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3 山越え

 アムレーの街の東にある小高い山。


 その山を1つ越えた山の中腹にくだんのドワーフの鍛冶職人さんは一人で住んでいるらしい。


 なんでそんな場所に住んでいるのかというとその山では埋蔵量はそこまでではないものの良質な含鉄鉱がんてつこうと呼ばれる鉄の原料となる鉱石が採れるからだそうだ。


 この日俺は自警団でも一人前と呼ばれている先輩たちのパーティーに護衛を依頼して朝早い時間、夜も明けきらないうちに村を出発した。


 村からアムレーまで馬車で3時間。

 そこから山の麓まで馬車で行き、馬車を降りると山登りだ。

 時間はまだ普通であれば仕事を始める時間にもなっていないが、慣れない山登りでもあるので行き帰りが順調にいったとしてもここに戻ってこれるのは夕方前になるだろう。

 


「じゃあ行くか」


 護衛パーティーのリーダーは20歳を過ぎている自警団の次期エースと言われているランドさんという好青年だ。

 農作業で鍛えたがっちりとした身体に濃いブラウン色の短か目でさっぱりとした髪型をしていてあまり顔が濃くないつるっとしたイケメンさんである。

 そんな彼は若い頃から相当モテていたようで既に結婚していて子供もいるという。


 他のメンバーは主に森での狩りを生業にして弓を武器に使うロビンソンさんに木こりのジェイムズさんというパーティーだ。


 今回は、慣れない山を進むということで森や山に慣れていてかつ自警団内でも実力は折り紙つきというこのパーティーに護衛をしてもらうことになった。



「そっちに行ったぞ!」

「了解っ!」


 ランドさんが突然木の上から飛び掛かってきた赤耳ザルに反応して一撃を入れたが浅かったのか倒すまでには至らない。そんな魔獣を他の二人が追い込みその後なんなく退治した。


 大した素材にはならないということでその体内から魔石だけを取り出し先を急ぐ。


 最初、山を越えないといけないと聞いたときにはいったいどんな険しい山道を行かないといけないかと思っていたが山道は馬車が通るのは無理ではあるものの人が二人くらいは横に並んで歩くことができる程度の幅はあり見るからに整備されていた。


 木こりのジェイムズさんが言うには山の木を切り倒して道が開かれているという。

 

 おそらくドワーフの鍛冶職人さんが街を行き来するのに道を整備したのだろうという話だ。


 その切り倒した木を使って生活し鍛冶の燃料にもしているのだろう。


 護衛の人たちはともかく俺は歩き慣れない山道に『はーはーぜーぜー』言いながら山道を登る。


 峠を越えて下りになると体力的には楽なのだが足に体重がかかるので足への負担が思った以上に堪える。


 途中で小休憩と昼の食事休憩をしてお昼過ぎには目的の場所と思われる一軒の丸太を組んで作られたログハウスに到着した。



「ごめんくださ~い」


 入口のドアをノックして大きな声でそう声を掛けてみる。


 留守だろうかと思ってログハウスの裏手に回ってみるともう一つ建物があり、そこはレンガと石を組み合わせて作られていた堅固な建物だった。


 外から覗いてみると作業場のようだったのでおそらくこの建物が工房なのだろう。


 しかし、中は暗く熱もない。


 工房にはいないようだ。


 俺は再びログハウスの玄関に戻ってドアをノックしながら「ごめんくださ~い。どなたかいらっしゃいませんか~」と大きな声を出して中にいるかもしれない目的の人物に声を掛けた。


 そんな声を張り上げる俺をランドさんたちは少し離れた場所から心配そうに見ている。


「ごめんくださ~い」


 何度目になるかはわからない挨拶を投げかけたところで不意にログハウスのドアががちゃりと開いた。


「!?」

「うるせ~な~、聞こえてるよ。ふぁ~~~あ」


 ログハウスの中から現れたのは背は低いながらも身体は筋肉質でがっちりしているずんぐりむっくりな男の人だった。


 年齢は見たところ中年のおじさんくらいに見える。


 特筆すべき特徴はその顔を覆い尽くすのではないかと思えるほどの量の髭だ。


 これがドワーフ……。


 人伝えに話は聞いていたが聞いていたとおりの外見的な特徴だった。


 顔が若干赤いのは種族的な特徴なのかそれとも好きだと聞いている酒が残っているのか。


 そう思った矢先、プンと酒臭い臭いが漂ってきたことから後者だと察することができた。


 目の前の男の人は髪の毛と同じ色のダークブラウンのフサフサの髭を手慰みにいじりながら気怠そうに俺の目を見る。


 その身体は小柄であるにも拘らずその放たれる威圧感というかオーラが凄まじい。そのギャップもあってか思わず圧倒されそうになった。


「…………」


「で、お前さんたちは何なんだ?」


 ドワーフのおじさんは俺と少し離れた場所で推移を見守っているランドさんたちを交互に見てそう言った。

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