 親しき仲にもってやつだ。


 あと、何度も言っているが祭りの成果はシロがいてこそなのでそこは譲れない。


「それは勿論! いや~、冒険者になる前にダンジョンに潜れるなんて思わなかった。訓練が楽しみだぜ!」


 冒険者志望のガオンが喜びを抑えきれないとばかりにそう叫んだ。


 訓練でダンジョンに潜って得られるアイテムや素材は全て自分たちのものになる。


 自警団員は訓練の一環なのでダンジョンの入場料は掛からないから上手くやればかなりいい小遣い稼ぎになるだろう。


 その一方でこれまで村の中では一巡していたポーション需要が爆上がりしている。


 ダンジョンに潜ることは自警団の訓練の一環とはいえ、いわゆる自主訓練扱いであるため自警団からはポーションの支給はない。


 つまりダンジョンに潜るために準備するポーションは自腹ということだ。

 

 ダンジョンに潜るのにポーションを持たずに潜るということはあり得ないため、この村の個人向けの需要が高まっているという訳だ。


 そうなるとポーションの原料になる素材が必要になるのだが、俺がいちいち山に取りに行くのも大変だ。


 そんなわけでこの村の若手パーティーに素材採取を依頼している。


 ダンジョンに潜るためにできたパーティーだが、そのパーティー単位で村人から依頼を受けるということも徐々に定着してきた。


 ここまでくると完全に冒険者みたいだが、正式に冒険者ギルドで冒険者登録しているわけではない。





「そんなわけで無秩序なのもどうかと思うので、何かいいアイデアがないかをきみに考えてもらいたいんだ」


 村長さんが工房に来るなりそんな話を切り出してきた。


「いえ、どうして私が?」


「きみはいろいろと面白いアイデアを思いつくからね」


 評価してもらえているというべきか、面倒事を押し付けられたというべきか。


「でしたら自警団に事務局を作ってそこで村のパーティーの登録や管理、村人からの依頼の対応をしてはどうでしょう。そこで素材やアイテムを預かって街の冒険者ギルドで換金する業務を請け負うことで利ザヤも稼げますよ」


「なるほど、村の中だけで完結する小さな冒険者ギルドのようなモノを作るわけか。さっそく自警団の団長であるカインと話をしてみよう」






「で、結局はこうなるわけね……」


「がはは、すまねーな。まあ、うちの村は学がない連中ばっかりだからよ」


「は~、分かりました。でもあまり期待しないで下さいね」


 自警団の団長であるカインさんから正式に俺を事務局長にするという話になってしまった。


 まあ、クエストは俺が素材の採取を頼むかソフィアさんが村の外に出るのに護衛を頼むかというのが多くなるだろうから俺が管理するくらいがちょうどいいかもしれない。


 こうしてうちの村では自警団員を中心に多くのパーティーができることになった。

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