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8 勝負の結果

 まさか錬金術師に過ぎない俺が命を掛けた大勝負をすることになるとは思わなかった。


 すること自体は何の変哲もない錬金術の一つである『分解』だ。


 恐れることはない。


 良く見ればこいつもそこらの素材と変わらないように思えてくる。


 ちょっとピチピチと跳ねて生きがいいだけだ。



 ――ごんっ



 俺は大盾越しに体当たりをかます。


 そしてそのまま盾越しに密着すると俺はありったけの魔力を込めて目の前の魔物に手を翳した。


 そしてゼロ距離射程で魔力を解放する。


「分解っ!」


 本来叫ぶ必要なんかない。


 しかし、思わず叫んだ。


 生きるか死ぬかの瀬戸際に余裕をかますことができるほど俺は大物ではない。


「グギャギャギャギャ」


 茨の王が苦悶に満ちた雄たけびを上げる。


 身体の表面がボロボロと朽ちるようにその形を喪っていく。


「ギギギギ……」


 次第に形を喪っていく目の前の魔物は霞のように色を失い、そして塵となった。





「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……」


 俺は力を使い果たし、立っていられなくなり思わずその場で尻もちをついた。


 荒い呼吸が収まらない。


 額から流れる汗が止まらない。


 鉛でも背負っているかのように身体が重い。


「ははっ、さすが兄貴だ……」


 その言葉に釣られて視線を向ける。


「!?」


 俺の視線の先でうずくまるガオンの右足の膝から下。


 大きくえぐれとめどなく血が溢れている。


 ガオンの顔はもはや蒼白になっていた。


「ぽっ、ポーションをっ……」


 そう言い掛けて気付いた。


 ポーションでは傷口を塞ぐことはできるかもしれない。


 しかし、最早部位欠損と判定しなければならないレベルの怪我だ。


 このまま傷だけを塞いでも足の機能が残るかどうかは疑問が残る。


 血も多く流れているため命の危険もある。


 いや、あるじゃないか。


 最近偶然手に入ったアレが。


 俺は躊躇せず幼女にもらった白い液体が入った小瓶を取り出した。







「凄い音がしたけど何かあった?」

「一体何が……ガオンっ!?」


 キャロルとヘンリーが俺たちを追って奥へとやってきた。


 ガオンの座り込んでいる場所にできた血だまりに気付いて二人が慌てて駆け寄ってきた。


「俺は大丈夫、兄貴からもらったポーションのおかげですっかり治ったぜ」


 ガオンがそう言って両足で立って足踏みしてみせた。


 さすがはエリクサー。部位欠損の修復だけでなく体力も回復することができたようだ。


「むしろブランの方が大変そうだね。立てる?」


「ちょっと引っ張りあげてもらっていいか?」


 女の子に手を貸してもらって情けなくも俺はようやくその場から立ち上がった。






「ふわ~、でっかい魔石!」


 茨の王が消滅した場所には大きな黒光りする魔石が残されていた。


 分解で身体は塵となっても魔物の核と言われる魔石はさすがに魔力の塊で分解しきれなかったのだろう。


「ホントに兄貴が倒したんですか?」


「そうさ。兄貴がこうバシっと一発ぶち込んでやったら一気にこうぶっしゃーてなってな」


 興奮気味に語るガオンの説明にヘンリーが目を白黒させる。


 世紀末覇者を髣髴とさせる説明に俺は苦笑いした。


 まあ、何か誤解を招きそうではあるが俺の分解スキルを大っぴらにするのも憚られる。


 俺はガオンに好きなように言わせることにした。


 この日は素材の採取は中止して村へと戻ることになった。

 新作(現実恋愛ジャンル・実質短編完結済)がジャンル別日間ランキングに載ったのでお裾分け的な謎の更新です。

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